平成12年11月22日
海洋科学技術センター

北極海に流入する夏季ベーリング海水の新しい流路について

  海洋科学技術センター(理事長 平野 拓也)は、アラスカからカナダのボーフォート海沿岸を流れる暖かい夏季ベーリング海水が、従来の説(図1:黄色線)とは異なり秋から冬にかけて流れの逆転(東向きから西向き)があることを発見しました(図1:赤線)。また、西に流れた夏季ベーリング海水はノースウィンド海嶺にて北向きに流れ、太平洋側の北極海の広い範囲に大量の熱を供給していることも明らかとなりました。
 本観測は、北極海域での海氷厚・面積の著しい減少に代表されるこれまでにない急激な環境変化の実態を把握し、また北極海域が気候変動に与える役割を明らかにする事を目的として、平成8年9月から継続してアラスカからカナダのボーフォート海沿岸域(図2)に流向流速計と水温塩分計を取り付けた係留系を設置し、水温・塩分及び流向・流速の観測を行っているものです。
 今回の新しい流路の発見は、1997年以来の北極海太平洋側での夏季海氷域の異常な減少(図3)の一因ではないかと推測され、本年10月の係留系の一部が回収できませんでしたが、同海域での係留系の設置により観測を継続することから、北極海域が気候変動に与える役割が解明できるものと期待されます。

   問い合わせ先
   海洋科学技術センター
    海洋観測研究部 滝沢、菊地
     電話 0468-67-3468
    北極海研究グループホームページ http://w3.jamstec.go.jp:8338/index_j.htm
    総務部普及・広報課 他谷、月岡
     電話 0468-67-3806