Newsletter No.4 October-1998 


 本号では、水循環予測研究領域の研究と密接な関係にあるGAME(GEWEX Asian Monsoon Experiment:アジアモンスーンエネルギー・水循環研究観測計画)について安成領域長が紹介いたします。




水循環予測研究領域長
安成 哲三
Program Director
Dr.Tetsuzo Yasunari

 アジアモンスーンは、アジア大陸と西太平洋地域に、毎年規則正しい雨季をもたらすが、年々変動も大きく、豪雨による水災害や干ばつも、この地域にもたらす。モンスーンの季節予報、季節内予報の精度を上げ、地域ごとの水循環、水資源予測に資することは、世界の人口の半分以上を占めるこの地域の人々と国々にとって、重要な課題である。さらに、アジアモンスーンの変動は、熱帯太平洋域のENSO(エル・ニーニョ・南方振動)と密接な相互作用をしていることも明らかになりつつあるが、まだ多くの点が未解明である。
このような問題意識で開始されたのがGAME (GEWEX AsianMonsoon Experiment:アジアモンスーンエネルギー・水循環研究観測計画)である。
 モンスーンにおける年々変動の機構を理解するためには、まず季節変化そのものの仕組みを正しく理解する必要がある。モンスーンの地域的な違いは、季節変化する太陽エネルギーの強制下で、大気と陸面、大気と海洋間の非線形なエネルギー・水循環過程が時空間的に異なるかたちで現れることによって生じている。その結果、対流活動、降水活動も時間・空間的に複雑に変化していく。対流・降水活動も、大規模な大気循環の変化にフィードバックされる。


 GAMEの4つの地域(タイ・チャオプラヤ川流域、中国淮河流域、中国チベット高原域、シベリア・レナ河流域)におけるプロセス研究では、これらの相互作用系の中でも、大気・陸面相互作用に焦点を当てて、様々な大気・陸面系における地表面・大気間のエネルギー・水循環過程を理解し、さらにモデリングと予測にむすびつけることを目標としている。集中観測期間(IOP)での共通のターゲットは、各地域・流域における大気・地表面系におけるエネルギー過程と大気・陸面系での水循環の季節変化をより精確に評価することにある。特に、土壌水分ー地表面熱・水収支ー大気境界層と対流活動のリンクを正確に理解し、モデリングに資することは重要な課題である。大陸スケールの水循環の評価には、4次元同化による客観解析データを用いた解析が必要だが、既存のデータは、これらの相互作用や流域・地域スケールの水循環変動の評価にはまだ十分な精度を持ち合わせていない。


 1998年5月〜9月の集中観測期間(IOP)では、精度の高い4次元同化水文気象データの作成を目的として、各国気象局との協力で約110地点における高層ゾンデの強化観測(図1)を行った。さらに各プロセス研究地域では、詳細なエネルギー・水循環過程、雲・降水過程の観測を行った。チベット高原では、TRMM(熱帯降雨観測衛星)の地上検証も兼ねたドップラーレーダによる降水雲観測(写真 1)が行われ、高原上での活発な対流降水の実態も明らかにされつつある。地球フロンティア研究シスムも、GAME-IOPのいくつかの活動に参加し、GAMEのプロセス研究に大きな貢献をしている。

図.1「GAME-IOPのための高層ゾンデ観測ネットワーク」
Fig.1 The aerial coverage of the radiosonde network for
GAME IOP

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