概要
独立行政法人海洋研究開発機構地球環境観測研究センター(IORGC)の海洋大循環観測研究プログラムの市川洋グループリーダー、市川香研究員、水産大学校の滝川哲太郎教員、長崎海洋気象台の川江訓調査員の共同研究グループは沖縄本島南東海域中層において北太平洋亜熱帯モード水(NPSTMW)で特徴付けられる中規模渦を発見し、この成果についての論文(Geophysical
Research Letters Vol. 32掲載)がAmerican Geophysical Union Journal
Highlights※に選ばれ、2005年10月6日付AGUのウェブ上で、6.
Odd water found in the ocean near southern Japanとして紹介されました。
※AGU Journal
Highlightsは、アメリカ地球物理学連合(AGU: American Geophysical Union)のレター誌「Geophysical
Research Letters」に掲載された論文の内、特に注目すべき論文を紹介するものです。
背景
沖縄本島が位置する南西諸島には、数多くの中規模渦が東方より黒潮再循環流域を経て伝播してくることが知られています。これらの中規模渦は表層に強いシグナルを持つことから、軌道衛星によって得られた海面高度分布から比較的容易に追跡することが可能です。しかしながら、海面高度分布から中規模渦の鉛直構造を議論することは出来ず、海面高度偏差の伝播が、主に温度躍層の変動を反映しているのか、中規模渦が発生した海域の水塊特性を維持したまま伝播しているのかについては不明瞭な部分が多くあります。本論文では、長崎海洋気象台「長風丸」によって、1993年5月から2003年2月にかけて、沖縄本島南東海域で観測されたCTDデータを調べました(図1:観測点図)。
成果
2002年2月に沖縄本島南東海域中層において、中規模渦が観測されました。観測された直径約100km、層厚約300m、中心水深約300dbarの中層の中規模渦は、海面高度分布からも観測され(図1:等値線図)、水温18〜19℃、塩分約
34.80〜34.81PSUでした(図2)。中層の渦の中心部では、水温勾配
1.0 ℃/100m以下,塩分極大、密度 25.0〜25.1σθの北太平洋亜熱帯モード水(NPSTMW)の水塊特性を持っていました。NPSTMWは、黒潮続流域における冬季の深い混合層によって形成され、低渦位で特徴付けられる中層構造を保ち、黒潮再循環流域に広く分布することが知られています。しかしながら、約10年間で、中層の渦構造を捉えたのは2002年2月に行われた観測のみでした。このことは、南西諸島東方海域において、中層の渦構造が観測されることは極めて希であることを示しています。この中層の中規模渦の伝播経路を海面高度偏差から特定することは、非常に困難でしたが、このような渦がNPSTMWの構造・水塊特性を維持し、黒潮再循環流域を伝播してきていることが示唆されました(図1:左下概略図)。
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