日本近海の海洋変動予測実験を開始

平成13年12月20日  
宇宙開発事業団   
海洋科学技術センター

 地球フロンティア研究システム(宇宙開発事業団と海洋科学技術センターの共同プロジェクト)の気候変動予測研究領域の山形俊男領域長(東大教授)、宮澤泰正研究員の研究グループは、高解像度海洋大循環モデルを用いて、日本近海の黒潮流路の変動に着目した海洋変動予測実験を開始した。
 同研究グループは、日本近海の海況に大きく影響する黒潮流路の蛇行や中規模渦の挙動をよく再現する高解像度海洋大循環モデルと、衛星観測による海面水位変動データを用いて黒潮流路変動や中規模渦の挙動等を予測するシステムを開発した。過去のある時点で黒潮流路を再現し、その状態からの未来を海洋モデルを用いて予測する実験(ハインドカースト実験:注記参照)を行った結果、現時点では最長で2ヶ月先までの変動予測が可能であることが明らかになった。
 同研究グループは、観測データを逐次海洋モデルに導入して、海況変動予測を定期的に行う海況予測実験システムを構築し、黒潮流路変動等の予測とその検証を行うとともに、より詳細な沿岸海況予測を含むシステムの実用化に向けて改良を行ってゆく予定である。

(注)ハインドカースト実験: 
直訳は過去再現実験。過去のある時点で場の状態を再現し、その状態からの未来を予測する実験を指す。

背景
 このような海洋変動の日常的な予測(「海の天気予報」)は予測結果の現場海域検証実験と相俟って、より長期の気候変動を予測する大気・海洋モデルの改良に著しく貢献することが期待される。またこのような計算科学の実用的側面から、我が国にとっては、日本近海の海洋変動を詳細に解明し、予測することは、排他的経済水域(EEZ)を適切に管理し、持続可能な開発を行うために極めて重要である。

方法並びに成果
 水平解像度が約10km、鉛直には海底地形を詳細に解像する35層の高解像海洋大循環モデルを開発し、日本近海における黒潮流路変動や中規模渦活動による海面の水位変動強度を世界で初めて再現することに成功した(図1)。海面の水位変動を常時観測する人工衛星(NASA:TOPEX/POSEIDON)のデータから推定した初期状態(黒潮流路とその周辺の渦の位置)を与えて、このモデルを駆動し、以後2ヶ月にわたる黒潮流路変動を再現した(図2)。

お知らせ
 プレス関係者の方からのご要望等ございましたら、海洋科学技術センター横浜研究所(金沢区昭和町3173−25)において、海洋変動予測シミュレーションのデモンストレーションを個別に実施致しますので地球フロンティア事務局へお問い合わせください。

問合せ先
   地球フロンティア研究システム 合同推進事務局
               担当: 川崎 Tel 045-778-5680(直通)
               http://www.jamstec.go.jp/frsgc/jp/index.html
宇宙開発事業団 広報室 Tel:03-3438-6107〜9 http://www.nasda.go.jp/
海洋科学技術センター 総務部 普及・広報課 Tel:0468-67-9066