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専門分野
(1) 生物地球科学(2) 同位体生態学
生態系変動予測研究プログラムPD就任にあたって
2004年8月1日から常勤のプログラムディレクターになりました。よろしくお願い致します。このプログラムは、1999年10月1日に発足し、ほぼ5年の年月がたとうとしております。従いまして、私は、ちょうど第2期、5年間のはじめに入ったことになります。 現在、生態系変動予測プログラムでは、以下のような研究プロジェクトが進行しております。@)陸域生産系―大気の相互作用に注目した炭素循環モデル(Sim-CYCLE)を高度化するために、これに窒素循環モデルを結合する。また温暖化に伴う植生分布の変化を予測するモデル、個体ベースの森林動態モデル、統合モデル等を開発する研究。
A)地球温暖化、気候変動への海洋生態系の寄与を評価する海洋生態系炭素循環モデルの開発や、逆に海洋生態系変動の検出とその予測モデルを構築する研究。
B)衛星画像のデータをモデル化し、植生と機構の相互作用について高度化したデータセットを提示するリモートセンシングの研究 などです。
陸域にしろ、海洋にしろ、生態系は十分に複雑な系のため解析が難しく、その研究は、科学の歴史の中でも、また地球環境問題の研究の中でも遅れが目立ちますが、このプログラムでは、分野の草創期にもかかわらず、なかなかの成果を挙げていると評価しております。
ここで、地球環境問題に関連して、生態学の分野、特に文科省関係ではどのようなプロジェクトが行われたのか、私自身の10年史を兼ねて、簡単に紹介し、現行のプロジェクトの私なりの位置づけをしてみたいと思います。我国の生態学が文科省の下で生態系にまつわる地球環境問題の本格的なプロジェクトを実施したのは、1997年度に始まったIGBP-MEXT, Second Term, 「陸域生態系の地球環境変化に対する応答(Response of Terrestrial Watershed Ecosystems to Global Change)」であります。私が京大生態学研究センターに移って7年目のことでした。センターの建物が滋賀県大津市の文化ゾーンに立てられた頃です。このプロジェクトは、IGBP-GCTE Terrestrial Ecosystem in Monsoon Asia(TEMA)の一環として5年間に渡って行われました。プロジェクトリーダーは私で、実質的なSLは、現在我々のプログラムのSLでもある北大の甲山隆司教授(現IGBPの日本SCメンバー)、事務局は、当時の名大大気水圏科学研究所にありました。水系を一枚の葉→枝→一本の樹木→森林→土壌→渓流→湖の軸に沿って空間的に拡大させ、大気CO?の上昇に対する水系生態系の応答を研究しました。この我々のプロジェクトの3年目の秋に、生態系変動予測研究領域が地球環境フロンティアの中に発足したことになります。
IGBPは、Int'l Geosphere and Boosphere の略で、国際地球圏生物圏共同研究と呼ばれ、1991年に開始され、11の領域に渡って大気、陸域、海域など色々な場で炭素循環を中心とする調査研究とモデル化が試みられました。現在生態系変動予測研究プログラムの若手研究者は、多少なりともこの国際共同研究に関係したり、この研究計画の流れの中で育った人たちが多いと思われます。
このIGBP-MEXTと平行して、「人間と自然の相互作用系を文理連携で進める学振未来開拓」のプロジェクトリーダーや「創世的基礎研究(新プロ) 生物多様性」のプロジェクトのコアメンバーもやりました。京大生態研センターのセンター長とこれら三つのプロジェクトの推進が重なり、目の回るような事態となりましたが、地球環境−C, Nサイクル−生物多様性−人間社会を包括した地球環境問題の勉強をすることができました。琵琶湖−淀川水系の流域モデル構築のプロジェクト(未来開拓)は、総合地球環境学研での継続を含めて8年間に渡って同じ若年メンバーと続け、7年目からようやく人間と社会の相互作用環なるものの研究方法が身についたと感じています。このような10年間以上にわたるプロジェクトの推進や組織の立ち上げの経験をベースにして生態系変動予測研究プログラムの更なる充実と新しい視点を加味した展開をしてゆきたいと念じています。
ここに示した図は、生態系変動予測研究プログラムの中で、現在進行形であるプロジェクトを、私のこれまでの海洋や陸を含めた調査研究や、プロジェクト研究の経験からまとめた概念図の上に乗せて、各プロジェクトの位置づけをしたものです。赤字は、今後新しく加味できればと思っている事柄のキーワードに相当しております。
これまでプロジェクトから私が学んだ要点を書きとめておきます。
1.プロジェクトの課題名をつけることは比較的易しい。しかし明らかにすべき具体的な目的に対する作業仮説と具体的な方法論をまとめること( ロードマップをつくること)は、複雑でプロセスが解明されていない生態システムを研究対象とした場合、きわめて難しい事柄である。
2.学際的な融合は、個人の頭の中でのみ可能であり、統合は連携でやってゆくしかない。各人が他の分野を理解する程度に比例して連携はうまく行くようになる。
3.生物地球科学、生態学に関する応用・基礎研究は定式化、モデル化することによってAdaptive Management(Plan→Do→Check→Action サイクル)に関連付けられ、指標や環境容量などの提案につながる。
アースシュミレーターやリモートセンシングを方法論とする生態系の研究は、人力で予測不可能な時空間場について新しい局面を提示すると思われます。モデルの検証はGISや高感度分析法によって時間積分的な変化を追うことが有力な方法となるでしょう。私の専門である高解像度の安定同位体測定法はそのような手法のひとつであると思われます。このようなことを考えながら、これからの第2フェーズに入った生態系プログラムを推進してゆきたいと思っています。 生態系は複雑である為、数十年から数百年のタイムスケールでの中長期の変動に関しては多くのことが依然として判っていません。これまでの成果を踏み台として、生態系の基本プロセスの理解とモデル化、大気―海洋統合モデルへの生態系モデルの統合、生態系の変動と人間活動の相互作用系の解明に資することを三つの柱として、現場の実態を踏まえた生態系予測モデルの構築を目指したいと思っています。この生態系変動予測研究プログラム推進の中から次世代のフロンティアを背負う若手が輩出することを強く希望しております。
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1939年生まれ。東京教育大学理学研究博士課程修了(理学博士)。1967年東京大学海洋研究所助手、1976年三菱化成生命科学研究所室長・部長、1991年京都大学生態学研究センター教授・センター長、2001年総合地球環境学研究所教授、主幹。一貫して同位体生物地球化学・同位体生態学の研究に従事、研究対象は広く海洋・陸域( 水系・湖沼・森林・農耕地)をカバーしている。2004年8月1日より地球フロンティア研究センター、生態系変動予測研究プログラムディレクターに就任。海洋学会 岡田賞、日本地球化学会賞、地球化学研究協会賞(三宅賞)を受賞、京大名誉教授、ロシア科学アカデミーシベリア地区第一回栄誉博士号。
Isotoper Practice and Environmental Health(独)Science in Hand(露)
単著書籍
- E. Wada(2002), New scope on sustainable watersheds in East Asia. DIWPA series Volume 3.
- E. Wada(2002), 環境学入門3 「地球生態学」 岩波書店 171pp(introduction to Geoecology)
共著書籍
- 井上民二・和田英太郎編著(1998) 岩波講座 「地球環境学」 第5巻「生物多様性とその保全」
(Global Environmental Studies No.5 Biodiversity and its preservation )- 和田英太郎、安成哲三編著(1998) 岩波講座 「地球環境学」 第4巻 「水・物質循環計の変化」
(Global Environmental Studies No.4 Water and Material Cycling )論文掲載誌等
- 和田英太郎、西川絢子、高津文人(2001)安定同位体比の利用(1)環境科学ー特に水系について50:158s-165s.
(Use of Stable Isotopes in Environmental Sciences with emphases on a watershed) Radioisotopes
- 和田英太郎、小川奈々子、宮坂仁(2002)バイカル湖:安定同位対比から見た自然の実験室.
会誌「地球環境」.7(1):77-85- 和田英太郎、陀安一郎、兵藤不二夫(2003) 物質循環と水資源ー水系を中心として. エネルギー・資源24(1)
(Material Cycling and Water Resource with emphasis on a watershed)Energy Resource- 和田英太郎 (2004)モンゴルの遊牧とその持続性の実態ー物質循環から見たモンゴル高原
科学73(5):545-548 (Nomandism in Mongolia with emphasis on material cycling) Science- C.Kato, T.Iwata and E.Wada (Prey use by web-building spider: stable isotope analyses of trophic flow
at a forest-stream ecotone) Ecological Research, In press
海外調査
<2001年8月> マレーシア (シンポジウム出席)<2001年9月> ロシア (バイカル湖調査)
<2001年10月> タイ (The 27th National Science and Technology Conference出席)
<2002年2月> ロシア (バイカル湖調査)
<2002年4月> ロシア (ロシア科学アカデミー名誉教授授賞式および記念講演)
<2002年7月> モンゴル (セレンガ川水系調査)
<2002年9月> ロシア (バイカル湖ワークショップSIAL-3 発表および現地調査)
国内調査 (2003年以降)
<2003年9月> 京都府・三重県・滋賀県 (木津川・名張川水系調査)<2003年9月> 京都府(鴨川(加茂川)及び高野川の水質・堆積物調査)
<2003年9月> 京都府、大阪府(瀬田川及び3河川‐木津川・桂川・宇治川‐合流域における水質・堆積物調査の為の事前調査)
<2003年11月> 滋賀県、大阪府、京都府 (三河川(木津川・桂川・宇治川)及び淀川の水質・堆積物調査)
<2003年11月・12月> 京都市、大阪府(鴨川(加茂川)及び高野川の水質・堆積物調査)
<2004年10月> 滋賀県 (琵琶湖調査)
Nagoya University Graduate School of Environmental Studi<2001年5月30日・6月6-7日> 名古屋大学大学院環境学研究科集中講義 <2001年6月14-15日> 信州大学繊維学部集中講義
<2002年7月23-25日> 名古屋大学大学院環境学研究科集中講義
<2002年9月18-20日> 香川大学農学部集中講義
<2003年7月7, 18, 24, 25日> 名古屋大学大学院環境学研究科集中講義
< 2002年9月18-20日 香川大学農学部集中講義 Faculty of Agriculture
<2003年7月17,18,24,25日> 名古屋大学大学院環境学研究科集中講義
<2003年7月30日-8月2日> 奈良教育大学集中講義
<2003年9月3日> 京都大学生態学研究センター
<2004年6月23-24日> 東邦大学理学部
< 2004年8月30日-9月2日> 奈良教育大学
Kanazawa University Faculty of Science
地球観測国際戦略 策定検討会 委員会 <2003年4月-2005年3月> (文部科学省 研究開発地球観測国際戦略 策定準備室)淀川水系流域委員会 <2003年2月1日-2005年1月31日> (国土交通省 近畿地方整備局)
戦略的創造研究推進事業 <2003年4月8日-2005年3月31日> (科学技術進行事業団)
運営委員<>/研究計画委員会 <2003年4月1日-2005年3月31日> 京都大学生態学研究センター)
日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会調査委員<2003年12月17日-2005年12月16日> (文部科学省国際統括官付 ユネスコ第三係)
「自然と共生した流域圏・都市再生」実行委員 <2003年4月-2005年3月>
21世紀COEプログラム委員会分野別審査・評価部会専門委員 <2003年4月-2005年3月> (日本学術振興会)