同じ陸域生態系を対象とする生態学と環境科学では、それぞれその目的に応じて異なる空間スケール(数cm〜全球)と観測手法(
野外調査とリモートセンシング)によってこれを観測してきましたが、これまで必ずしも両分野の間の連携、
情報交換は十分に行われてきませんでした。そこで本シンポでは、今後の両分野間の相互理解と協働による発展の道を探るため、
各専門分野の第一人者をお招きし、現状と将来展望をお話しいただきました。
生態学分野からは中静透氏(東北大・森林生態学)が、自身による森林構造・機能の観測手法として現地観測にリモセン(航空・衛星)技術導入による
高度化成功の例を挙げながら、日進月歩のリモセン技術を生態学をさらに生かしていくために、地上観測側の新しい問題意識に基づく
データ取得の必要性を説きました。本多嘉明氏(千葉大・リモートセンシング)は、衛星とヘリコプターからのデータによる草原・森林バイオマスの測定手法の最新技術について、
その原理と近年の進歩とこれからの展望を詳細に紹介し、その検証過程での現地観測の重要性を説きました。両氏の基調講演を受けて、
関連分野3名からコメントをいただきました:半場祐子氏(京都工繊大・植物生理学)は、植物の光合成過程の炭素同位体効果の
測定から見える様々な空間スケールでの植生の環境応答について紹介しながら、同手法による実証的研究の有効性について、
高槻成紀氏(東京大・動物生態学)は、植物と動物の生活様式の違いに起因する両者の生来額的時空間スケールの差異から生態系として
観測するときのスケールが両者を含みうるものにすべきである点について、また加藤知道(FRCGC・シミュレーションモデリング)は、
全球での炭素循環の陸面過程の予測モデリングを担う立場から、予測精度の向上に両分野から幅広い観測スケールでの実測データの
入手が今後ますます重要となるという点について、それぞれ指摘しました。全参加者(約70名)による総合討論から、
分野を超えた観測データの交換の推進など、今後の相互発展への提案がなされました。
私たちの研究プログラムでも、ここで得られた多くの示唆と課題を生かしながら、
今後も多面的な観測データから幅広いスケールでの生態系変動予測研究を進めたいと思います。