独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究センター  
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平成18年6月7日
地球環境観測研究センター
変わりゆく白い海、北極海
〜 太平洋水の流入による北極海海氷の急激な減少〜

概要
 独立行政法人海洋研究開発機構地球環境観測研究センター(IORGC)の地球温暖化情報観測研究プログラムの島田浩二サブリーダー、鴨志田隆副主任、伊東素代研究員、西野茂人研究員、カナダ漁業海洋省海洋科学研究所のEddy Carmack 研究員、Fiona McLaughlin 研究員、Sarah Zimmermann研究員、及びウッズホール海洋研究所のAndrey Proshutinsky研究員らの共同研究グループは、北極海における急激な海氷減少が太平洋からの暖かい流入水によって引き起こされたこと、また、海氷減少により海洋循環が強化され、更に暖かい水を北極海に送り込むメカニズムが存在し海氷減少が継続的に起こっていることを示し、この成果について(Geophysical Research Letters Vol. 33掲載)に公表しました。

Pacific Ocean inflow: Influence on catastrophic reduction of sea ice cover in the Arctic Ocean
Geophys. Res. Lett., Vol. 33, No. 8, L08605
10.1029/2005GL025624
Shimada, Koji; Kamoshida, Takashi; Itoh, Motoyo; Nishino, Shigeto; Carmack, Eddy; McLaughlin, Fiona; Zimmermann, Sarah; Proshutinsky, Andrey

 本論文はNature Research Highlights(Nature誌の2006年5月4日号) 及び American Geophysical Union Journal Highlightsに選ばれました。後者については2006年4月21日付AGUのウェブ上で、”Recent severe Arctic sea ice reduction is linked to inflows from the Pacific Ocean”(最近の北極海における顕著な海氷減少は太平洋からの流入水と関連している)として紹介されました。
Nature Research Highlightsは、自然科学に関して掲載された論文の内、特に注目すべき論文を紹介するものです。また、AGU Journal Highlightsは、アメリカ地球物理学連合(AGU: American Geophysical Union)のレター誌「Geophysical Research Letters」に掲載された論文の内、特に注目すべき論文を紹介するものです。

背景
 北極海の海氷減少は、地球規模の気候変動・温暖化の象徴として注目されています。海氷減少の要因は北極振動注1など、大気場の変動により生じていると考えられてきました。しかし、近年、海氷減少と北極振動指数の変動との間には、有意な関連が見出されない事実が報告され始め、海氷減少のメカニズムに対する再考が必要であるとされています。本論文では、近年の海氷減少の要因は海洋の温暖化によることを示し、温暖化は海洋循環強化による熱輸送の増大が要因であることを突き止めました。また、1990年代後半に生じた急激な海氷減少は、新たな海洋-海氷フィードバックによりもたらされていることを提案しました。

成果
 太平洋側北極海の夏季の海氷被覆率は1997年以前では70-80%であったのに対し、1998年以降20-30%程度にまで減少しました。以降、海氷減少は継続的に続いています。急激な海氷減少は”大気の温暖化”や”風系の変化”によるものではなく、暖かい太平洋夏季水が海洋循環の強化により効率よく北極海内部に運ばれることが原因で起こった”海洋の温暖化”によるものであることが分かりました。

研究成果の詳細は、こちらをご覧ください。




 
Institute of Observational Research for Global Change