昨年の叙勲を光栄に思い、同時に、気象事業全体に対してのものと受け止めており ます。また昨年気象学会から頂いた藤原賞も研究グループに対する評価と考えており ます。公務員として、前半の約20数年間は気象研究所、気象庁数値予報課で研究開発 に携わり、後半の10数年間は管理業務に従事してきました。その後、東京大学気候システム研究センター、地球環境フロンティア研究センターに参加する機会を得たことを幸いに思っております。長年にわたる多くの方々からの御支援に改めて御礼申し上げます。近い将来にはノンプロフェショナル研究者として、「20世紀の日本の豪雪」、「20 世紀の日本の豪雨」等の気象学的ドキュメントを纏めたいなどの夢を描いております。 これは特異気象現象の気候予測の基礎にもなる資料だと思います。その時には是非データの使用等の御支援を頂きたくお願い 申し上げます。
   
日本学士院会員に選ばれてー松野太郎
 この度、日本学士院会員に選任され、大変光栄に感じています。「学士院」と言っても余りなじみがないかと思い少し説明します。英語では"Japan Academy"ですから世界各国にあるアカデミーに相当するもので、様々な科学の分野(人文・社会科 学・工学・農学・医学を含む)で権威者と目される人の集まりです。世界の多くの国では専門科学者の観点から国家社会に大きな影響があると思われる事に関して発言し、また政府に提言する役割も担っているのが普通です。身近な例では1979年にアメリカの科学アカデミーで、当時の指導的気象学者J.G. Charneyが中心となって報告書をまとめ、地球温暖化のおそれを初めて警告しました。(その時のCO2 2倍時の昇温の見積もり3°C±1.5°Cが未だに変わっていない!)
 しかし、日本の学士院は、このような役割を果たしていません。専ら、学問的に大きな業績をあげた人の栄誉を称える為にある、と言ってよく付随する仕事としては会員に続くような(相対的に若い)優秀な業績をあげた研究者に「学士院賞」を贈る 事、プロシーディングスを発行する事、外国のアカデミーとの交流を図る事などです。プロシーディングスは、諸外国では古く は科学全分野にわたる最高の研究発表の場と見なされ、一部は現在でもその地位を保っています。ヨーロッパの伝統として、 最高権威者の集まる会合で、会員の紹介のもとに研究発表し、そこで認められたが故に権威ある会議録(プロシーディングス) に論文が掲載されるという考えに基づくものです。日本学士院でも今の所そのような考えのもと、会員による紹介を皆で了承すれば掲載するという方針がかろうじて保たれています。(レフェリー制導入が話題になっていますが。)現実には、多くの研究者は著名な国際誌に投稿する方を選ぶので、日本学士院のものは残念ながら本来の趣旨での高い権威はありません。しか し、現代の多数決的論文掲載基準のもとで、ユニークな故に理解され難い論文の場合、会員をして「なる程、これは何か大事 なものがあるらしい」と納得させれば公表できる、というメリットはあるかと思います。
 会員に選ばれて3ヶ月経ち、月1回の例会に出席して、少しずつ勉強をしている所です。先に触れた社会、政府への発言機能 についても、日本学術会議とも連携して何かすべきではないか、と考える方もあるようです。自分なりに選ばれた事に相応しい何かの形での責任を果たして行きたいと考えています。
 
Frontier Newsletter/No.29
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