平成16年9月27日
海洋研究開発機構

民間企業との共同研究による自動航行式探査機ロボットの開発・製品化に成功

概要

 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、広和株式会社(代表取締役 廣安雅美)との共同研究により、長さ約1メートルの小型高性能の自動航行式探査機ロボットを開発し、その成果を受けて広和株式会社が製品化に成功した。
 開発した探査機ロボットは、内蔵したコンピュータにより5〜6時間水中を自動的に探査する事ができる。使用深度は最大1千メートルである。従来のコントロール用ケーブル付きの無人探査機とは異なり、ケーブルの束縛がないため、自由に行動できることから、沿岸の海底探査、魚礁等人工構造物調査、大型船舶の船底調査、水力発電ダムや火力および原子力発電所取水口調査、遺失物や海底火山、危険物の探査等の従来困難だった海域での運用が可能となった。国内にはこれまで、この様な小型で取扱いが簡単な“高知能”を持った自律型無人探査機が無かったことから、様々な利用方法が期待される。

 なお、この研究開発における試作機を、来る9月29日(水)〜10月1日(金)より東京ビッグサイトで催される「2004産学官技術交流フェア」(URL http://nikkan.co.jp/eve/)にて展示する予定である。

背景
 海洋研究開発機構においては、その時代を先導する無人探査機の研究開発を行ってきた。しかし、その多くは、2,000mを越える大深度の研究調査に使用されることを目的とした性能となっており、浅海用に開発されたものは数少ない。   
 一方、水温や、溶存酸素、溶存二酸化炭素、プランクトンの量は、水面から深度500m以内で大きく変化することが知られており、地球温暖化、海洋物質循環、海洋環境モニタリング等の研究には、浅海域でのデータ計測が重要である。このため、浅海を広域に効率よくデータを計測できる小型でコントロールケーブル等による制約がない、または、制約が少なく、水平移動が自由にできる無人探査機の開発が求められていた。
 このため、当機構では、近年、一本の細い光ファイバーを用いたUROV (Untethered Remotely Operated Vehicle 例;「UROV7K」、「UROV2000」)方式の無人探査機や、無索のコンピュータで航行する自律型無人探査機(AUV; Autonomous Underwater Vehicle 例;「うらしま」)のように、水平方向に長距離移動できる方式の無人探査機の開発に力を入れてきており、この結果、これまで困難だった調査、研究に用いることが可能となってきている。今回、これらの技術開発の成果を利用し、科学技術的な目的以外の、魚介類養殖や、ダムの保守、港湾整備、海底ケーブル保守、船底調査、危険物処理等、水平方向に長距離移動する必要のある作業現場においても活用できる簡便な無人探査機を民間会社と共同して開発することに成功した。

成果
本共同研究において、開発した探査機ロボットは下記仕様のとおりである。

重量 80kg (空気中)
大きさ 1.4(L) x 0.7(W) x 0.4(H)m
潜航深度 1,000m
巡航速度 2ノット(最大3ノット)
潜航時間 5〜6時間(充電式リチウムイオン電池)
水平方向移動距離 10km
運行モード 自律航行/光ファイバー遠隔/無線遠隔
観測機器 TVカメラ、サイドスキャンソナー等

 本探査機ロボットは、長さ約1メートル、重さ約80キログラムで、大人2〜3人で取り扱う事が出来る。小型軽量であることから、専用の母船を必要とせず、モーターボート程度の大きさの船舶で取り扱う事ができる。船上のコントローラもトランクケースひとつに収まる大きさとなっている。
 また、当機構の自律無人探査機「うらしま」などで蓄積した技術を用い、内蔵したコンピュータにより5〜6時間水中を自動的に探査する事ができる(自律航行モード)。さらに、機構が開発した光ケーブルによる遠隔制御技術を用い、テレビカメラで撮影した水中映像を船上で観測する事が出来る(光ファイバー遠隔モード)。これは数千メートルの光ファイバーを小型の本体に収納できるように、新型の光ファイバー収納・巻だし装置を開発した。その他、オプションで、無索遠隔制御も可能になる。無索遠隔制御における自律航行モードでは、従来のコントロール用ケーブル付きの無人探査機とは異なり、自由に行動できることから、沿岸の海底探査や、魚礁等人工構造物調査、大型船舶の船底調査、水力発電ダムや原子力発電所取水口調査、遺失物や危険物の遠方からの調査等が可能となり、また、新しい産業創出の芽となることも期待される。

(参考)
写真1:開発した探査機ロボットの外観
写真2:プールで試験中の探査機ロボット


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海洋工学センター
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