■ 「光化学スモッグはなぜ増加しているか? −原因物質の排出動向」
- 講演者 :
- 大原 利眞
- 国立環境研究所アジア自然共生研究グループ広域大気モデリング研究室長

(PDF 1MB)
- 日本の光化学スモッグは全国的に増加しています。光化学スモッグの目安となる光化学オキシダントは、全国の大気汚染測定局で測定されていますが、その年平均濃度は1985〜2004年度の20年間に約1%/年の割合で増加しました。更に、光化学スモッグ注意報が発令された都府県数が経年的に増加し、都市周辺だけでなく離島や山岳でも光化学オキシダント濃度が上昇しています。また、昨年の5月には、西日本を中心に頻繁に光化学スモッグ注意報が発令されたことは記憶に新しいところです。
光化学スモッグは、大気中に排出されたNOx(窒素酸化物)などの物質が太陽の紫外線を受けて光化学反応を引き起こすことによって作られます。しかし、日本では、光化学スモッグの原因となる大気汚染物質は発生源規制などにより減少しています。何故、原因となる物質が減少しているのに、光化学スモッグは増加しているのでしょうか?この原因として、大気汚染物質が急増しているアジア大陸からの越境汚染による可能性が高いと考えられます。アジア大陸では、火力発電所や工場、自動車などから大量の汚染物質が大気中に放出されていますが、それらの物質が反応することによって発生した光化学スモッグが風下にあたる日本に流れ込んでいるという訳です。
本講演では、光化学スモッグが全国的に増加していることを、観測データをもとに示し、その原因について一緒に考えたいと思います。特に、東アジアで排出される光化学スモッグの原因となる物質の動向に焦点をあてて、お話しします。
■ 「東アジアの越境汚染問題をどう解決するか −国際的な枠組みを考える」
- 講演者 :
- 鈴木 克徳
- 金沢大学フロンティアサイエンス機構特任教授

(PDF 19.3MB)
- 東アジア地域では、中国やアセアン諸国の著しい経済成長に伴い、国内におけるローカルな大気汚染問題の激化に加え、酸性雨や光化学スモッグ等の越境大気汚染問題の深刻化が懸念されるようになっています。欧米諸国や日本では、まず国内の大気汚染問題を解決した後に越境大気汚染問題や地球温暖化、成層圏オゾン層の破壊などの地球環境問題が顕在化しましたが、これらの国ではすべてが同時多発的に進行している点に特徴があります。
ローカルな大気汚染問題と越境大気汚染問題、地球温暖化等の問題は相互に密接に関連しており、一体的、総合的に取り組むことが期待されます。東アジアには、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)という越境大気汚染問題に取り組むための国際枠組みがありますが、対象は酸性雨のみに限定されており、現状では、統合的な大気環境管理の枠組みとは大きな隔たりがあります。本研究は、欧州越境大気汚染条約のもとで欧米諸国が徐々に統合的な大気環境管理を志向するようになったプロセスや、統合的な大気環境管理に向けて柔軟性を有する南アジアのマレ宣言に基づく越境大気汚染問題への取組等を研究することにより、また、統合的な大気環境管理に向けた東アジア諸国の制約要因を明らかにすることにより、東アジアに適した大気環境管理の国際協力の枠組み(東アジア大気環境レジーム)を提案します。また、そのような枠組みの合意形成に向けたシナリオを検討することにより、交渉プロセスの促進に資することを目指します。