我々をとりまく地球表層環境は、大気や海洋、陸面、生物といった構成要素がお互いに影響を及ぼしあって形成する一つの「システム」であるという認識が、地球科学の分野で定着しつつあります。こうした構成要素は従来、気象学や海洋学、生態学といった別々の学問分野での研究対象となってきました。
しかし近年、これらの異なった分野で得られた知見をバランスよく取り込んだ形で地球環境の形成過程を認識することが重要になってきています。例えば2004年12月の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第10回締約国会議(COP10)で議論された京都議定書では二酸化炭素の排出量削減義務を先進国に課していますが、こうした削減努力が快適な地球環境維持のためにどの程度効果的であるかを評価するためには様々な知識が要求されます。森林や海洋の二酸化炭素吸収能力はどの程度か(生態学、海洋学)とか、二酸化炭素濃度がある分だけ上昇したときに気温はどれだけ上昇するか(気象学)、二酸化炭素以外の温室効果ガスは将来増加していくのであろうか(大気化学)といった疑問に答える必要があるからです。さらに、気温の上昇が森林・海洋の二酸化炭素吸収能力に影響を与え、二酸化炭素濃度の将来予測を困難にするといった「フィードバック」の可能性をも検証する必要があります。地球環境の将来予測に用いられる数値モデルにも、それらの疑問に関わる様々なプロセスを出来るだけ現実的な形で導入し、地球というシステムの雛形を開発する必要があります。
こうした状況認識のもと日本では、平成13年度に開始された文部科学省の「人・自然・地球共生プロジェクト」の第2課題として「地球システム統合モデルの開発」が取り上げられ、地球環境フロンティア研究センターが取り組むことになりました(参照:Frontier
Newsletter, No.20, 2002年10月)。地球 |
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環境フロンティア研究センターでは、従来、地球環境変動に関わる分野を網羅するいくつかの領域(プログラム)に分かれそれぞれの中でモデル開発を行ってきましたので、それらのモデルを統合することにより、「地球システム統合モデル」と呼ぶにふさわしいものを開発することが可能です(図1)。
2005年1月現在、図1に示した構成要素のうち「植生動態モデル」を除く全ての構成要素はコンピュータプログラム上では既に結合されています(ただし現実的なシミュレーションを行うには、プログラムに与えるデータの微調整が更に必要です)。炭素循環過程については予備的なシミュレーション結果が既に得られていますので、ここではそれについて紹介をしたいと思います。
図2は統合モデルによる二酸化炭素濃度の将来予測を示しています。社会科学分野の専門家が予想した人間活動による二酸化炭素排出量をモデルへ入力データとして与え、モデルが森林や海洋の吸収量を計算して、大気中で増えていく二酸化炭素濃度を出力します。2000年までの観測データと比較
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