技術レポート Feb.2013 vol.4

担体を使った動物細胞の凍結保存法

動物の培養細胞の保存のため、特別なナイロンメッシュ担体を用いた新しい凍結保存方法を開発し ました。作業が容易で細胞への凍結ストレスが軽減し、生存率の向上、安全性の向上、高密度化、低コスト化が可能となります。 特許第5140155 号「動物細胞の凍結保存用担体、それを用いた凍結保存用バイオデバイス及び凍結保存方法」

 動物の培養細胞の保存は、細胞を剥離し保存液に懸濁して凍結保存する方法が一般的ですが、操作が煩雑なこと、解凍時の生存率にばらつきがあること、細胞表面がトリプシンなどの剥離剤処理で傷害を受けること、高価な血清培地が多量にいることなどの問題があります。  本発明は、保存する培養細胞を特定のメッシュ状繊維担体(10 〜 120μm の開口部、繊維直径1〜80μm)上で接着培養することにより、これらの問題を解決しました。本来、正常な培養細胞は培養シャーレ上に一様に広がると増殖を止めます。しかしメッシュ状繊維担体に接着した培養細胞は、増殖すると自らの細胞でメッシュの孔を埋めていき、メッシュ孔の両面から培養液があたります。こうしてできる細胞塊は、非常に高密度かつ生体組織と同様の構造となることから、保存中の細胞への物理ストレスが抑えられます。
 また、メッシュ状繊維担体に接着した培養細胞は担体ごと容易に取り扱え、保存液は担体が浸るだけの量に削減でき、解凍に必要な時間も短く細胞へのストレス低減につながります。そして細胞をメッシュから剥離する際にはトリプシンを使わず、軽く振動をあたえるだけで剥離できます。

写真●メッシュと孔に接着・増殖した細胞

写真●メッシュと孔に接着・増殖した細胞

 本法により、従来法と比べて簡便かつ高い生存率を示す凍結保存が可能となります。また、保存液を全く使わずに、気相での凍結保存も生存率は低くなりますが可能であることも確認しています。

表●本発明と従来法の比較

  本発明 従来法
凍結作業 細胞が接着したメッシュを保存液に浸す。 1.細胞剥離(トリプシン処理)
2.培地から遠心分離・濃縮
3.保存液への懸濁・分注
解凍作業 1.保存液の解凍
2.細胞が接着したメッシュを得液体培地に浸す
3.軽い振動で細胞をメッシュから剥離
1.保存液の解凍
2.液体培地と混合
3.細胞の遠心分離・濃縮
4.培地に再懸濁
細胞密度 3×108 個/mL 1×106 個/mL
生存率 88% 81%
保存液量 0.1mL/本 1mL/本
解凍所要時間 約5秒 約30秒
発明者:
小西聡史
旧:JAMSTEC 極限環境生物圏研究センター

 

 

■発行
発行元:独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)事業推進部 推進課
発行日:2013年2月
■お問い合わせ先
事業推進部 推進課(〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2-15 本館6階)
TEL:046-867-9246 FAX:046-867-9195
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