Newsletter No.8 October-1999 


生態系変動予測研究領域の発足にあたって
At the Start of the Ecosystem Change Research Program


地球フロンティア研究システム
生態系変動予測研究領域長

(東京大学生産技術研究所教授)

安岡 善文

 本年10月1日より地球フロンティア研究システムに6番目の領域として新たに「生態系変動予測研究領域」が発足しました。宜しくお願いいたします。

 これまで生態系、特に陸域生態系に係わる現象はどちらかというと狭い地域での局所的、地域的な問題という印象を持たれていました。しかしながら近年、地球温暖化や気候変動などの全地球的な問題が陸域、海域の生態系変動と密接に結びついているという知見が次々に見つけられ、地球規模での環境や気候の変動を予測する上でも生態系の役割を明らかにすることが重要であると判ってきました。「生態系変動予測研究領域」では、気候・環境の変動が生態系にどのような影響を及ぼすか、また、生態系の変化が気候・環境にどのような影響を及ぼすか、を明らかにするために、気候・環境変動に係わる生態系の構造と機能を解明し、そのモデル化を行うことを目標として研究を進めます。

 上記の目標に向けて、本研究領域では、

  a.生態系―大気系の相互作用に関する研究
  b.生態系アーキテクチャの動態に関する研究
  c.生態系地理分布の動態に関する研究
  d.海洋生物過程変動に関する研究

 の4課題を設定し、研究を開始します。具体的には、アジア・太平洋地域を対象として、陸域においては、幅広い気候帯での生物種の分布や生物現存量、一次生産量など生態系の基本的なパラメータの現状を把握するとともに、生態系―大気系における物質の循環機構や要素間相互作用等の機構を解明します。さらに、生態系が長期的にどのように変動するか数十年から百年スケールでの動態機構の解明とそのモデル化を行います。また,海洋においては海洋の物質循環に大きな役割を果している海洋表層の生物群集の構造と機能の数年から数十年スケールでの変動と海洋表層の物理的環境場の変動を、既存の海洋データ及び衛星データの複合的な解析からモデル化します。

 地球的規模での生態系の役割を追求するためには、例えば陸域では、葉一枚、樹木一本のスケール(これでも十分複雑です)から、全球スケールでの植生や土壌の分布までを視野に入れなければなりません。残念ながら、このような広いスケールでの研究分野は世界的にも成熟しているとはいえません。本研究領域の立ち上げが、日本のみならず世界の地球生態系研究のパイオニアを育て、人類の未来に貢献できる成果を挙げられる第一歩となるよう努力して行きたいと思います。ご支援を宜しくお願いいたします。

安岡 善文(やすおか よしふみ)
1947年生まれ。東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了(工学博士)。1974年に環境庁国立公害研究所(現国立環境研究所)に入所し、画像情報処理手法を応用した環境の計測・評価の研究を開始。衛星リモートセンシングによる地表面状態の計測・解析手法の研究を進める。1998年、東京大学生産技術研究所教授となり、1999年10月より地球フロンティア研究システム生態系変動予測研究領域長に就任。計測自動制御学会より学術奨励賞、科学技術庁より科学技術長官賞を受賞。
  Dr.Yoshifumi Yasuoka
He was born in 1947.He received the B.Eng.,M.Eng.and Ph.D.from the Department of Mathematical Engineering and Information Physics,the University of Tokyo.Entered the National Institute for Environmental Studies in 1974,and started research on the application of image processing and pattern recognition technologies to environmental monitoring and assessment.In particular,he conducted the researches on remote sensing environment.Became professor of the Institute of Industrial Science,the University of Tokyo in 1998.Accepted an appointment of Program Director of the Ecosystem Change Research Program in the FRSGC in October 1999. He won the Young Authors Awards from the Society of Instrument and Control Engineers,and of the Minister's Award of Science and Technology from the Science and Technology Agency.

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