Newsletter No.5 January-1999 


 1997年10月に発足しました地球フロンティア研究システムは、昨年一周年を迎え、研究者の数は二つの海外拠点を含めて約120名となり、研究活動も本格的になってきました。また、10月1日より新たに「大気組成変動予測研究領域」が追加され、これまでの物理的気候システムを中心とした研究に対して、大気の化学的プロセスまでを含めた研究を展開して行くことになります。成層圏オゾンの減少、地球温暖化、酸性雨など近年の地球環境問題の多くが、人間活動による大気組成の変化を出発点としていることを考えると、大気組成の変動までを視野に入れることで問題全体を一つながりのものとしてとらえることができるようになり、フロンティアの研究が一層充実したものになると期待されます。

 昨年は、1997年に発現したエルニーニョが5月頃まで続いて、それまでと同じような異常気象があちらこちらで起こっていましたが、エルニーニョが終わってラニーニャに転じると、また違った性格の異常気象が頻発するようになりました。なかでも、中国、朝鮮、日本を結ぶ梅雨降雨帯の例のない動きと、それに伴う対流システムのもたらした記録的豪雨は各地に大きな被害を与えましたし、一方、台風の発生時期が遅く、数が少ない点でも異例の夏でした。これらは、「気候の年々変動」として近年活発に研究が行われ、フロンティアでも主要な研究対象となっていますが、この一連の出来事は、ようやく形をなして来た東アジアの夏の気候の年々変動についての常識を大きく揺さぶり、新たな謎をつきつけています。

 一つの問題が片付かない内にまた一つといった状態ですが、研究者は必ずしも悲観的ではありません。それは、近年における観測網の充実があるからです。一昨年のエルニーニョの始まりは、以前なら全くわからなかったであろう初期の段階から海面下の水温変化として明瞭に捕えられていたし(観測網の西部は今後はトライトン・ブイによる)夏の「異常」についても、衛星による水蒸気、雲、降雨、陸上の雪、海面温度など、多種類の観測があり、ブイによる海面下の水温データも加えて、その姿が多くの側面でつかまえられています。これらのデータを使って種々の現象の生じた過程を調べ、また、それと同時にコンピューターを用いた気候モデルで数値実験を行い、昨夏のような地球規模の気候システムの変動機構を明らかにすることは、まさにフロンティアの研究目標です。さらに、このような「異常」の多発は地球温暖化の一端なのではないか?という問いかけも出されています。

 これらは、どれも難しいが、それだけにやりがいのあるチャレンジングな問題です。私達は、これらの解決に向け、力一杯研究を進めて行きます。


  The Frontier Research System for Global Change (FRSGC),which was established in October,1997,celebrated its first anniversary last year.The number of researchers has reached about 120,including the staffs two of research centers abroad,and our research activities have become full scale.Also,the Atmospheric Composition Research Program was added to the FRSGC last October.With this addition we can extend our research to include atmospheric-chemical processes,in comparison with the current researches emphasizing physical climate systems. Considering that many recent global environmental issues,such as ozone depletion in the stratosphere,global warming,the problem assosiated with acid rain etc.arise from atmospheric composition changes due to anthropogenic activities,the addition of this program is pertinent to the goals of FRSGC.We expect that this addition of the new program will make the research of the FRSGC more fruitful.

- 2 -