はじめに 地球の表面積のほぼ4分の3を占める海は、人間活動によって大気中に放出された二酸化炭素の約30パーセントを吸収していると推定されています。この吸収の仕組みには、海水の物理化学的性質と海洋生物の活動、海の地球規模での循環が関係しています。
海面での二酸化炭素の吸収 大気中の二酸化炭素が海によく吸収されるためには、大気下層と海面での二酸化炭素の濃度差が大きくなる(海水中の濃度が相対的に低くなる)必要があります。海水中の濃度を下げる作用としては、(1)水温の低下(溶解度の上昇)、(2)海洋生物の光合成の増加など、が挙げられます。 海水に吸収された二酸化炭素は海水と反応し、図1のような平衡関係を保った溶存物となります。通常の海水の状態では、90パーセント以上が炭酸水素イオン(HCO3-)として存在しています。この炭酸水素イオンと炭酸イオン(CO32-)、溶存二酸化炭素(CO2)をを合わせて全炭酸と呼んでいます。海面で吸収された二酸化炭素は、全炭酸として海洋の炭素循環に組み込まれます。
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図1:大気海洋間での二酸化炭素交換の模式図。 |
中深層への二酸化炭素の輸送 図2は海洋中の全炭酸濃度の分布を示したものです。全炭酸濃度は海面付近で低く、中深層で高くなっています。海面付近で光合成により作られた有機物が粒子として中深層に運ばれ、そこで分解し全炭酸となることでこの濃度差ができていると考えられています。一方、太平洋、大西洋とインド洋の間で全炭酸濃度に差があります。この濃度差は、海の地球規模での循環によってできているとされています。人間活動によって大気に放出された二酸化炭素(人為起源CO2または余剰CO2と呼ばれています)も、この循環に従って海全体に広がっていくと推定されています。
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図2:南半球亜熱帯海域での全炭酸濃度の鉛直分布。全炭酸濃度の分布図(上図)は、船の航路(下図青線)に沿って得られた測定値に基づいています。ここで使われた全炭酸濃度の値は、海洋地球研究船「みらい」の2003年南半球就航研究航海(BEAGLE2003)で得られたものです(http://www.jamstec.go.jp/beagle2003/jp/index.html)。 |
地球温暖化の影響 現在、海による二酸化炭素の吸収量は、現在の海の状態を基に見積もられています。地球温暖化をはじめとする気候の変化が海の状態を変え、吸収の仕組みに変化をもたらす可能性があります。その場合、海による二酸化炭素の吸収量、ひいては大気中の二酸化炭素濃度の見積もりを改訂することが必要になってきます。
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