気候変動枠組み条約第10回締約国会議(COP10)参加報告

地球環境フロンティア研究センターでは、2003年より、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第一作業部会(地球温暖化の科学分野)の国内支援事務局を担当しており、2007年のIPCC第4次報告書への貢献を目指し、2002年度より開始された文部科学省の人・自然・地球共生プロジェクトのうち5課題を受託するなど、地球温暖化問題に対して、さまざまな活動を続けています。各国の温室効果ガスの排出を制限した京都議定書が11月にロシアが批准を決めたことにより、2005年2月には7年余の月日を経てようやく発効されることになり、議定書締約国での地球温暖化防止対策がいよいよ実現を求められることとなります。第3回目の気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)で京都議定書が採択されてから、今回の締約国会議はすでに10回目を迎えることとなりました。気候変動枠組み条約第10回締約国会議(COP10)は、アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスで12月6日(月)から18日(土)(予定より1日延長)まで開催されました。今後、本番を迎える地球温暖化防止対策を検討した重要な会議となりました。

COP10が開催されているLa Rural 会場

本会議の様子

地球環境フロンティア研究センターは、COP10が開催されている会場La Rural において、展示に参加しました。陸上の炭素循環、中国での降水量の変化、地球温暖化による黒潮流速の変化、地球シミュレータを利用した最新の温暖化実験の結果等、科学的知見を研究する最先端の研究機関としての、地球環境フロンティア研究センターの取り組みを紹介しました。

実際に異常気象を体験しており、ダイポールモードのことについて関心がある、セイシャルの気象関連機関のディレクター、気候変動と極端現象についての研究を行っているオランダの世界自然保護基金の担当者、自然科学の応用研究と対応策、森林、エルニーニョなどのシミュレーションに興味があるペルーの気候変動プログラムのディレクター、地球シミュレータの研究結果を求める経済協力開発機構( OECD)の気候変動担当、日本の地球温暖化に対する取り組みに興味があるドイツの環境担当議員など、機関や政府関係者をはじめとし、大変多くの方々が展示ブースを訪れました。

展示ブース
12月9日(木)には、文部科学省主催によるサイドイベントが開催されました。サイドイベント冒頭では、主催者である文部科学省研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室の水畑順作室長補佐より、開会の挨拶と、日本の地球温暖化への取り組みとして文部科学省が行っている人・自然・地球共生プロジェクトの概要説明を行いました。当機構経営企画室の重冨徹調査役より、JAMSTECの概要説明とともに、地球環境フロンティア研究センターの特徴である、地球の要素すべてを取り入れた研究と、地球環境フロンティア研究センターと同じ敷地内で運用されている、地球科学用としては世界最速レベルのスーパーコンピューター「地球シミュレータ」の概要が紹介されました。当センターの近藤特任研究員は、日本で開発された高解像度全球モデル(長期予測用)、タイムスライス法による超高解像度全球モデル(10〜20年間の現在及び将来気候に適用)および地域気候モデルを使い、全球の気候、地域気候、異常気象についての現在の再現シミュレーション、および将来の予測実験の結果や、気候変動の影響が生態系などの炭素循環により温室効果ガスの濃度にどのように反映されるかというフィードバックも考慮したモデル研究の状況を紹介しました。そして、これらの研究成果は、IPCC第4次評価報告書に貢献するであろうと述べました。財団法人 電力中央研究所の西村嘉晃上席スタッフは、温室効果ガスが人類へ危険な影響を与えないためには温室効果ガスの濃度安定化のレベルはどのくらいかを主要なテーマとして、米国大気科学研究センター(NCAR)のモデルに基づく予測実験を行った結果を紹介しました。英国ハドレーセンターのMatthew Collins博士は、日本と英国間で、比較実験などを通して気候変動研究における連携を行っていること、そして英国の最新の研究の概要を紹介しました。ブラジル気象予報・気候研究センターのJose Marengo博士は、South Atlanticにおいてはいままでに起こったことがない熱帯低気圧と考えられる擾乱(“Hurricane Catarina”と命名された)が、2004年3月にブラジル南部に上陸し、多大な被害を与えたが、これは、気候変動度の増大による異常気象のひとつなのかもしれないとの見解を提示しました。独立行政法人 国立環境研究所の西岡秀三理事は、日本における全般的な温暖化研究の紹介を行うとともに、温暖化が、様々な産業、生態系そして人命に多大な影響を与えていることを紹介しました。

文部科学省主催によるサイドイベント
地球シミュレータを利用した最新の地球温暖化に基づくさまざまな気候変動の研究と先鋭の科学技術を誇る日本が主催のサイドイベントとあり、毎日多数開催されるイベントの中でも注目を集め、会場は満席となりました。イベント終了後も近藤特任研究員を訪ねて展示ブースに多くの人々が連日立ち寄りました。このイベントはまた、UNFCCC関連の国際会議を開催中にオンタイムでレポートするEarth Negotiation Bulletin の中でも、大きく取り上げられました。(関連URL:http://www.iisd.ca/climate/cop10/enbots/9dec.htm)。また、アルゼンチンの英字新聞、Buenos Aires Herald でも、ページ半分以上を割いた記事が紹介されました。

会議開催期間の前半では、いち早く日本代表団の一員として、ブエノスアイレス入りを果たした、1997年のCOP3で議長を務めた大木元環境庁長官が、地球環境フロンティア研究センターのブースを訪問し、地球シミュレータによる地球温暖化実験結果を含む当センターの研究活動を近藤特任研究員が説明しました。


大木大臣に地球環境フロンティア研究センターの概要を説明する近藤特任研究員
後半には、小池百合子環境大臣、高野博師環境副大臣、小野寺五典外務政務官などがブースを訪問され、海洋研究開発機構及び地球環境フロンティア研究センターの概要を説明しました。

今回の会議では、京都議定書で取り決めがない「ポスト京都」と言われる2013年以降の地球温暖化対策が最大の焦点でしたが、各国の意見がまとまらないまま、いくつかの議題は持ち越されることとなりました。一方で、今回の会議で、今後5年間かけて地球温暖化による被害の状況を科学的に分析し、具体的な対応策をまとめること、研究及び組織的観測にも重点が置かれる中で、気候要素の観測や気候関連のデータ・プロダクツの開発に関する協力拡大などが決まりました。また、ワークショップなどを開催し、地球温暖化問題に関する普及啓蒙活動も予定されています。会議中に作成された「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」には、各国の予測モデルを充実させ、気候変動による大規模な影響や、地域的な気候変化の傾向を把握すること、全球気候観測システムの実施計画を進めること、大循環モデルを広く使用可能にすること、IPCC第4次報告書に地域の特性を盛り込んだモデルを導入し、気候変動に関する危険な影響に関する情報を入れること、等が盛り込まれました (「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」より抜粋、抄訳、UNFCCC, 2004)。地球環境フロンティア研究センターでも、IPCC第4次報告書に向けた活動が、地球シミュレータを利用した地球温暖化予測実験のフェーズから、解析のフェーズに移っているところです。また、気候変化と生態系、大気組成の変化がインターアクティブに計算できる地球環境統合モデルの開発など、最先端の自然科学の研究所としての活動を推進し、成果を社会に発信することで、地球温暖化問題解決に関する国際協力の一翼を担うことが期待されるでしょう。

今回の参加は、日本の貢献が期待される中、地球環境フロンティア研究センターの活動が、より広い範囲の人々に浸透する機会となりました。

 

パネル展示(英文のみ)