海外における科学技術政策に基づく温暖化施策(2009年7月現在)

米国

1.計画・目標

 米国は、京都議定書により1990年比7%削減の温暖化対策目標を定められたが、議定書から離脱した。しかし、2009年のオバマ大統領就任後に多くのエネルギー政策を打ち出し、2050年までにGHG排出量を1990年比で80%削減するという長期目標を定めた。この政策では、温暖化国際交渉や再生可能エネルギー・クリーン技術、省エネ等に関して多くの個別政策を設けており、特に再生エネルギーによる電力供給目標としては、2012年までに10%、2025年までに25%と具体的な数値目標を掲げている。

(1)科学技術政策

 米国政府は気候変動の科学的な研究および温室効果ガス排出削減に向けた新たな技術の開発に取り組むため、2002年に気候変動科学プログラム(CCSP)および気候変動技術プログラム(CCTP)が立ち上げられた。以下に詳細を示す。

<CCSP> http://www.climatescience.gov/default.php

組織:
気候変動科学技術統合委員会(CCCSTI)内の技術サブグループ
目的:
地球気候変動研究プログラム(USGCRP)と気候変動研究イニシアティブ(CCRI)を統合するためのものであり、研究や観測を通して地球環境理解を促進することを目的としている。
予算:
政府は2007年、2008年ともに約18億ドルの予算を組み今後もさらに増やす方針
目標:
  1. 地球の過去あるいは現在の気候・環境・自然変動に関する知識の改善や、観測される変動・変化のさらなる原因理解
  2. 地球の気候やそれに関わるシステムに対して変化の原因となる力の数量化
  3. 地球の気候やそれに関わるシステムの将来的な変化に対する不確かな予測の改善
  4. 異なる自然や生態系が気候変化や地球規模の変化に与える影響の理解
  5. 気候変動に関わるリスク管理の上限を認識
アプローチ:
  1. 科学研究(気候変動やそれに関わるシステムの研究計画・支援・行動)
  2. 観測(気候関連の研究に必要な総合変数決定のための観測・データ管理システムの強化)
  3. 決定支援(意思決定のための科学的情報源の発展)
  4. コミュニケーション(国内外の科学者や関係者とのコミュニティー強化)
研究要素:
  • 大気組成
  • 気候の多様性やその変動
  • 水循環システム
  • 陸地変動
  • 炭素循環システム
  • 気候システムの観測やモニタリング
  • 情報網
  • 国際研究、国際協力

<CCTP> http://www.climatetechnology.gov/index.htm

組織:
気候変動科学技術統合委員会(CCCSTI)内の技術サブグループ
目的:
研究開発や投資により気候変動対策に向けての技術の向上や発展の促進を目的とし、世界でのリーダーシップや他国とのパートナーシップを図るためのものである。
予算:
政府がCCTPの中で戦略計画を打ち出し、温室効果ガス削減や経済成長のための科学技術等に2007年に約30億ドルを出資
目標:
  1. エネルギー消費およびインフラにおける排出削減
  2. エネルギー供給における排出削減(低排出技術、排出ゼロ技術)
  3. CO2の貯留、隔離
  4. CO2以外の温室効果ガス排出削減
  5. 温室効果ガス排出の測定やモニタリング技術の改善
  6. 気候変動に関する基礎科学の強化
アプローチ:
  1. 気候変動対策の研究開発を強化
  2. 基礎科学研究の強化
  3. 官民パートナーシップの確立
  4. 国際協力の機会を増進
  5. 最新テクノロジー実証試験の支援
  6. 将来的な技術労働者の確保
  7. 技術支援政策の提供

CCTPではこれらの目標達成のため6つのワーキンググループが立ち上げられ、研究開発の遂行やより良い情報網の確立に努めている。

(参考:CCTP、CCSP組織図)

組織図

 また、米国気象庁(NOAA)は“気候変動の認識とそれに対応するための社会的能力の向上”を目的とし、それを基にNOAA Strategic Plan(FY2009-2014)を立ち上げた。このプランの中で4つの目標(Ecosystem Goal、Climate Goal、Weather and Water Goal、Commerce and Transportation Goal)を掲げ、大気・化石燃料・海洋・生態系等のなかで炭素循環がどのように作用しているのか、あるいは将来的にどのように変化してくるかということに注力して研究を行っている。例えば、シアトルやワシントンにある気象庁海洋環境研究所(PMEL http://www.pmel.noaa.gov/co2/)の“カーボンダイオキサイドプログラム”では、船や停泊所から海洋の炭素循環を観察し、その変化を追っている。また、気象庁地球物理流体力学研究所(GFDL http://www.gfdl.noaa.gov/)では大気中の炭素濃度や陸地と海洋の生態系の相互作用等に関してシミュレーションを行い、地球モデルを構築した。さらにこの研究所ではCO2がどこから来るのか、そしてどこへ行くのかを認識するための地球の大気サンプル用プログラムを保持している。なお、これらの研究はFY2009で設定された41億ドルの予算によって成り立っている。

 一方、環境保護庁(EPA http://www.epa.gov/ord/npd/index.htm)の研究機関である研究開発室(Office of R&D)は“人間の健康と自然環境を守る”というミッションを掲げ、以下の8つの国家研究プログラムを行っている。

・クリーンエアー研究プログラム
・飲料水研究プログラム
・生態系保護研究プログラム
・地球変動研究プログラム
・健康研究プログラム
・土地研究プログラム
・有害物質研究プログラム

・水質研究プログラム

 研究開発室はそれぞれのプログラムに対して最先端技術や関係者からの意見等を取り入れる形で多年度計画(MYPs)を立てて研究を進めている。

(注)なお、2009年5月にこれらの研究も含めたEPAの活動に対して105億ドルの予算が当てられることが決定した。

(2)参考情報

 2009年に7,870億ドル規模の景気対策法が成立し、各分野において予算配分額が発表された。特に重点的に行われた3分野について以下に示す。

表1-1 景気対策法案における各プログラム予算配分額

プログラム 予算配分額 [億ドル]
スマートグリッド
(研究開発、送電網の整備など)
110.0
エネルギー効率化
(省エネ電化製品のリベート化、低燃費自動車購入支援など)
239.1
再生可能エネルギー
(研究開発、木材からのエネルギー回収助成など)
85.5

 また、米国では民間のクリーンエネルギーセクター(原子力、太陽光、風力、バイオ燃料など)に年間で150億ドルを戦略的に投資することで民間の努力を促している。