* HPCI戦略プログラム

 「HPCI戦略プログラム」とは、平成24年稼働予定の次世代スーパーコンピュータ「京」の能力を最大限に活用して世界最高水準の研究成果を創出するとともに、当該分野において計算科学技術推進体制を構築する取組を支援するために実施されるプロジェクトです。
 文部科学省は、次世代スーパーコンピュータ「京」の利用のあり方として、多様な研究者のニーズに応える利用形態(一般的利用)とともに、社会的・国家的見地から、特定分野の研究を戦略的、重点的に推進する戦略的利用を導入すべきとの提言を受け、次世代スーパーコンピュータ戦略委員会において、次世代スーパーコンピュータ「京」の計算機資源を必要とし、かつ、社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待できる分野(戦略分野)の検討を行い、以下の5つの分野を決定しました。

   分野1 予測する生命科学・医療および創薬基盤
   分野2 新物質・エネルギー創成
   分野3 防災・減災に資する地球変動予測
   分野4 次世代ものづくり
   分野5 物質と宇宙の起源と構造

 平成21年度に各戦略分野の戦略機関を公募し、戦略機関として行う活動の実施可能性調査(FS)を実施する機関を決定。その実施計画の評価を経て戦略機関を決定しました。各戦略機関は、平成22年度に準備研究、平成23年度から本格実施(5年間)の予定です。


   2010.07.28
   「次世代スーパーコンピュータプログラム」戦略機関の決定について

   2010.01.22
   「次世代スーパーコンピュータ戦略プログラム」実施可能性調査実施機関の決定について



* 防災・減災に資する地球変動予測(分野3)

「HPCI戦略プログラム」の実施可能性調査(FS)を経て、戦略分野のひとつである「防災・減災に資する地球変動予測(分野3)」は、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が代表機関として事業を進める事を決定しました。
 JAMSTECは全国の大学・研究機関等と共同で、戦略目標である「地球温暖化時の台風の動向の全球的予測と集中豪雨の予測実証、および次世代型地震ハザードマップの基盤構築と津波警報の高精度化」の実現に向け、世界最高水準の研究成果を創出するとともに、本分野における計算科学技術推進体制を構築することを目的として事業を推進しています。



 大規模自然災害の軽減に向けて

   日本は毎年のように台風、集中豪雨、地震、津波などに見舞われ大きな被害を被っています。特に2011年3月11日の東北地方太平洋沖を震源とする超巨大地震(マグニチュード9.0)とそれに伴う超巨大津波は、東北地方を中心に2万人近い犠牲者と壊滅的な被害をもたらしました。まさに未曾有の大惨事であり自然の猛威を思い知らされました。またこの津波が原因で福島第一原子力発電所で大量の放射能漏れ事故が起こり、これまでにない甚大な被害を被りました。このような大規模な自然災害は社会・経済活動に深刻な打撃を与えることから、防災・減災に向けた迅速で効率的な対策が喫緊の課題となっています。
   大規模な自然災害をもたらす自然現象(ナチュラル・ハザード)に関しては、野外実験によって影響を評価し検証することは不可能であり、大規模シミュレーションによる検討が不可欠です。これまでも、かつて世界最速のスーパーコンピュータであった「地球シミュレータ」を用いて大規模シミュレーションを行ってきましたが、HPCI戦略プログラムの分野3「防災・減災に資する地球変動予測」では、次世代スーパーコンピュータ「京」を用いて、これらのナチュラル・ハザードに関する大規模で高精度のシミュレーションを全国の大学や研究機関と共同して実施し、学術的な展開を図るとともに実際の防災・減災に資することを目指します。具体的には、地球が温暖化した時の台風の強さや数を全球的に予測すること、集中豪雨や局地的大雨の直前予測を実証すること、次世代型の地震ハザードマップのための基盤を構築すること、津波警報の高精度化を図ること、都市全域を対象とした自然災害シミュレーションにより被害の軽減を図ることなどを目指します。その際、二つのスーパーコンピュータ、「京」と「地球シミュレータ」を利用する相乗効果を最大限に追求します。また次代を担う若手研究者の育成にも努めます。
   残念ながら「京」をもってしても、地震や津波がいつ、どこで、どれくらいの規模で発生するかを正確に予測することはできません。しかしながら、台風や集中豪雨を含めてナチュラル・ハザードに関するシミュレーションが、より高速・高精度にできるようになれば、より効果的・効率的な防災・減災対策を立てることができ、自然災害に対して、より強い都市を作ることができます。

HPCI戦略プログラム分野3 統括責任者   
今脇 資郎   
(JAMSTEC 地球情報研究センター長)