地球環境フロンティア研究センターは、独立行政法人海洋研究開発機構の、「海洋に関する基盤的研究開発等を通じて、国民と社会の要請に応え、以下の使命を果たす。」という目標のうち、「地球環境予測研究」を担当しています。全体の将来計画に加えて、各研究プログラムの中期計画を紹介します。

全体計画
「エルニーニョ・南方振動」等、海洋が大きな役割を果たす自然の気候変動や地球温暖化等の人間活動に起因する地球環境の変動の予測をめざして、気候、水循環、大気組成、生態系、地球温暖化の各要素毎に現象と過程について研究を行うとともに、要素毎のモデルを開発します。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において平成19年までにとりまとめられる第4次評価報告書作成等に貢献するため、これらをまとめた温暖化・気候変動予測モデル、地球環境システム統合モデル等を開発し、数値実験を行います。

気候変動予測研究プログラム
太平洋、インド洋、北極海、ユーラシア大陸アジア域等における気候変動および海洋・大気中に生起する関連現象についての知見を蓄積し、モデルを開発して数値実験を行います。具体的には、

a. 季節変動を含む数年スケールおよび10年〜数10年スケールの海洋・大気現象を過去の気候データ等を基に解析します。
b. 重要な気候変動現象の予測可能性、気候変動が世界各地に及ぼす影響を研究するため、「地球シミュレータ」を用いて複数の大気海洋結合モデルにより数値実験を行います。
c. 国際的な連携の下、アジア・太平洋域の気候変動の特徴と予測等についての研究と近年急速に増大してきた観測データやモデル出力を簡便に利用するための基盤的研究を行います。


水循環変動予測研究プログラム

観測データに基づき、水循環変動の諸物理過程の解明研究を行い、プロセスモデルを開発します。これを基に流域・地域スケールから全球スケールまでの水循環モデルを開発します。具体的には、

a. 過去数10年にわたる海洋・地面・植生からの蒸発散、降水、積雪、融雪、河川流出等の観測データにより、全球スケールでの水循環変動と、それらに関わる陸域の水循環過程、広域雲・放射過程、大気境界層過程等の物理過程の研究を行います。また、モデルを用いて、地域から全球の空間スケール、季節変化から経年変動の時間スケールでの水循環を研究します。
b. 大気モデル中の水循環過程を研究するため、雲粒、雨滴、雪片の形成とその放射への効果等を取り込み、10km〜数10kmの空間スケールを持つ対流雲モデルを開発します。
c. 凍土、半乾燥地域のような特徴的な気候を持つ地域固有の水循環の素過程についての知見を蓄積し、これを基に陸面水循環モデルを開発します。

大気組成変動予測研究プログラム

アジア域における温室効果ガスおよび大気汚染物質の放出量の増加が気候、環境に与える影響を把握するため、海洋・大気間の物質移動等を取り入れて、大気質変動と気候変動との相互作用の研究、北半球を中心とする全球規模大気汚染の研究、温室効果ガスの排出・吸収推定に関する研究を行います。具体的には、

a. エアロゾルの生成プロセスを化学輸送モデルに取り入れて、エアロゾル、オゾン等による大気質変動と気候変動の相互作用を研究します。オゾンの温室効果ガスとしての重要性を評価するため、1900年〜2100年の放射強制力を計算します。
b. 北半球の長距離越境大気汚染の検討に基礎データを提供するため、全球化学輸送モデルを用いて、オゾン、一酸化炭素、エアロゾル等の大陸間輸送過程を研究します。
c. 京都議定書に基づく地球温暖化対策の検討に基礎データを提供するため、大気モデルに二酸化炭素等の観測データを取り込んだ輸送過程の逆計算を行い、排出・吸収の分布を算出します。
d. 中央アジア域、東アジア域の大気汚染物質の観測データを取り込み、排出目録を基に大気汚染物質の季節変化、輸送・化学的変質、領域規模収支を評価します。
e. 都市スケールから全球スケールまで化学輸送モデルを結合して、オゾン等による大気汚染を予測するシステムを開発します。

生態系変動予測研究プログラム

アジア・太平洋域を中心に気候・環境の変動が海洋・陸域生態系の機能・構造に与える影響と、逆に、生態系の変化が気候や環境に及ぼす影響を予測・評価するモデルを開発します。また、モデル開発のため生態系の広域分布に関する観測データを解析し、パラメータ化します。具体的には、

a. 地球温暖化、気候変動への海洋生態系の寄与を評価することをめざし、海域の生態系・炭素循環モデルの開発を行います。
b. 全球規模での温室効果ガスの変動等への陸域生態系の寄与を評価することをめざし、陸域の生態系・炭素循環モデルの開発を行います。
c. 全球規模での気候変動が、植生の分布や多様性の変動に及ぼす影響を評価することをめざし、個体レベルに基づく全球植生変動モデルの開発を進めます。
d. 衛星データ、地上観測データを解析して海洋・陸域の生態系の機能と構造の広域分布についての知見を蓄積し、その成果をパラメータとしてモデルに取り込みます。

地球温暖化予測研究プログラム

地球温暖化のメカニズムを理解し、予測するため、気候モデルを開発して、「地球シミュレータ」等を使って地球温暖化実験、古気候再現実験等を行い、その結果をIPCC第4次評価報告書に反映させます。また、地球温暖化が顕著に現れる北極域の環境の変動について研究します。具体的には、

a. 海洋、大気それぞれ水平格子25km、100km程度の解像度の気候モデルを開発し、地球温暖化実験を行います。
b. 地域的変化を表現し得る水平格子20km程度の解像度の大気モデルを用い、得られた数値実験結果を解析します。
c. 古気候のメカニズムを研究するとともに、気候モデルの性能評価を行うため、最終氷期や最適気候期等の古気候を気候モデルで再現する数値実験を行います。
d. 地球温暖化予測を向上させるため、国際的な連携の下、海氷生成、海氷藻類による炭素循環等の北極域に特有な環境変化過程について知見を蓄積して大気・海洋・海氷結合系モデルや海氷域生態系物質循環モデルを開発します。

地球環境モデリング研究プログラム(分野横断型モデル開発および総合研究)

各研究プログラムの研究課題で得られた成果を総合し、海洋・大気・陸面・植生・雪氷等を統合した先端的な地球環境システム統合モデルを開発します。
地球環境変動にともなう集中豪雨等の気象変化をより詳細に表現することをめざし、「地球シミュレータ」を活用して、解像度を飛躍的に向上させた大気モデル、海洋モデルを開発します。
海洋観測データを基に、海洋モデルを介して解析するデータ同化システムを開発します。具体的には、

a. IPCC 第4次評価報告書に貢献するため、気候モデルを基に、陸域と海洋の炭素循環モデルを統合した全球炭素循環モデルやさらに海洋・大気の組成、生態系変動を加えた地球環境システム統合モデルを開発します。モデルにより気候変動が炭素循環に与えるフィードバック効果を含んだ地球温暖化実験を行います。
b. 地球温暖化実験や気候変動予測のため、海洋、大気とも水平格子100 km程度の解像度を中心に種々の解像度の、主として物理過程を扱う海洋・大気・陸面結合気候モデルを開発します。
c. 全海洋を対象とする水平格子10 km以下の渦解像世界海洋循環モデルの原型版および水平格子5 km以下の全球雲解像大気モデルの原型版を開発します。
d. 人工衛星、ブイ等による海洋観測データを基に、モデルを介して相互に矛盾のないデータを作成する4次元データ同化システムを開発します。
e. 全球雲解像大気モデル、全球炭素循環モデル等について解像度や再現性等の性能を検証するため、衛星による全球降水分布の3時間間隔観測、二酸化炭素濃度の全球分布観測等のデータを利用する手法等について研究を行います。
 
Frontier Newsletter/No.26
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