異常気象をもたらす北極振動の謎


田中 博
(地球フロンティア研究システム 国際北極圏研究センター研究員)


 北極振動 (Arctic Oscillation: AO)とは北極圏とそれを取り巻く中緯度帯の間の気圧場の南北の振動のことで、近年、異常気象をもたらす大気の長周期変動やテレコネクション、地球温暖化の研究において特に注目されています。

 北極振動(AO)は南方振動(SO)の対比で、米国ワシントン大学のトンプソン博士とウォーレス博士により1998年に命名されたものですが、古典的な東西指数 (Zoanl Index)の概念と重なるものがあります。これまで異常気象といえば低緯度のエルニーニョとの関係に研究の重点がおかれていましたが、2001年の寒冬や2002年の暖冬(桜の早期開花)、2003年の寒冬などは、北極振動が関係しているとされており、低緯度のエルニーニョと並んで重要な高緯度の現象とされています。熱帯のエルニーニョが海洋変動で最も卓越する現象として重要視されるように、大気変動で卓越する現象は北極振動であり、その物理的実態や力学的成因を解明することは、異常気象の研究において重要な課題とされています。

 異常気象をもたらす大気現象にブロッキング高気圧がありますが、最近の研究によると、このブロッキング高気圧も北極振動も、共に温帯低気圧などの大規模な大気の乱流現象により励起されると考えられています。日本における北極振動の第一線の研究者が集結し、異常気象をもたらす北極振動やブロッキング高気圧の実態と成因解明に向けて、今、活発な議論が繰り広げられています。


北極振動(AO)がプラスの時とマイナスの時の偏西風ジェット気流(矢印)と各地の気温偏差(暖冷)および気圧偏差(高低)の分布。