平成15年8月20日
海洋科学技術センター

深海巡航探査機「うらしま」が燃料電池による航走に成功

 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、水中探査機として世界で初めて燃料電池を動力源とした深海巡航探査機「うらしま」の潜航試験等を駿河湾において実施し、成功した。

 海域試験は、静岡県静岡市沖の駿河湾において、8月12日(火)朝9時より開始し、深度300mまで潜航を行い、燃料電池の発電性能をはじめとする各種の性能試験を実施した。この後、海面に浮上し、電波通信等の性能試験を行い、昼12時に支援母船「よこすか」に揚収した。母船上で、機体を点検し、全て異常の無いことを確認した。今回の海域試験により、燃料電池による潜航性能等を確認できたことで、今後に予定している海域試験の見通しがたった。
 本年9月と12月の海域試験においてより深い深度で、航行距離を延ばした試験を行い、来年度には300kmの長距離自律航行を目指す。

 この燃料電池は、固体高分子電解質膜型で、定格出力は4kW(120V)である。発電部は外形約1mのチタン合金製の耐水圧容器に収められている。燃料の水素ガスは世界最高レベルの貯蔵性能を持つ水素吸蔵合金に貯蔵する方式で、酸素は高圧ガスボンベを用いている。大気中で使用する自動車用燃料電池とは異なり、水素ガスや酸素ガスに含まれる微量の窒素や二酸化炭素等の不純物と、発電の際に発生する生成水を簡単に外部に放出できない。「うらしま」の最大深度は3,500mであるが、この深度の水圧は350気圧で、「うらしま」の燃料電池内部の気圧は約2気圧である。上記の不純物や生成水を350気圧の外部に放出するには、大きなエネルギーを必要とする。また生成水を放出すると中性浮力を保てなくなる。このため「うらしま」では、これらの不純物や生成水を内部に蓄積する閉鎖方式を採用している。この様な事から閉鎖式燃料電池は大気中で使用する開ループの自動車用に比べ技術的に難しく、実用開発は世界で初めてのことである。

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「うらしま」開発スケジュール

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