FRONTIER Newsletter No.9 Jan.2000



地球フロンティア研究システム
システム長 松野太郎

Dr. Taroh Matsuno
Director-General of Frontier Research System for Global Change

 昨年は地球フロンティアにとって大きな出来事がいくつもありました。
 第一は、8月に地球観測フロンティア研究システムが発足した事です。これは、データ解析やモデルによる研究を主体とした地球フロンティアに対し、文字通り野外で観測を行うことによって地球変動の機構に迫ろうとするものです。地球温暖化のような地球規模の変動現象を予測できるようにするためには、地球全体にわたる観測と全地球の大気・海洋のモデリングに加え、変動メカニズムの要素となる過程や地域的現象の機構を明らかにすることが必要です。この為には、要素過程や地域的現象を観測とモデリングの両面で研究しなければいけませんが、「地球観測フロンティア」が発足した事によって、この体制が実現したと言えます。

 第二に、10月に生態系変動予測研究領域が発足した事です。これによって、大気・海洋・陸地面にまたがる地球表層部の物理的、化学的、生物的プロセスによって生じる地球規模変動(global change)を総合的に理解し、予測モデルを作ることを目指した研究体制が出来ました。これまで対象ごとに別々に研究が進んで来たので、総合といっても容易ではないと思いますが、ともかく、目標に向けた出発点につきました。地球フロンティアとしては、固体地球の変動についても、大気・海洋との相互作用が重要な現象やスーパーコンピュータを用いる数値モデリングという共通の手法に立つ研究課題をその一部として今後取り上げて行く予定です。

運用を開始した
「地球変動予測研究情報システム」


 三番目は、10月末にスーパーコンピュータが導入された事です。機種はNECのSX-5で、最高演算速度128GFLOPSという大学の大型計算センターに匹敵する能力を持っています。気象研究所、東京大学気候システム研究センターでも昨年3月に計算機の更新があり、日本の気候・環境のモデリング・コミュニティーでは計算機資源が、ほぼ一桁増大しました。さらに2年後には、地球シミュレータというその時世界最大となる並列計算機が完成します。現在、気候モデルは、これまでの単なる拡大ではすまされない曲り角にさしかかっています。この重要な時期に世界最良の計算機環境を与えられる地球フロンティアとその仲間の責任は重大です。日本の気候研究コミュニティーはアメリカやヨーロッパに比べて余りに小さく、これまでの経験も充分ではありませんが、小さいだけに研究者仲間は緊密な連携を保ち得るので、行政機構の垣根を越えて有効な協同研究を実現し、大目標にチャレンジして行きたいと思います。

 折しも、行政改革・省庁再編が進行中ですが、研究者の立場からみてこれまでの科学技術行政に見られる問題点を指摘し、より良い研究体制ができるように発言して行くことも新しい世紀を開くために私達に課された任務と考えています。