海洋研究開発機構地球環境観測研究センター(IORGC)の海洋大循環観測研究プログラムの河野健サブリーダーらは、海洋地球研究船「みらい」により実施した1999〜2005 年の太平洋横断・縦断精密観測の結果を1990 年代前半までの観測結果と比較し、南極海から太平洋に流れ込む底層水の流路に沿って、0.005度から0.01度の水温上昇(気温に比熱換算すると、
観測線直上の大気全体をおよそ1〜1.6度暖めることが可能な熱量に相当)が生じていることを発見しました。この成果については、
Geophysical
Research Letters Vol. 33 に掲載されました。
Bottom water warming along the pathway of lower circumpolar deep water in the Pacific Ocean
Geophys. Res. Lett., 33, L23613 doi:10.1029/2006GL027933
Kawano, Takeshi; Fukasawa, Masao; Kouketsu, Sin'ya; Uchida, Hiroshi; Doi, Toshimasa;
Kaneko, Ikuo; Aoyama Michio; and Schneider, Wolfgang
背景
全球の海洋大循環は膨大な熱や二酸化炭素を運ぶので、地球規模の気候を支配する一要因であり、
近年は温暖化による衰退やそれによる気候の激変が将来生じるのではないかと憂慮されています。
海洋大循環の起点は、冷たく重い底層水が作られる北大西洋のグリーンランド周辺及び南極周辺ですが、
南極周辺で形成された水は、太平洋のおよそ3500m以深を満たす底層水として南太平洋から北太平洋に流入します。
その流入路に沿った水温が、ここ10年で0.005〜0.01゚C上昇していることが明らかになりました(気温の変化に比べるとこの量は一見微々たるものに見えますが、水の比熱が空気のそれと比べると圧倒的に大きいので、無視できる量ではありません)。
1990年代に世界海洋循環実験計画(World Ocean Circulation Experiment: WOCE)と
呼ばれる大規模な国際共同観測が実施され、海水温の場合0.002゚C以上の高精度な
データが得られています。JAMSTECでは1999年以降隔年でより高精度の再観測を実施し、
WOCE当時の水温と比較することにより、この昇温を検出しました。
成果
1990年代の観測と比較した結果、南極に近い南太平洋では0.01゚C程度、北太平洋では0.005゚C程度、上昇していました。
この原因についてはまだ断言できませんが、南極周辺での底層水の形成量を減少させると南太平洋から北太平洋まで
数十年のうちに底層の水温が上昇するという数値モデルを使った研究があり、そのようなことが現実に生じている可能性があります。

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