JAMSTEC
平成11年 3月19日
海洋科学技術センター


トライトンブイ4号機の回収について


  1. 経緯
    海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)では、西部熱帯太平洋におけるエルニーニ ョに関係する海洋変動を計測するため、平成11年2月16日から3月7日にかけ海洋地球研 究船「みらい」によりトライトンブイ9機を設置完了した(図1)。しかし、トライトン ブイ4号機(平成11年3月3日、北緯0度、東経156度、水深1,957mに設置)は、3月12日 19時42分(日本時間)に設置地点を離れて流れ始めたことが、むつ事務所(関根浜)にお いて確認され、同海域で海洋観測研究行動中の「みらい」を急遽回航させ、3月16日,15 時56分に漂流している海面ブイおよび500m長のワイヤー並びに接続されているCT(水温・ 塩分センサー)を回収した。更に、切断された海中部の残りのワイヤー部,ナイロンロー プ並びにCTD(塩分・水温・深度センサー)については、リカバリーブイ(注1)に接続 された状態で、3月17日10時55分にすべて回収した。

  2. 状況
    回収したトライトンブイ4号機(資料-1)の目視検査では、
    (1)海面ブイのデッキ面から70〜80cmのところにへこみ(横50cm,幅3cm、深さ7mm程度) があった。またブイの周辺にいくつか擦れた痕があった。
    (2)切断箇所はトライトンブイ係留系ワイヤーロープの水面下500mに装着しているCT の直下であった。
    (3)ワイヤーロープの切断部分にはワイヤー素線のバラツキはなく、特筆すべき傷や漁 網・釣り糸等の絡み痕も認められなかった。
    (4)リカバリーブイ供に回収された、500m切断下部のワイヤーロープは、1.5mほどワイヤ ー素線がばらけており、ナイロンロープと絡まって回収された。また、最下部の5番リカ バリーブイ上部のナイロンロープは、30mほどのところで切断していた。
     
  3. 推定原因 
    船上での海面ブイの傷、へこみの目視検査から、(1)何か人為的な行為(船舶が 海面のブイを曳航)等により、海面ブイが強く引っ張られた事から、張力負荷の増大 を生じ(2)水深500mのCTセンサ直下のワイヤーロープ部分で、破断が起こったと推 定された。また、(3)4番と5番のリカバリーブイの間のナイロンロープの切断につ いては、ワイヤーロープの切断による反動でナイロンロープが絡み、リカバリーブイ で浮上している間に切断したものと考えられた。
       
  4. 対応
    ワイヤーロープの切断は、船舶等が海面ブイを曳航したために起こったものと推 定されるが、原因の詳細についてはセンターに持ち帰り究明する。また、再発防止対 策についても再度検討を行い、本年10月の研究行動において当該ブイを再設置する 予定である。
    なお、この間の観測データは米国のアトラスブイのデータで補完することで対処   する。

  5. 今後の予定(資料-2「みらい」行動変更 参照)
    本行動で計画されていた米国のアトラスブイ点検修理のうち、1基(北緯8度、 東経156度に設置)の回収・再設置は中止し、「みらい」は3月31日下関に 入港する。


    注1:リカバリーブイは、トライトンブイの係留系が水面付近で切断した場合に、 残っている各種センサーを回収できるように装着している浮力体。