FRONTIER Newsletter No.9 Jan.2000


 地球が誕生して約46億年たっている。その間に大陸や大気や海洋が形成された。 大気と海洋の大循環は、大陸移動、大気中温室効果ガスの増減、太陽放射の変動に伴って変動してきた。 この大循環の変動は、主に熱の南北輸送の変動を通して、地球規模の大きな気候自然変動を引き起こしてきた。

 長い地球変動の歴史の中で、約300万年前に人類の祖先が地球上に生を受けた。 人口は、今からほんの200年程前の1800年頃から加速度的に増加をしはじめた。 その背景の一部には、産業革命と焼き畑農業によるエネルギーと食糧の取得があったが、 同時に人類は温室効果ガスである二酸化炭素を大気中に大量に放出してきた。

 さて、このように地球が自然とともに人為的な履歴の経過をたどった後、現在どのような気候状態にあり、 今後それがどのように変動するのでしょうか? この問題に答えるために,古気候のタイムスケールで地球温暖化をふくむ地球変動の実態と機構の解明の ための研究を全球大気-海洋結合モデルを用いた数値実験を通して行っています。




 1999年6月より、大気組成変動予測研究領域に参加しています。 温室効果ガスモデリンググループの一員として、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの循環プロセスを 解明する研究に取り組んでいます。

 大気中二酸化炭素は、陸上生物圏・海洋との交換により、濃度そして二酸化炭素を構成する炭素・酸素の 同位体比が、それぞれ異なる変動をします。この点に着目し、二酸化炭素濃度と同位体比の変動から、 地球表層における二酸化炭素の定量的な収支と循環の解明、また気候変動に対する生物圏や海洋の応答が 二酸化炭素に与える影響を調べることを目指しています。これまでに、2次元炭素循環モデルの開発を 行ってきました。 現在は、濃度と同位体比の広域観測データの収集および解析、そして同位体交換の素過程の検討と 炭素循環モデルへの取り組みを進めています。将来的には、この同位体比データを用いるアプローチを さらに他の温室効果ガスの循環解明に応用していきたいと考えています。




 私が初めて海洋観測の世界と出会ったのは、四半世紀前、まだ私が学生だった頃、黒海に浮かぶ スネーク島近くで、スターリンのヨットに乗船した時でした。 その頃はまだ船内は、巨大な鏡や毛織りのカーペット、そして赤い木材で飾られていました。 航海中、嵐の時は大変な思いをしましたが、それでも私は恐ろしいほどの海の美しさに魅了されました。 続いてその後2年間にわたり、私は幸いにもPOLYMODE実験の水路測量チームの技術者として働いていました。
 POLYMODE計画での1シーズンに亘る航海は、素晴らしい海洋物理学の学校でもあり、またそれ以外にも 様々なことを教えてくれました。後に、フィールド実験として、熱帯大西洋、北極海のバレンツ海、 太平洋のカリフォルニア海流領域を航行しました。最後の数年間は、日本海の"海洋ミニチュア"に取り組み、 そこで初めて数年にわたる多国籍観測計画が発足、"ジェディ(Jeddy)"と言われる日本海の渦と深海還流の 変化を明らかにしました。

 フロンティアの新しい研究プロジェクトである黒潮観測計画(KOP)では、黒潮変動における季節・経年成分の 予測可能性を強調しつつ、黒潮の順圧及び傾圧成分を解明し、我々のモデル能力を実証・改善していくため、 この新しい知識を用いることに重点を置いています。
 沖縄の両側と東シナ海の黒潮出入口点に長期測定アレイが構築される予定です。 これは、海洋循環の拡大数値モデルにおける同化のためグランド・トゥルース・データを提供するものです。

 フィールド実験は衛星高度計データと組合わせて、音響ドップラー流向流速計(ADCP)、XBT/XCTD、 圧力ゲージ付インバーテッド・エコーサウンダ(PIES)による強化測定からなっています。 また、海面高の変化、東シナ海における黒潮の流れとその傾圧的構造、琉球列島東部やその周辺における 琉球潮流に関する新たな情報を我々に提供してくれるでしょう。基本調査は、本質的には有名なPNラインの ような沖縄周辺に現存する黒潮横断水路区分を拡張したものになるでしょうが、さらに空間分解能を上げ、 海洋音響技術使用を強調した頻度の高い観測を目指しています。最高60PIESからなる2つの2次元係留 アレイが沖縄の北西部や南東部に配列され、これにより初めて黒潮や琉球潮流の日々の様子が中間分解能で 図面に示されます。
 フィールド実験により、黒潮と琉球潮流の時間変化や熱輸送の測定、中規模渦と潮流との相互作用の観察、 黒潮の不安定性の物理的理解、黒潮下流の予測の改善などを可能とするでしょう。