海洋研究開発機構 地球ダイナミクス領域公開シンポジウム 「地球大変動 ー世代を超えて伝えたいことー」

質問票への回答

こちらは、シンポジウムにご来場下さったお客様からお寄せいただいた質問とその回答を公開しています。
※「質問内容」は、頂いた質問票からニュアンスを損なわないよう、ほぼ原文どおり掲載しております。

回答者 :
鳥海 光弘(地球内部ダイナミクス領域 領域長)
小平 秀一(地球内部ダイナミクス領域 海洋プレート活動研究プログラム)
木下 正高(地球内部ダイナミクス領域 固体地球動的過程研究プログラム)※現在は 高知コア研究所 所長
巽 好幸(地球内部ダイナミクス領域 地球内部物質循環研究プログラム)※現在は 神戸大学 理学研究科 教授
※2012年1月時点での所属です。

※本回答には、回答者の個人的な見解が含まれます。誠意をもってお答えしておりますが、不正確な部分があるかもしれません。
ご意見・ご質問はシンポジウム事務局までお寄せください。

No. 質問内容 回答者 回答
1 岩波新書に「新しい地球観」(上田誠也著)があり、当時ではM8.7が最大と記載されている(恐らくプレート弾性限界から求めたと思いますが)。
しかし最近はM9以上が発生している。これは地球の研究が進んだためでしょうか?それとも、地震の大きさを推定する考え方が変わったのでしょうか?
木下 1970年代には、まだ固着域というような概念はなかったと思います。
従って地殻の強度から理論的に推定したケースもあったでしょう。
今では、地震のマグニチュード(M)は、それを起こした断層(固着域)の面積の大小が最も効いていると考えられています。
大きなMの地震は、震源域が広いということです。
例えばMが4クラスの地震の断層サイズは1km程度、M6で10km、M8で100kmといったところです(防災科学技術研究所のサイトにも説明があります)一つの海溝の長さが1000km程度ということを考えると、M9クラスの地震が理論的な最大値ではないでしょうか。
なお、マグニチュードの値は、その決め方(波の振幅だけを使うのか、地震波形全体を使うのか、など)により、異なります。実際現在でもいくつかの種類のマグニチュードが存在します(実体波M、表面波M、モーメントM、さらに津波Mまで)。
地震の起こり方に対する認識・理解、そして地震計の進歩などが、このような変化をもたらしてきました。
2

起こりうる地震の規模は理論上最大でいくらなのか?

今までの最大はM9.5程度ですが

木下 地震のマグニチュード(M)は、それを起こした断層(固着域)の面積の大小が最も効いています。
例えばMが4クラスの地震の断層サイズは1km程度、M6で10km、M8で100kmといったところです(東大地震研のサイトにも説明があります)。
一つの海溝の長さが1000km程度ということを考えると、M9クラスの地震が理論的な最大値ではないでしょうか。今までの最大はチリ地震(1960年)によるもので、9.5(モーメントマグニチュードによる値)です。また2004年のスマトラ地震のマグニチュードは9.1でした。
3 マグニチュードの定義は? 木下 地震により解放されたエネルギーを、その桁数で表したものです。
(正確には桁数に比例係数がかかっています)。
4 マグニチュード9が最大規模の地震と良く言われますが、例えばマグニチュード10以上の地震というのは本当に考えられないのでしょうか。
またそれは何故ですか。地球生成の歴史の中で、大陸が形成されるような大きな地殻変動の際の揺れ(地震?)はどのくらいの規模だったと考えたら良いのでしょうか。
もちろん物理学的には考えることができます。
ただ、マグニチュードが1大きくなるとエネルギーは約30倍になり、M9の場合20mのずれが起きたとするとずれの範囲(断層面)は500×60kmにもなりますが、M10だとこれが15000×60kmにもなります。地球の直径が13000kmですから、このような断層は実際には存在しないと考えられます。
なお、今から6500万年前にユカタン半島に落下して恐竜を絶滅に追いやった隕石(直径約10km、速度毎秒20km)の衝突時のエネルギーは、Mに換算するとM13になります。ただし、この規模の地震が起こった訳ではありません。
5 小平先生へ:3.11の津波は第1波の後、第2波が世界中の観測でされていたようですが(40ヶ国)、これにより津波による被害が大きくなったようだと考えられています。これを「海溝巨大地震時に海溝(断層)の中で発生した40mのずれが、海底に伝わったため」と考えられていますが、(具体的には)どのように説明されていますか。 小平

津波は繰り返し何度もやってくる、これはすでにご存じの通りです。第1波以外が最大になることもありますね。これは何故でしょうか。
一つは、津波は水深や海岸線の形によって、大きく変化することが理由です。
津波は、海底の深さにより伝わる速度が変わります。浅くなると遅くなり、深くなると速くなります。津波が深い方から浅い方に伝わってくると、津波の速さがだんだん遅くなり、その結果、津波が前面で増幅されて高くなってきます。
また、津波は海岸に遡上すると逆方面に新たな津波を生み、次の津波を起こします。
また、地震により海底で地すべり を起これば、それが原因で複雑な津波が発生することにもなります。

ところで、津波の原因は、地震による海底の隆起や沈降といった地殻変動です。最初の津波を起こした海底変動とは別に、地下の断層のずれが海溝軸まで到達して海底が直に40mくらい大きくずれ、それが「第2の」津波を起こしたと、多くの研究者が考えています。
つまりそもそも今回の地震では原因のことなる2種類の津波があり、2回目のものが1回目よりもはるかに大きかった、という可能性があるのです。
東北地方太平洋沖地震の津波の観測波形から、どのような地殻変動が起きていたら観測事実を説明できるかについては現在も調査、研究を続けているところです。

6 地震のゆれと津波について伺いたいと思います。海のすぐそばに住んでいた私は小さい頃から「地震が縦にゆれたらすぐ津波が来るから今すぐ逃げろ、横にゆれたら、少し時間があるか、津波は無い」と聞かされてきました。
3月11日は横にゆっくりゆれたので、津波は来ないと油断していました。地震の体感と津波について、科学的に判っている事があればお教え下さい。

ちなみに我家は2度チリ地震津波の被害を受けました。今回は幸いとなりの家で波は止まり、排水パイプがつまっただけでしたが、地域全体でのダメージは大きいものでした。スマトラ沖の時は当初の予定が急に変更になってシンガポールに居て助かりました。
小平 スマトラと今回、いずれも大変なご経験をされたこと、我々も心に刻みつけておきます。
小さい頃からお聞きの話は、「横ずれ断層による地震では、津波の原因となる海底面での上下の地殻変動が生じない」、ということかもしれません。
しかし、断層のずれの方向とは関係なく、地震波には必ずP波(縦波)とS波(横波)があり、横揺れに感じたとしても、海底面での上下の変動が生じる地震であるケースもあるので注意が必要です。
あるいは、「地震の震源が近い(縦にガツンと揺れる)か遠いか(横にゆっくり揺れる)」、ということでしょうか。当然震源が近ければ津波が来るのもあっという間です。逆に遠ければ津波はなかなか来ませんし、来ても小さくなるでしょう。
怖いのは、人間が揺れを感じなくても(ゆっくりとした変動による地震=津波地震)、津波が突然襲来するケースです。またスマトラ地震でも、はるか離れた場所では当然地震は感じられないため、突然津波に襲われる被害が出ました。
このような場合には、テレビやラジオを聞いていなければ、注意のしようがありません。そのような状況でいかに警報を伝えるか、今後の大きな課題です。
7 歴史や遺跡で追跡できます巨大津波の証拠は、貞観津波以前は、約2000年前の弥生時代の遺跡からと聞いています。
有史以前、たとえば地層に残っている巨大地震や巨大津波の証拠は日本列島では見られるのでしょうか。
木下 あります。高知大学の岡村先生によりますと、紀元前4000年以上も前から、海岸に近い場所にある池に津波が繰り返し押し寄せていた証拠、津波堆積物が存在していることが分かりました。M9クラスの超巨大・津波地震の履歴を知る、極めて重要な証拠になるでしょう。
8 (1)1896年明治三陸地震の津波の高さは信頼できる値なのか(観測点が少ないために高い値を観測できなかっただけでは?)すなわち、今回程度の津波は千年でなく50年から100年程度でも発生するのではないか?

(2)数千年〜数万年間隔で発生する地球的規模の地震・噴火は小さい規模の地震・津波の積分で表現できると考えているのか?(同じ仕組みで発生しているのか?)

(3)(メカニズム)東日本大地震では海溝周辺の断層が大きくずれ、今までとの地震の常識がひっくり返ったとのことだが、これは小さい地震と大きな地震のメカニズムが違うということを言いたいのか?それとも小さい地震も微小に海溝周辺ではずれているが観測できていないと言いたいのか?
小平・
木下
(1)明治三陸地震の津波高は、建物や樹木などに残っていた津波の痕跡から推定された「痕跡高」による数値であり、現在でもこれは有効な手段です。明治三陸地震でもこの手法から津波の高さが推定されているはずですから、観測点が少ないとは、必ずしも言えないでしょう。
(参考:北三陸の津波高さ−明治・昭和との比較

今回の津波は高さが30mを超える「特大」クラスで、このような津波は、数百年とか1000年に一度しか発生していなかっただろうと、高知大学の岡村先生により観測された、津波堆積物などから推定されています。
発生間隔の検討については津波堆積物の調査結果も重要です。
これらの結果を用いて、地震の発生をコンピュータで再現し、いろいろなタイプの巨大地震の再来間隔についての研究に取り組んでいるところです。

(2)地震は、岩盤に加えられたせん断応力により、その岩盤中に亀裂(断層)を作り、その際に生じる震動が原因です。地震の規模は、その断層の大きさやずれの量などにより決まりますが、仕組み自体はどの大きさの地震でも同じと考えられています。
ただしマグニチュードが1違うと、そのエネルギーは32倍も違うこと、そして断層がずれることにより解放させる全エネルギーの大部分は、地震以外のもの、例えば摩擦熱であることは興味深いことです。

(3)最大すべり量の50〜60mは、プレート間の相対速度8.5cm/年で蓄積するには600〜700年かかる量です。最も大きなすべりをした海溝付近の領域では、これまでほとんど地震が起きたことが知られておらず、そこで数百年かけてエネルギーをためていた可能性があります。また、地震が多いとはいえ、宮城沖では1930年代以降に起きた地震によるすべりは、プレート同士の本来の相対運動の3/4だけで、残り1/4は地震で解消されずに残っていたと考えられます。
すべて解明されてはいませんが、イメージとしては、通常の地震やM7、M8の地震と対応する固着域と、それらを含む大きな固着域が存在していそうだ、ということです。そのような大きな固着域の歪みは、通常の地震活動では解消しないのではないか、と考えています。

(専門的になりますが、このような大きな固着域の存在を示す証拠も示されていました。 プレートの相対運動速度と陸域GPSデータを用いたプレート境界面の滑り遅れ速度分布(プレートの沈み込み速度に対する滑り遅れのことで、プレート境界面の固着量に関係する物理量)も推定されており[Hashimoto et al. 2009 Nature Geoscience]、その結果、滑り遅れ速度の大きい場所と過去の巨大地震の震源域とが対応していると解釈されていましたが、実際に広い範囲の滑り遅れ域で歪みがたまっていたと考えなおすと、M9を起こす可能性があったことがわかります。)

(※関連質問 1123 も併せてご覧ください)
9 東日本大震災の地震の震源宮城沖と福島沖に、海上保安庁が設置したGPSによる、海底移動のデータ(=H13〜H20までの調査において、宮城沖のポイントが、年平均7cm移動、福島沖 3cm/年)が、平成20年3月に、発表されていますが、太平洋プレートの移動が、年9cm程と見ると、宮城沖の7cm/年は、プレート固着を表していると考えられないでしょうか。
私には、相当固着して、エネルギーがたまっている様に思えるのですが、研究者から見ると、どうなのでしょうか?
小平 (質問者様は海上保安庁による記者発表資料をご覧になったのだと思われます)

おそらくご覧になった海上保安庁資料は、宮城沖と福島沖のプレート間固着の違いを表していると考えられ、当時は福島沖に比べて宮城沖が固着が強いと解釈されていました。
ご指摘の通り、実際に宮城沖地震は警戒されていたわけです。
また、プレートの相対運動速度と陸域GPSデータを用いたプレート境界面の滑り遅れ速度分布(プレートの沈み込み速度に対する滑り遅れのことで、プレート境界面の固着量に関係する物理量)も推定されていました[Hashimoto et al. 2009 Nature Geoscience]。
その結果、滑り遅れ速度の大きい場所と過去の巨大地震の震源域とが対応していると解釈されていましたが、実際に広い範囲の滑り遅れ域で歪みがたまっていたと考えなおすと、M9を起こす可能性があったことがわかります。
10 小平氏へ

(1)内陸型地震で、地表面と地震断層が表われていますが、今回の東方地方太平洋沖地震で当初、日本海溝までずれが生じていないと考えられたのですか。

(2)地震の規模が大きくない、津波地震を聞いたことがありますが、大きな津波を起こす地震は海底面までずれが生じたと判断して良いのですか。
小平 (1)プレート境界で生じる地震は、教科書や参考本に書かれている2枚の板によって海溝まで跳ね返るようなイメージ図がよくありますが、実際はそこまで単純な現象が生じているわけではないことがこれまでの調査で明らかになってきました。
これまでの研究では、プレート沈み込み帯のプレートの境目の浅い部分は、柔らかい堆積物どうしが接する境界であるため、地震を引き起こさないのではないかと一般に考えられていました。
一方、JAMSTECの掘削船「ちきゅう」による、南海トラフの掘削試料研究から、地震断層のごく浅い部分で地震の痕跡が見つかっています。実際のプレート境界には各々の場所で異なった特徴があって、その特徴が地震の起こし方に影響を与えることがわかってきました。

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110428_2/

同じ日本海溝の中でも、房総沖、福島沖、宮城沖、三陸沖では地下構造に異なる特徴があり、それらがどのように作用しているかの詳細を現在も調査・研究を進めているところです。

(2)海底面までずれが生じた、というより、海底面で上下方向の地殻変動があったということです。
11 東北の太平洋側では、日本でも比較的地震が多い地域ですが、それでなぜ、これまでにない大きなエネルギーがたまるのですか? 小平 最大すべり量の50〜60mは、プレート間の相対速度8.5cm/年で蓄積するには600〜700年かかる量です。最も大きなすべりをした海溝付近の領域では、これまでほとんど地震が起きたことが知られておらず、そこで数百年かけてエネルギーをためていた可能性があります。
また、地震が多いとはいえ、宮城沖では1930年代以降に起きた地震によるすべりは、プレート同士の本来の相対運動の3/4だけで、残り1/4は地震で解消されずに残っていたと考えられます。
すべて解明されてはいませんが、イメージとしては、通常の地震やM7,8の地震と対応する固着域と、それらを含む大きな固着域が存在していそうだということです。大きな固着域の歪みは、通常の地震活動では解消しないと考えられます。
プレートの相対運動速度と陸域GPSデータを用いたプレート境界面の滑り遅れ速度分布(プレートの沈み込み速度に対する滑り遅れのことで、プレート境界面の固着量に関係する物理量)も推定されており[Hashimoto et al. 2009]、その結果、滑り遅れ速度の大きい場所と過去の巨大地震の震源域とが対応していると解釈されていましたが、実際に広い範囲の滑り遅れ域で歪みがたまっていたと考えなおすとM9を起こす可能性があったことがわかります。

(※関連質問 823 も併せてご覧ください)
12

小平先生の資料について

(1)色の違いは何を表わしていますか。
(2)この傾きはどういうことで生まれますか。
小平 (1)示した地下構造のイメージは、1本1本の波形を多数並べて作っている図で、各々の波形の正負を色分けして表示する手法で表示しています。色の濃淡は、波形の振幅の大きさを示しており、例えば色が濃い部分は波形の振幅が大きいことを示します。そして、色が濃い部分(波形の振幅が大きい部分)は、地層の境界や地下の物質境界を表している可能性が高い部分にあたります。

(2)理由はいろいろ考えられますが、多くの場合は重力以外の大きな力が作用しない場合は、水平に構造を形成しようとするのですが、何か大きな力が作用した際には地球内部でも構造が変形してしまいます。
今回の地震が生じたプレート境界のような場では、太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込むことにより、非常に大きな力が作用している場なので、両方のプレートが共に変形してしまいます。その変形した構造の一部が反射面(色が濃い部分)として現われています。
13 地震前後の海底面の垂直水平変位(a)の計測法について、先に別途質問を出しましたが。一方、プレート境界の固着量、又、地震前後のスベリ量の分布は、どのような手段で何を計測し、どのように算出されるのでしょうか。(簡単に説明出来ますか?)
スベリ量というと、陸側プレートと海側プレートの絶対変位の差(b-c)になるかと思いますが、海側プレートの地震前後の変位(C)はあまりないと考えてよいのでしょうか。



小平 プレート境界面上の固着量に関しては、陸上(GPSや傾斜計等)ならびに海底(GPSー音響地殻変動観測、海底圧力計など)の地殻変動観測によって得られた変動量から、そのような変動を生じさせるプレート境界面上の固着量(プレート収束速度に対する滑り遅れ)を計算により求めます。
地震前後(地震時)の滑り量に関しては、地震前後の地殻変動量の変化から、固着量と同様に推定することが出来ます。また、地震波計の解析から、地震時の断層面上の滑り量を求めることも可能です。
滑り量と言われているのは、ご指摘の通りb-cということになりますが、これは(c)があまりないと言う事を意味しているわけではありません。
14 地表、海底のズレはGPS、開口レーダーで解るようになってきておりますが、地下、海底下5km〜10kmの地点でのズレ、横方向の圧力又は上下のズレを測ることができるのでしょうか。 小平 科学目的の海底下掘削でこれまで一番深く掘られているのは、海底下約2km程度ですので、海底下5km〜10kmの地点の地殻変動や応力を直接計測することは現時点ではできません。海底下での応力の方向は、掘削抗の変形から推定できますが、これまで行われているのはおおよそ海底下1〜2km程度に限られます。
さらに深い部分の応力については、地震の震源メカニズム等から推定する事は可能です。また、地殻変動や地震波を伴う変動に関しては、陸上・海底の地殻変動観測や地震波形の解析から推定することができます。
現在、紀伊半島沖の南海トラフで進められている「南海トラフ地震発生帯掘削計画」では、最終的に海底下6~7kmのプレート境界面を掘抜き、掘削孔内での地震計や傾斜計などによる地球物理観測を行う事を目指しています。
15 海底面の上下変位(深さ)、海底面のプロファィルの変化は、船からの音波でわかるような気がしますが、実際に、水平移動が各位置でいくらあったかはどのようにしてわかるのでしょうか。 小平 海底地形調査は本来広域の地形を把握するためのもので、調査する水深や調査時の海水温などの海水中の状態により得られるデータや誤差に影響があります。
そこで、東北地方太平洋沖地震前後のデータを使用した解析では、単純に各々の位置の変化を絶対値で扱っているわけではありません。
今回の場合は、海溝沖合側(沈み込む前の太平洋プレート側)を固定して、海溝や海溝陸側斜面における相対的な変位を推定しています。
今回は、地震に伴う海底変動が桁違いに大きかったため、海底地形調査でも地震前後の海底変動を観測することができたのです。
海底の動きを測る方法としては、海上保安庁などが実施している海底基準局の位置決定などによる海底地殻変動観測があります。
16 木下先生

プレート固着している、上部海底面の形状的変化はあるのでしょうか。

木下 固着域の面は、そもそも平らではなく、もともとの海洋地殻自体に凹凸があります。
南海トラフや日本海溝では、海底火山が沈み込んでいる場所があります。そのような場所は、大きな固着域となりますし、固着域と固着域の境界にすらあるでしょう。
17 固着部と定常すべり部の物質的な違いは。 木下 大変重要な質問です。
プレート境界に沿って、海洋地殻やその上に載っている堆積物が沈み込んでいくと、だんだん圧縮されて内部の水が抜け、同時に温度が上がっていきます。
そうしてついに「固着域」としての性質を獲得すると考えられています。その過程で物質が変質します。
また、南海トラフや日本海溝では、海底火山が沈み込んでいる場所があります。そのような場所は、大きな固着域となるでしょう。
18 木下先生

(1)破壊が海溝軸に達しない状態というのは、アスペリティで始った破壊がアスペリティ内または遷移域で止まり、また破壊による変位が、遷移域や定常すべり域内で吸収されている状態ということですか?

(2)破壊(変位)が海溝軸に達するための条件として3つありました。すべて満たす必要がある場合、破壊速度が速い、というのは東北地方太平洋沖地震の「破壊速度が比較的遅い」というのと矛盾しませんか?(どれか1つの条件を満たせば、というなら3.11は別の条件があったのでしょうね)(破壊速度が速ければ海底に到達する可能性は高い、というのはわかります)
木下 (1)(2)を合わせて回答します。

アスペリティの破壊が止まると、それよりも浅い側では地震の後に急激に圧縮応力が増加します。それがいつ、どのように解放されるのか、ホットな話題としてまさに今研究途上にあります。
固着域の海側が滑るための条件として、私見ですが3つあげておりました。

深部から高速破壊がやってくること

浅部全体が十分な圧縮ひずみを蓄えていること

浅部断層に十分な水が存在すること

です。私はこれらすべてが満たされないと海溝までの滑りは生じないと考えていますが、これからの研究で徐々に明らかになるでしょう。
3.11地震のメカニズムも、これからの調査で段々分かってくる段階です。破壊速度が遅いとはいっても、(これも私見ですが)破壊が海溝に達する条件を満たす速度は十分に満たしていた、ということかと思います。
19 固着域を何らかの方法で強制的に滑らせて地震を予防することはできないか 鳥海 固着域は広く50km四方以上に達するので、それを滑らすには大変大きなエネルギーが必要とされます。それは人間の能力をはるかに超えています。
20 地震の発生源として既存の断層の存在が重要視されているが、全て断層の存在しない所に地震が発生し、新しい断層を形成する可能性はないのか? 木下 原理的にはあり得ます。
岩石の破壊条件は、その場所のせん断応力がせん断破壊強度を超えることですから、その両方が最初に満たされた場所から破壊が始まります。
ですから、一度地震断層が形成されると、そこは周囲に比べて弱いでしょうから、次の地震が破壊する可能性が最も高いのは、この断層の地点でしょう。
21 (1)逆断層という話がありましたが、正断層とどう違うのでしょうかまたなぜ逆断層はなぜ起るのですか

(2)地球内部(核)の高温(約5500℃)の熱源(エンジン)は何ですか。いつごろ消失しますか。
木下 (1)そもそも地中の岩石は、上下左右前後、あらゆる方向から押されています。
押す力(応力)が、例えば上下方向に押す力が最も大きい場合には正断層になります、相対的に水平方向に引っ張られる状態と考えれば分かりやすいかと思います。
これに対して、上下から押される力よりも水平から押す力がずっと大きい場合には、その差により岩石が水平に圧縮されて、逆断層ができます。

(2)地球内部の高温の熱源は、1)地球が微惑星の衝突によって形成された時に蓄積された重力エネルギー、2)衝突した微惑星に含まれていた放射性元素(ウランなど)が徐々に放射壊変して放出した熱エネルギー、です。
これまで46億年間、放出を続けていますが、あとしばらくはなくならないでしょう。
ただし、燃え尽きる前に太陽が大きくなってきて飲み込まれてしまうと言われていますね。もっとも、それも数10億年後ではありますが。
22 (1)ゆれを感じて、なぜ北の方の地震とわかるのか

(2)カーナビのGPSより、地殻変動調査のGPSは精度がなぜ良いのか?
鳥海 (1)地表で感じる地震の揺れの大きいものは横揺れです。
その横揺れが東西であると東北地方の境界型地震である可能性が大きく、南北であると西日本の境界型地震である可能性が大きいとおもいます。
ただし、内陸地震はちがいます。これは短い振動のゆれが大きいことから、感覚的に分かります。

(2)カーナビよりも多数の衛星をつかって、いろいろな補正をするからです。
23 (1)数千年に1回ぐらい発生する巨大地震はなぜ発生するのですか。規則性があるのですか。また、その原理というか、メカニズムは解明されているのですか

(2)地震の起り方に3つのタイプ(内陸型、プレート境界型、プレート内陸地震)があると話されましたが、この3つに起った場所の名称であって、違いではないのではないでしょうか。

(3)起り方とは原因の違いを言っているのではないのでしょうか。(小平さんへ)地震の発生原因にあくまで、応力(圧力)によって生じるのだと思いますが

(4)断層の起る場所は決っているのですか、また起きる場所は大きさなどは特定できるのですか。
小平 (1)最大すべり量の50〜60mは、プレート間の相対速度8.5cm/年で蓄積するには600〜700年かかる量です。最も大きなすべりをした海溝付近の領域では、これまでほとんど地震が起きたことが知られておらず、そこで数百年かけてエネルギーをためていた可能性があります。
また、地震が多いとはいえ、宮城沖では1930年代以降に起きた地震によるすべりは、プレート同士の本来の相対運動の3/4だけで、残り1/4は地震で解消されずに残っていたと考えられます。
すべて解明されてはいませんが、イメージとしては、通常の地震やM7,8の地震と対応する固着域と、それらを含む大きな固着域が存在していそうだということです。大きな固着域の歪みは、通常の地震活動では解消しないと考えられます。
プレートの相対運動速度と陸域GPSデータを用いたプレート境界面の滑り遅れ速度分布(プレートの沈み込み速度に対する滑り遅れのことで、プレート境界面の固着量に関係する物理量)も推定されており[Hashimoto et al. 2009]、その結果、滑り遅れ速度の大きい場所と過去の巨大地震の震源域とが対応していると解釈されていましたが、実際に広い範囲の滑り遅れ域で歪みがたまっていたと考えなおすとM9を起こす可能性があったことがわかります。

(2)地震の起こり方の3つのタイプ(横ずれ型、逆断層型、正断層型)は起こりからの違いを意味しています。その3つのタイプが多く起きる場所の例として、東北日本周辺の内陸やプレート境界、プレート内という言葉を使用しましたが、例えば東北の内陸では、横ずれのほかにも逆断層型や正断層型、あるいはその混合タイプのものが起きることもしばしばあります。

(3)おっしゃる通り、起こり方は原因の違いで、力のかかる方向によってどのような地震になるかが決まります。

(4)地震の起こる場所はほとんどがプレート境界(収束、拡大、横ずれの境界)ですが、ときどき大陸の真ん中でも発生します。日本周辺の場合は、巨大地震の原因となるプレート境界は、太平洋プレートと北米プレートの衝突現場、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの衝突現場、そして、日本海側のユーラシアプレートと北米プレートの衝突現場です。
内陸で起きる地震は、巨大地震を起こすプレートの運動が直接関わっているのではなく、プレートに押された日本列島がねじれたり曲がったりしておきます。地震を起こした断層が、活断層として位置がわかっているところもあれば、伏在していて存在のわかっていない断層もあるでしょう。地震の場所、規模を特定することは困難であり、不確定、未解明なことが多いのが現状です。

(※関連質問 811 も併せてご覧ください)
24 中国内陸部の地震もプレートのしずみ込みか? 鳥海 中国内陸部の地震はプレート内部の変形に伴う地震です。
つまり、日本でいえば内陸地震と同じような地球の変動によります。
25 (1)今回の東北地方太平洋沖地震によって、プレート境界型地震について新たなデータ、知見が得られたと思いますが、これからの東海、東南海、南海地震に備え、最も有効な発見は何だったんでしょうか?

(2)JAMSTECでは研究成果のフィードバックとして、防災関連分野との関わりをどのようにもっているでしょうか?・今回の地震に際し、一部報道で「科学の敗北だ」だとか、某学会長が反省の弁を述べたとの内容がありますが、それらについてどのように考えますか?
木下・
鳥海
(1)巨大地震発生時には、差しわたし100kmに及ぶ固着域が数m一気にずれると考えられていますが、同じプレート境界断層でも、それより浅い側は、これまでは地震と同時には滑らないと思っていました。
しかし最近のく東南海地震震源域での掘削では、断層の浅い側も地震と同時に滑ったことがあった証拠が得られました。その矢先に東北地震が発生し、実際に固着域よりも先端(浅い側)まで一気に滑ってしまったわけです。
南海トラフの次の地震でも、このようなことが起こる可能性を、これまでより一層真剣に検討する必要があると、思いを新たにしています。

(2)今回の東北大地震の研究の結果、海溝軸に達する境界部分にまで大きなすべりをもたらす変形が及んでいたことが、新たに判明しました。また、個別に起こっていた断層運動がいくつか連動することで、一層大きなすべりが起こることが明確になりました。
この結果、東海・東南海・南海地震の連動がよりはっきりと現実味をもったのです。また、さらに南海トラフ軸に達するすべりになることも新たに予想されたのです。これはより大きな津波発生を予想することにつながります。
科学の敗北だとの弁には、当惑します。「科学がより明確にどのような地震かをとらえた」というべきだろうと思います。
もっとも、現代の科学的知識はまだまだ限られたものでしかない、ということは確かなことですが。
26 千島-日本海溝の地震(連動型巨大地震)と南海トラフの地震(東海〜南海連動)の形態の違いは何か?南海トラフの地震はアスペリティの幅が狭いので、規模として最大M8後半にしかならないという知見があるが?また新しいプレート(南海トラフ、フィリピン海P)と古いプレート(千島〜日本海溝、太平洋プレート)の構造様式の違いは?南海トラフで3.11のような大連動が起きるか? 木下 地震の形態の違い:東北では20年に一度、いくつかある数十kmサイズの固着域が(順番に)すべってM7クラスの地震を起こしているのに対し、東海〜南海では3つある100kmサイズの固着域が100-200年に一度滑ってM8クラスの地震を起こしています。
ただし固着域の滑りが連動することがあり、そうなると単発でM8だったのがM9クラスになる、と考えられています。
プレートの年代が違うと、プレート境界に沿った温度構造が異なります(若いほど暖かい)。このことが固着域の位置や大きさに影響することは間違いありませんが、これ以外にも、プレート境界を形成する物質や、プレート沈み込み速度・角度なども大きな影響を及ぼします。
南海トラフでは、古文書によればほとんどすべてのM8地震では、同時、あるいは数年以内に「連動」地震となっているようです。
27 地球ダイナミックス活動結果として、付加体がよく説明されて来ています。私の住む地元、奥多摩の山々にも自身として付加体であろうチャートや石灰岩を見ることができます。高水三山を構成しています高水山・若茸山・惣岳山あるいは御岳峡谷で見られるチャートは付加体と見てよいのでしょうか。またそうであれば、それはいつ頃のものでしょうか(四万十帯でしょうか) 木下 奥多摩地方に分布する地層は秩父帯と呼ばれる付加体です。
秩父帯は東は房総半島から関東山地、赤石山脈、紀伊山地、四国山地、九州山地を経て南は沖縄本島まで帯状に分布する地質体で、ジュラ紀の年代を示す放散虫化石 (シリカの殻をもつプランクトン)が産出することからジュラ紀の付加体と考えられています。
高水三山に露出するチャートや石灰岩も秩父帯を構成する岩石です。
28 あえておたずねしますが・・・3/9M7.3の地震のとらえ方について「前地震」として検討することがタブー視されているように見えるのですが・・・実際には判断は難しく、判断できても公表できないだろうことは理解できますが、議論もタブー視されているようにみえます。 小平 3/9の地震を前震と解釈することや議論することがタブー視されている、ということはありません。気象庁も前震の可能性を報告し、前震と解釈した研究も論文になっている例もあります。
ただし、前震ではないとする見解も一方ではあり、まだ解明されていない問題のひとつです。
29 両親が福島県いわき市に住んでおります。3/11の東日本大震災が起る1ヶ月前頃から3/10までの間に震度3〜5の地震が度々起っており、その旨を心配するメールを両親に送っていたことに気がつきました。今まではこのようなことがなかったため、これは大地震の起る前振れだったのでしょうか?また、地震予知の研究は、1年前、数ヶ月前では不可能でしょうか?現在はどのような予知の研究がなされておられるのでしょうか? 小平 大地震の前に地震活動が活発化することは、経験的には指摘されていることではあります。
しかし、大地震が発生する前に、それらの活動が前兆であると言い切ることはまだ困難な時代です。
ただ、振り返って後から考えると前兆だったのでは…と考えられることも多く、ご指摘の地震活動の活発化以外にも、今回の地震の数年ほど前から、前兆だったのではと後から指摘されている現象が、いくつかあります。
長年警戒されている東海地震については、その前兆現象は前兆すべりであると考えられ、その前兆滑りが観測できる観測体制にはなっています。
ただし、必ず前兆すべりが発生して東海地震が襲来するという保証はありません。
その他、地震予知の研究は、地震活動にみられる様々な特徴の変化の研究、動物などが異常行動を起こす原因であると考えられている地電位差の変化の測定による予知研究 (VAN法)、FM電波の異常伝播(地震エコー)による予知の試み、電離層異常の研究などが実施されています。明確な科学的根拠に基づき確立された研究にまで至っておらず、取り組んでいる研究者の数が少ないのが現状です。
ただし、今後そのメカニズムの解明も含めて研究を充実させていこうとする動きも出てきています。
30 巨大地震の前兆現象が多く観察されています。例えば、磁気による発光現象や、魚類の空前の大漁などです。特に、磁気の発光現象は、阪神大震災の際は、40分前に科学者によって視察されていたと聞きました。また、地震を「地下からの上昇する熱が移動する」ことに求める説では、この電磁気を重視しています。これら前兆現象の研究は、どのようになっているのですか? 木下 前兆現象とは、宏観現象のことを指すかと思います。宏観現象に興味を持つ研究者もおり、特に電磁気現象や井戸の水位変化の報告が多いようです。
これらの異常が地震の前兆であることを証明することは、統計的な相関関係として捉えるにしても、その道のりは非常に長いものです。
単純に考えても、「宏観現象があって地震があった」「宏観現象があって地震がなかった」「宏観現象がなくて地震があった」「宏観現象がなくて地震がなかった」の4通りを検討して、最初の例が明らかに多いことを示さなくてはなりません。
一方、そもそも地震は物理現象ですから、その発生に至るまでに何が起きるか、実験などにより検証すればいいという考えもあるでしょう。
素過程の理解のため、日夜地震の最先端の研究者が頑張っています。
それを検証するには、まず今地震を起こしそうな断層まで掘削して試料を得る必要があります。我々は掘削船「ちきゅう」を使って断層からのサンプルリターンを目指しているところです。
31 東日本大震災後の首都及び首都圏近辺の地下の変動をどうとらえているのか。又はその研究はどのようにされているのか? 木下 東日本大震災発生の直後から、首都圏に限らず全国のあちこちの地震活動が活発化していることはご存じのとおりです。
それは、東日本大震災を起こした巨大断層が滑ってそこにたまっていた歪を解放したために、その周囲ではかえって歪エネルギーが増加した場所があるためだろう、というのが仮説の一つです。
地震を起こす原因は、そこに蓄積された歪ですから、それをあらゆる手段(計算機によるモデル計算、地震観測による地震活動度やそれから推定された応力降下量など)で推定しようと、研究者は取り組んでいます。
32 震源地と震源の深さがスピーディーに知らされますが、どのようなメカニズムになっていますか? 木下 日本中に設置されている地震計からのデータをリアルタイムで一か所に集め、初動(最初の波)がやってきた時刻から、3点測量の要領で震源の位置・深さが計算されます。
ニュースを見ますと、その前に各地の震度が発表され、その範囲が徐々に広がっていき、そのうち震源の位置も放送されますね。あれは、おそらく自動計測された震度を全く人の手を経ずに表示するシステムができているのだと思います。
震源位置やマグニチュードは、もしかしたら人の目によるチェックを受けているのかもしれません。
33 首都直下型地震について、可能性、確率、規模等判る範囲でお教えて下さい。 小平 東京都に被害を及ぼす地震には、
(1)相模湾から房総半島南東沖にかけてのプレート境界付近で発生する地震と、
(2)陸域の様々な深さの場所で発生する地震、の二つがあります。
政府の地震調査研究推進本部は、南関東で発生するM7程度の地震の発生確率は、今後30年以内に70%程度としています。
これは近年の地震観測が開始された1885年以降の南関東で過去にM7程度の被害を伴った地震の発生頻度からの試算です。
また、大正や元禄の関東地震タイプの地震、立川断層に関する地震については別途確率を試算しています。

(http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/kanto/kanto.htm)

過去の大地震の発生頻度に基づく試算とは別に、現在の地震活動を「マグニチュードと地震の発生数の経験則(大地震ほど少ない)」に当てはめて、今後のM7地震の発生確率を試算する手法で、もっと高い確率を示した研究機関もありますが、こちらは試算に使用する観測期間によって確率の値が変わってくるという問題があるようです。

(http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/shutoseis/)

ちなみに、「30年以内に70%」という確率は、東南海地震の発生確率と同じですし、「30年以内に交通事故で怪我をする」確率の3倍という大きさです。

首都直下地震に限らず、地震の時期、場所、規模を確率などの数値として予想することは困難であり、不確定、未解明なことが多いのが現状です。
それでも、3/11の地震以降、東日本は未だにゆっくりと西へ引っ張られ続けています(余効変動)。内陸の地震が活発化しているのも事実で、そうした地震が首都直下地震を誘発する可能性は否定できません。
34 地震波の測定で地震の到達時間が判るようですが、現在の技術で何所まで早く知る事が出来るのか 小平 緊急地震速報についてのご質問と解釈して回答します。
緊急地震速報は、地震波の初期微動(P波)と主要動(S波)の伝わる速度の差を利用して、より大きな揺れをもたらす主要動(S波)が到達する前に、大きな揺れがくることを知らせるシステムです。
現在の技術では、震源に近い地震計でとらえた初期微動(P波)を解析して各地に伝えるため、速報が発表されてから長くても主要動(S波)到達まで数秒〜数十秒です。
また、直下型の地震の場合、震源に近い場所では速報は原理的に間に合わないことになります。
JAMSTECでは、海底ケーブルネットワークの展開により、地震波だけでなく津波を海域でとらえることにより、海溝型巨大地震などのように海域で地震が発生した際にいち早く、速報を出すための技術開発や観測に取り組んでいます。
現在、紀伊半島沖で20カ所の観測点が稼働中で、紀伊水道沖でもシステム計画、構築中です。
35 (1)地震発生のメカニズムをシミュレーションするための数学、物理学的なモデルというものがあると思いますが、現段階で、どの程度までモデルは完成しているのでしょうか。

(2)モデルの関係は結構完成していて、初期値や変数の設定などに苦労している段階であるのか、そもそものモデル開発に苦労している段階なのか(など)教えて下さい。

(3)また、台風の進路予想のように、それなりの精度で地震発生のシミュレーションができるまで、どれくらい時間がかかりそうなものでしょうか。
小平 (1)基本的なモデルの例として、例えばプレート形状モデルがありますが、研究者によって異なるモデルを使っているのが現状です。
プレート形状モデル自体、調査観測研究で実際に調査観測を実施して、データを取得し、それに基づく解析によって、その都度更新、進歩しています。

(2)(3)それをどのようにシミュレーション研究に取り入れるかも現在検討中です。
また、プレート境界のすべりを支配する摩擦法則もまだよくはわかっておらず、いまは岩石実験から得られた法則を使っています。ただ、プレート境界で見られる地震やゆっくりしたすべりもある程度再現することはできていますので、プレート境界の固着やすべりの変化をリアルタイムに解析しながら、すぐ後の振る舞いを予測することは、今後5〜10年で実現すると思われます。
とはいえ、これは天気予報でいえば水蒸気分布や気圧配置の予測で、雨そのものがいつ降り出すかの予測ができないのと同様に、地震がいつどこで起きるかが予測できる訳ではありません。
予測できることは、「もしその状態で地震を起こすとどのような地震や津波が起こることになるか、あるいはそのまま10年蓄積し続けたらどのような地震や津波になるか」ということです。
36 東京湾北部大地震の予測が云々されていますが、「30年以内に○○%」という表現の意味を教えて下さい。なぜ30年以内とするのか(一説には<1世代-生まれてから次の世代<子>が生まれるまで)とご説明下さい。この話をすると、"明日起きるかもしれない"と云っても、"30年先だろう?"と誤解されるケースがあります。 鳥海 正式な確率予測がどのように出されているか、正確には知りませんが、普通は関東の下でおこる地震を過去にどのような時間間隔で起こったかをしらべ、大体の地震発生周期を出します。
それと小さい地震の頻度がどのように推移しているかを観測し、さらにGPSなどにより得られた地殻変動の変化率データを加味して、発生確率を計算することになります。
37 「巨大地震と火山の大噴火とは連動する」とのことですが、その原因である熱の移動や蓄積は観測(測定)できないのですか?若しできれば地震や噴火を予測できると思うのですが・・・ 確かに連動した例はあります(1707年宝永地震と富士山宝永噴火)。
しかしこれは熱の移動ではなく、地震による日本列島内の応力変化によって、マグマ溜りの圧力が下がってアブクができたことが原因と思われます。
火山噴火の場合、特徴的な火山性地震が発生することが多く、ある程度予測はできる可能性が高いと思われます。
38 2012年1月1日の鳥島の地下350kmでM7の地震がありました。どんな地震だったのでしょうか。よく起きることですか。又宝永地震と富士山噴火の連動のようなことも予想されますか? 大局的には、日本海溝沿い(東北日本)に比べて、伊豆ー小笠原ーマリアナ海溝沿いでは、M6を超える地震の発生は稀です。これは、東北日本では北米プレートと太平洋プレートが押し合っているのに対して、後者では、フィリピン海プレートが後退していて、歪みが溜りにくくなっているからです。
富士山の最も新しい噴火である宝永噴火(1707年)の49日前に南海ー東南海ー東海連動型地震である宝永地震(M8.7)が起こった事実があります。
これだけで、「関係がある」とは言えない可能性もありますが、昨年の3.11地震のあとで、富士山直下のマグマだまりが活動的になりました。巨大地震にともなう日本列島内の応力変化が噴火の引き金になる可能性はあります。
39 火山は日本各地にありますが、巨大噴火は九州で局地的に起きているように見受けられました、何か理由があるのでしょうか。 確かに九州は超巨大噴火の密集地帯です。
この原因の1つは、九州の地盤をつくっている岩石の多くの部分を、融点の低い(融けやすい)堆積物(砂岩や泥岩)が構成していることだと考えられます。
40 地球の日本の反対側でアイスランド(エイヤヒャトラ)やカナリア諸島で噴火が起きていますが、今回の大地震に影きょうがありますか? アイスランドやカナリヤ諸島の火山では、日本列島と全く異なる原因でマグマが作られています。地球の深いところ、恐らく600kmより深くからマントル物質が湧き上がっているのです。
したがって、今回の地震は影響を及ぼさないと思います。
41 (1)日本近辺の4のプレートの内、北米プレートは太平洋プレートが潜り込んできていますが反対側のユーラシアプレートの方は如何なっているのですか。

(2)先日、北大の森谷先生の地震の予測がありましたが(ラジオ電波を利用した)M9、クラスの地震は近々(30年位の間)に発生する可能性は有るのでしょうか。
鳥海 (1)日本列島付近の北米プレートに対してユーラシアプレートは日本海東縁部の境界で逆断層で接しています。
しかし、太平洋プレートのように古くから沈み込んではいません。

(2)したがって日本海側には大きく発達した沈み込むプレートはなく、M7級の地震は起こってもそれを超えるM9級の地震は起こらないと考えています。
一方、太平洋側では、南海トラフに沿って巨大地震が連動し、M9クラスの地震になる可能性は、十分にあります。
42 地球上に10のプレートがあるとのことですが、各プレートは地球内部の熱移動のため、対流しているが、その影響で動くのですか。また、夫々のプレートの移動方向は異なっているのですか。また違う方向とすれば何故方向が違うのでしょうか。 鳥海 マントルに起こっている対流運動が大きくプレート運動に影響を与えます。
したがって地球の冷却過程がプレート運動を大きく支配していることは確かなことです。
しかし、プレートはその対流運動に重なって動いています。
そして、一体となって力を受けているので、ある程度独立に運動できるのです。
そこで、プレート沈み込み境界と湧き出し境界の走り方によっていろいろな向きに相対的な運動が起こることになります。
43 (1)3年位前にあった地震のシンポジウムの時も思ったのですが、どうしてごく狭い範囲の研究しかされないのでしょうか。
今回は地球規模の変動という言葉がありましたが、その全体を概観するべきではないのでしょうか。
「日本沈没」は小松左京さんが日本の目方を計算して書かれました。今のコンピューターを使えば地球全体の各プレートのそれを計算し、シュミレートする事が出来る筈です。その中で今環太平洋、ヒマラヤあたりの動きの不気味さを知りたい。その上でないと、地震予測なんて出来ないと思うのですが・・・。
言葉は悪いのですが、予算がついたから、目の前に3.11があったから、色々やりたいことやれるネって、されているだけのような気がしてなりません。本当に個々の現象を事、細かに見るだけで大局がつかめるのでしょうか。プレート理論を1980年代になってようやく認めたようなとんでもない学会にはどうも・・・信頼が・・・でも今回は連動や地震についても言及ありましたネ。
巽・
鳥海
(1)(巽)プレート運動を力学的にシミュレーションすることは、残念ながら現時点ではできません。
その最大の原因は、プレートよりも下にあるアセノスフェアーの物性(特に粘性の温度圧力依存性)を正確に求めることができない為に、プレートに働く力を推定できないからです。
もちろん、観測で得られたプレート運動にあうようにパラメータを決めて再現することはできますが、これはもちろん反則技です。
また地震をおこす破壊に関しても、岩盤の物性が不明である場合が多く、これまでの地震活動「周期」を用いた「確率」を出す方法がよく用いられているのが現状です。
私たちは、ある種「場当たり」的な解析に加えて、なぜプレート運動が始まるのか(地球の表層に液体の水があることが原因だと思います)をまず明らかにすること、プレートやアセノスフェアーの物性を求めること、などを行っています。

(鳥海)今回は地球の変動という視点から東北大地震などを知ろうということでしたが、それは無論プレートダイナミクスの一コマです。
そしてプレートダイナミクスは地球全体の運動なわけですから、太平洋東海岸だけでなく、ヒマラヤやインド洋沿岸、アフリカ大陸内部と関係づけられています。
しかし、やはり、東北地方に一番近い、プレート境界に沿っての変動が影響が大きいのです。
ほかに、チリーやアラスカなども一連の太平洋プレートではありますが、それがどのような時間スケールで関係しているかについては今回の講演会にありましたように、数千年ー数万年スケールで変動を見てはじめて読めるようになるのです。
そのような事実認識があってようやく、大規模な計算機でのシミュレーションの研究が意味を持ってきます。現在はそのような時間規模での地球の大規模変動が研究の主題のひとつであるわけです。
44 (1)プレートのかたさは、どうなのでしょう。砂、なのか一枚岩なのかあるいはどうなのか?

(2)津波ですが、日本側だけではなく、海外の方ではどのようになっていたのでしょうか?
鳥海 (1)プレートは太平洋プレートの海溝付近では100km近くあります。その表面は太平洋沖で堆積して粘土鉱物や微生物の殻などです。
そしてその下は玄武岩などの火成岩で、その下は上部マントルとなっています。
それらは大変硬くなっています。つまり、プレートは硬いのです。

(2) 津波は日本以外にもアメリカ西海岸に到達し、一部被害が出たことが報じられています。
45 地球歴史規模で見ると、日本列島が今の形になるまで、大きく変化してきていますが、この際に起きる変化は、ゆっくりとした変化なのか、それとも今回のような巨大地震による急激な地形の変化なのか? 鳥海 日本列島などの形がどのようにできたかは地質学的な研究からある程度わかっています。それは大きくはマントルからのマグマなどの物質がでてくることですが、もうひとつは断層や褶曲などによる岩石の変形です。
マグマの噴出は火山活動などを見てもわかるように、短時間に大規模であることがわかっています。
一方、岩石の変形は従来はゆっくりした運動とおもわれていたのですが、かなり大規模に大きな変位をおこしていることが徐々にわかってきました。
したがって、ゆっくりした運動と時々起こる大規模な運動の重ね合わせなのでしょう。
46 陸のプレートと海のプレートの間にもぐりこみがありますが、海のプレート同士(太平洋プレートとフィリピンプレート)にはもぐりこみやあつれきがあるのでしょうか? 木下 あります。
伊豆小笠原諸島からマリアナ諸島の東側は海溝があって、太平洋プレート(海洋プレート)が、フィリピン海プレート(やはり海洋プレート)の下に沈み込んでいます。
その他にもトンガ海溝などもあります。
ちなみに陸のプレートどうしがあつれきを起こすと、どちらも軽く分厚いため、大衝突帯が形成されます。インドプレートがユーラシアプレートに衝突してできたのが、いまのヒマラヤ山脈です。
47 ユーラシアプレートと北米プレート、太平洋プレートとフィリピンプレートの境界面の運動はどの様になっていますか?北米プレート⇔太平洋プレート、ユラシアプレート⇔フィリピンプレートにおける沈み込み運動とは異なると思うのだが。 木下 その通りです。
プレート間の相対運動は、様々な手段で推定、あるいは実測されています。
お問い合わせの場合は、4つのプレートの相対運動が分かればいいわけです。
北米プレートと太平洋プレートは、年間8-9cmの割合で近づいています(相当速いです)。ユーラシアプレートとフィリピン海プレートは年間4-5cmで近付いています。
同じ海溝でも場所によって沈み込みの速度(=プレート相対運動の速度)は随分異なります。
巨大地震の起こり方が、このような沈み込み速度の違いも影響していることは、間違いありません。
48 太平洋プレートが最も古いプレートになっている理由は、ホットスポットから距離が離れているからか?太平洋プレート、フィリピンプレートのホットスポットは各々何処か? 太平洋プレートを作り出している「東太平洋海嶺」がどんどん東へ(南北アメリカへ)移動している為に、日本列島周辺で最も古いプレートになっています。
逆にアメリカ側では、新しいプレートが沈み込んでいます。プレートを作るのはホットスポットではなく、海嶺です。フィリピン海プレートは今は生産中止の状態です。
49 プレートの変動及びその速度は、プレートが冷えて沈み込むことが原動力とのことですが、プレートが海嶺からの供給により変動する(おされて動く)との考えはいかがですか。 木下 プレート運動の原動力については、1975年に有名な論文(Forsyth and Uyeda
, 1975 , Geophysical Journal of the Royal Astronomical Society)が出ています。原動力の候補として、引っ張り(冷えて沈み込む)、押し(海嶺からの供給)、引きずり(下のマントル対流)などがあり、一方で運動を抑制する力なども考えられます。
プレートの相対運動・絶対運動の速さなどのデータから、この論文では、統計的に最も寄与が大きいのは、引っ張りであると推定されました。「速く動くプレートには、必ず沈み込み帯がある」ということです。
50 温暖化は地球内部にどのような影響を与えているのでしょうか。それとも全く影響はないのでしょうか。 鳥海 温暖化が地球内部に影響を与えるかどうか、考えてみましょう。
温暖化により、雨や風などにより地表から供給される土砂や、海水からつくられる粘土や微生物の発生量が変動します。その結果、海底堆積物の性質が変わり、それらがプレート運動にのって、いずれマントル内部に運ばれます。
そうするとマントルの化学成分に変化が起こり、火山活動や地震活動に変化があるかもしれません。
これらは何千万年とか1億年後の話ですから、今すぐ直接大きな変化を与えることではないでしょう。
51 巽先生へ

ダイヤモンドで地球内部を調べるとはどのような方法(原理)を使うのでしょうか?
ダイヤモンドは鉛筆の芯と同様、炭素でできていますが、地球内部でダイヤモンドとして存在できるのは、約150kmより深いところです。このような「高圧鉱物」であるダイヤモンドは、地球深部からもたらされた「手紙」なのです。
したがって、この「炭素」が、地表の有機物(生物起源)であるのか、コアから溢れ出しているのか、を調べること(原理的には、炭素の同位体組成を調べると判ります)は、地球内部の物資循環を調べる上でとても重要です。
また、このような地球内部の炭素がマグマ活動で大量に噴出すると、地球表層の環境や生物の進化にも大きな影響をあたえるかもしれません。
52 (1)マントルとマグマだまりの関係は?

(2)マントル対流のエネルギー源はコアのエネルギーが40%とのことですが他はどこから?
(1)マントルが融けてできたものがマグマで、そのマグマが上昇してきて地殻の中で一旦溜ったところがマグマだまりです。上昇したり留まったりするのは、マグマと周囲の岩石の密度(重さ)の関係によります。

(2)マントルの中に含まれる放射性元素の放射崩壊熱です。
53 花崗岩質マグマは最初はマントル物質からできたのでしょうか、それとも玄式岩質マグマからの分化作用でできたのでしょうか。
最近の学説はどうでしょうか。
マントル物質が直接融けて花崗岩マグマができることはない、と考えられています。
玄武岩質マグマの分化作用については、花崗岩に比べて非常に多量の(10倍程度の)マグマが地殻の中に存在しないといけないので、難しいと思われます。
最近では、玄武岩質の下部地殻が他のマグマの熱で再融解すると考えられています。
54 マントルを掘削できない原因を教えていただけますか?
マントルはイトカワに比べたらずっと近いのに!(笑)と思ってしまうのですが。素人考えですが。
最大の困難は、温度が高いことです。ドリリングを行う際の先端(ビット)は250℃をこえると変形・破壊しやすくなります。
しかしこの問題は、温度の低い場所を選べが解決できるのですが、そのような場所は水深が深く、海底までドリルパイプを5000m程度つなぐ必要があります。
もっとも、これらの技術的問題は十分に解決可能で、政府が予算をだすかどうか、ということが最大の問題だと感じています。
そのためには皆さんの応援が必要です。よろしくお願いします。
55 日本の地下にはレアメタルやメタンハイドレイト等の資源があるのは解りましたが、これが生産レベルで活用できる様になるのはいつごろになると思われますか?
またどのような技術開発が必要と思われますか?
あと「JAMSTECを応援する」には具体的にどうすれば応援となるのですか?
鳥海 日本近海のレアメタルやメタンハイドレイトは深海底にあり、その開発には深海底の精密な探査技術、掘削技術、輸送技術、そして安全確保、環境安全確保の技術が必要です。
それらはいまだに未熟であり、今後の早急な展開が望まれています。
はじめの2つについては海洋研究開発機構はすでに技術開発の蓄積はありますが、予算の制約上具体的な実施はまだです。
それ以外の技術は今後展開してゆくことになります。私見ですが、実際的な開発は今後20年以上後のことでしょう。
56 地震の際、建物の中が一番安全とのことですが、建物が崩壊して下敷きになることが多い、当方、高層マンションの上階に住んでいますが、地震時はよく振れるし、建物そのものは壊れなくとも、ドアがねじれて開かなくなったり、壁や天井がくずれたりすることもあります。外に居るのがよいかも。 小平 地震による被害を大きくするのは、おそらく現在の建築や構造物ではがたっと揺れる初動ではなく、表面波によるゆっくりとした震動かと想像します。
そのような震動は地下に行くほど減衰しますから、地下鉄とかトンネル内部は揺れが少ないでしょう。
一方、高層ビルでは随分揺れて身の危険を感じた方も多かったでしょうが、揺れ方は震動の周期と建物のどこにいるかによって、大いに異なります。直前地震予知ができていない現在では、その時どこにいるかは分からないですから、生活しながら安全を確保するのは本当に困難な問題でしょう。
ご自分のいる階が、地震時に大きく揺れそうかどうか、お聞きになるのも一つの手掛かりになるかも知れませんね。
57 大変、おもしろい、重要な研究をしていらっしゃるということはわかりましたが、(結論としては、遠い将来役に立つであろうということのようですね。)研究結果を、今を生きる私達に生かすとしましたら、巽先生のおっしゃった、日本列島の恩恵を楽しみ、試練をたえていくという事が、一番良い、人間の智恵のように思えます。
そのためには、社会をそれにあわせて造りかえていくということが必要な気がします。そのためには、研究結果がダイレクトに行政に結びつき、その知恵となっていく事だと思いますが、そのような努力はなされているのでしょうか?
今、日本が国家として考えなければいけない最も重要な点の1つが、セミナーでお話しした、日本の人口の1割以上が犠牲になる、超巨大噴火です。
しかし、このことをしっかりと認識している人は、政府には一人もいません。私たちは、地震も含めた試練を、政治家を含めた国民全体に伝えることが急務だと思っています。
遅ればせながら、この働きかけを始めた所です。是非、ご協力下さい。
58 (1)いろいろな研究がされていることがわかりましたが、同様の研究はJAMSTECさん以外にもたくさんされていると思いますが、研究成果の共有化といったことはどうされていくのでしょうか?
言葉は悪いですが、縦割り行政のようではうまく活かされていかない(一般の人のために)と思うのです。何かそういう場やシステムがあるものですか。

(2)本日見せていただいた画像やデータを学校現場で使用することはできますか?
鳥海 (1)(2)研究成果の結果を公表していくことは、大変大事なことです。
すでにJAMSTECや東大地震研究所防災科学技術研究所などでは、ホームページからさまざまなデータベースに入ることができます。
そこでは最新の成果が発表されていて、教育機関では自由に使える状態になっています。
今後は、よりリアルタイムでさまざまな地球変動のデータを公開し、広くいろいろな関係者が利用できるようにしていきます。
我がJAMSTECでも、DONETという海底地震・津波ネットワークを紀伊半島沖に設置して運用を開始しましたが、そのデータはリアルタイムで気象庁やいくつかの地方自治体に提供され、地震・津波検知に活用されることになっています。
59 大地震発生のアイディアはあったが、統合するには時間が足りなかった
・つなげるには、どうすればよいのか?
・統合の障害があったとしたら、それは何か?
・時間をかければ、いずれ解決するのか。
鳥海 M9に達する大地震は日本列島にも起こるだろうということは、西日本では考えられていました。
ところが東日本では必ずしも十分にはわからなかったのは、東北日本では、M7−8クラスの地震が起こる、と考えていたためです。そちらに視点がうつったために、M9の地震発生の可能性の視点が、抜け落ちていたのだと思います。
防災や減災ということからは、M9の視点も必要であったにもかかわらず、十分に検討されていなかったことは確かです。今後十分な調査研究を行い、そのようなM9地震の発生を予測し、対策を立てることが可能になると信じます。
60 海溝軸付近の岩盤は、地震発生時の移動で、壊滅的に崩れて泥だらけになっているようなことはあるのか?
プレートずれ時の圧力で変成岩が生まれたりするのか?
鳥海 海溝軸の付近は、ご指摘のように土砂崩れを起こして、そのような堆積物になっていることでしょう。
しかし、そのずれにともなうエネルギーでは変成岩にはなりません。
もっと長い時間と温度・圧力が高い状態でつくられます。