平成15年1月9日
海洋科学技術センター


海底地震観測網による南太平洋マントル巨大上昇流の観測開始について

1.概要
 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)固体地球統合フロンティア研究システム(IFREE、システム長 久城育夫)は、東京大学地震研究所海半球観測研究センター(センター長 歌田久司教授)及びフランス5研究機関(資料1 [PDF:8KB])と協力して、平成15年1月10日より南太平洋の仏領ポリネシア海域に海底地震観測網を設置してマントル巨大上昇流の観測を始める。
 従来の陸上地震観測網により、仏領ポリネシア海域に地球最大のマントル上昇流が存在することがおぼろげながら分かってきたが(水平分解能2000km程度)、同海域の島がまばらなため、陸上地震計だけではこれ以上分解能を高めることはできなかった(資料3)。
 昨今、海底で長期観測可能な精密地震計が開発されたため、今回、仏側が島に配置した10台の地震計と互いに補うように海底地震計8台を設置し(資料4)、500km程度の分解能(現在の4倍)の観測を初めて実施する。観測は約1年間行い、その後海底地震計を回収してデータを取得する。取得したデータを解析することにより、地球最大のマントル巨大上昇流の詳細な形状・構造を明らかにする。データの解析には1〜2年ほどかかる見込み。

2.背景及び目的
 地球には、堅い岩石からなる「地殻」の下に、岩石でありながら流動する性質をもつ「マントル」が存在する(資料2(1) [PDF:8KB])。世界の地震観測網のデータをコンピュータで処理する地震波トモグラフィー技術(資料2(2))によって、マントル内に熱い上昇流(ホットプルーム)や冷たい下降流(コールドプルーム)の存在が知られるようになってきた。このマントル内の変動がプレート運動や火山活動などの根源的原因となると考えられている。
 地球最大のマントル上昇流が存在するとみられる南太平洋の仏領ポリネシア海域には、陸上の地震計を設置できる島が少ないため、地震波トモグラフィーの解像度が悪く、巨大上昇流の源の位置、上昇流の温度分布、および上昇流がタヒチなどの火山島に達する経路などが不明であった。
 今回、海底地震計による長期観測が可能になったことにより、これまでの観測の空白域を埋め、巨大上昇流の詳細な構造を観測できるようになった。これによって、巨大上昇流の正確な温度や上昇経路を推定することができ、なにが原因となってマントル上昇流が生じ、どのようにして地表の環境に影響を与えているかなどを明らかにする。
 約1億年前の白亜紀に、この巨大上昇流が非常に活発化し、南北両極に氷床のない温暖な環境を作り出したと推定されている。本観測結果は、マントル上昇流がなぜその時代に活発化したのかを解明することにも資する。

3.観測内容
 仏領ポリネシア海域では、現在、フランス5研究機関グループが10台の精密地震計を島に設置して観測を行っている(PLUME Project)。今回、それと互いに補うように8台の長期観測型海底精密地震計を海底に設置し、両者データとあわせて解析することにより、巨大上昇流の詳細なイメージを得る。
 海底精密地震計8台(うち5台は東京大学地震研究所が提供)は、海洋科学技術センター所有の調査船「よこすか」(総トン数:4,439トン)で1月10日から27日(18日間)に仏領ポリネシア海域に設置する。


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