JAMSTEC
平成10年3月10日
海洋科学技術センター
- 発生時の状況
海洋科学技術センター(理事長 平野 拓也)の海洋地球研究船「みらい」は平成10 年3月4日(水)、トライトンブイ設置海域への航行中、千葉県野島崎沖南東約1100km の海域において慣熟訓練の一環としてドップラーレーダーを稼働させていたところ、 14時(日本時間)頃から動揺修正装置のGPS信号表示部(経度)が異常な数字を示し (概念図参照)、 その後、動揺修正装置電源の再投入を行うなど、復旧を試みたが、 3月10日までに復旧には至らなかった。
- 今後の対応
動揺修正装置のGPS受信機が不良である可能性が強いが、早急に原因究明を行う。
なお、現在行っているシドニーに向けての航海には支障がないため航行を続ける。
- 現在行っている観測への影響
航走中に実施するドップラーレーダー観測では、位置情報が不正確となり、有効なデ ータが得られない可能性が高いが、停船して実施するドップラーレーダー観測では、 当初予定どおり精度良いデータを得ることができる。
- (参考1)ドップラーレーダーについて
- ドップラーレーダーは、通常の気象レーダーと同様にレーダー波の反射強度から雲の 厚さや雨の強さを測定できるほか、ドップラー効果を利用して、雲の中の雨粒・氷粒 等の粒子の動きが測定可能である。これにより、雲の中で雨が作られるメカニズムや 雲の発達過程など、海洋上における降水機構を正確に理解することが可能になり、そ れと密接に関連しているエルニーニョなどの大規模な大気−海洋相互作用の解明に役 立つことが期待されている。
- (参考2)動揺修正装置について
- 船体の動揺によってドップラーレーダー本体が揺れて、照射対象とした雲が捉えられ なくなることを防ぐ目的で、船体動揺を打ち消す方向にレーダーアンテナの方向を自 動制御する装置である。船体の揺れを検知する慣性航法装置と位置情報を取得するGP S受信機で構成されている。
問い合わせ先
海洋科学技術センター 横須賀本部
海洋観測研究部 矢野敏彦
電話 0468-67-3435
総務部普及・広報室 池川和彦
電話 0468-67-5547