平成16年4月8日
国立大学法人東京工業大学
独立行政法人海洋研究開発機構
財団法人高輝度光科学研究センター

地球深部(核・マントル境界)の構成鉱物が明らかに
-大型放射光施設(SPring-8)を利用して地球深部構造の解析に成功-

概要
国立大学法人東京工業大学(学長 相澤 益男)と独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)固体地球統合フロンティア研究システム(IFREE、システム長 久城 育夫)は、財団法人高輝度光科学研究センター (理事長  吉良 爽)と共同で、超高温高圧状態で存在する地球深部物質の物理化学現象を探る研究を進め、核・マントル境界付近がポスト・ペロブスカイトという、新発見の鉱物から成り立っていることを、世界で初めて明らかにした。この研究成果については、8日(米国:日本時間9日)に発行されるサイエンス誌に掲載される。

目的と背景
地球の体積の約8割は、マントルと呼ばれる岩石圏である。地球の半径は約6400kmであるが、そのうち深さ2900kmまでがマントルにあたる( 資料1(1))。地球内部を伝わる地震波を解析する研究により、マントルは層構造をなしていることがわかっていた( 資料1(2)および図1)。
地球深部は超高温高圧の環境下にある。今までにも地球内部の高温高圧状態を再現する高温高圧実験により、地球内部の主要鉱物の物理化学的性質を解明するための研究が進められてきた。しかし、核とマントルの境界にあたるD”層と呼ばれる部分(図1)では、125万気圧2200℃以上に達し、そのような超高温高圧状態を人工的に作り出して実験を行うことは技術的に困難であった。このD”層はペロブスカイトという鉱物から成り立っていると長い間考えられてきたが、その検証はなされていなかった。


成果
今回、国立大学法人東京工業大学理工学研究科と独立行政法人海洋研究開発機構固体地球統合フロンティア研究システム地球内部物質循環研究領域は、財団法人高輝度光科学研究センターと共同で、核・マントル境界の環境に相当する超高温高圧条件を発生させるために必要な技術開発を行いつつ( 資料1(3))、X線回折法( 資料1(4))を用いた極微小領域での観察実験を行い、地球内部物質の物性変化(相転移)( 資料1(5))の解明を進めてきた。その結果、D”層は、ポスト・ペロブスカイトという、新発見の鉱物から成り立っていることが明らかになった。このポスト・ペロブスカイトは、今回世界で初めて合成に成功した鉱物である。
今回の成果により、地球内部の層構造を形成している鉱物種の変化がすべて明らかになった。高圧地球科学の分野では、1974年の、輝石(MgSiO
3)組成ペロブスカイトの合成による、下部マントル構成鉱物解明以来の重要な発見と言えよう。
 
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