平成16年11月17日
海洋研究開発機構

「地球シミュレータ」を用いて地磁気ダイナモの高速シミュレーションに成功
- 「2004年ゴードン・ベル賞」を受賞 -


1.概要
 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長:加藤康宏)地球シミュレータセンター(センター長:佐藤哲也)、固体地球シミュレーション研究グループリーダーの陰山 聡らは、「地球シミュレータ」を用いて、地球磁場の起源を解明する地磁気ダイナモの高速シミュレーションに成功しました。この研究成果は、米国ペンシルバニア州ピッツバーグで11月6日〜12日に開催されたハイ・パフォーマンスコンピューティング(高性能計算技術)に関する国際会議(SC2004)において「2004年ゴードン・ベル賞(最高性能賞)」(資料1)を受賞しました(現地時間11月11日)。当機構の「地球シミュレータ」を用いた研究成果による同賞の受賞は、3年連続となります。  

2.受賞論文
A 15.2 Tflops Simulation of Geodynamo on the Earth Simulator
(地球シミュレータを用いた15.2テラフロップスの地磁気ダイナモシミュレーション)

3.受賞者
海洋研究開発機構地球シミュレータセンター
計算地球科学研究開発プログラム固体地球シミュレーション研究グループ:
  陰山 聡 グループリーダー、亀山 真典研究員、藤原 了研究員、
  吉田 晶樹研究員、兵藤 守研究員
同連結階層シミュレーション研究開発プログラムアルゴリズム研究グループ:
  津田 義典研究員

4.研究内容
 方位磁石(コンパス)が北を指す理由は、地球が自分自身で磁場を作り出しているからです。地磁気の重要な特徴は二つあり、一つは、その空間的な形状が、双極子型(資料2)と呼ばれる単純で美しい構造をもつことであり、もう一つは双極子磁場の極性、つまり地球の磁気的な南北の向きが安定ではなく、平均すると数十万年に一度、突然反転すること(地磁気の逆転)です。地磁気には未だ解明されていない謎が多く残っていますが、地磁気ダイナモと呼ばれる理論的枠組みで説明されることは間違いありません。
 地球内部には半径約3500kmの「コア」とよばれる領域があります。コアの構成物質は鉄で、その外側部分(外核)は高温のために溶けており、この液体鉄が大規模な対流運動を行っていると考えられています。その対流運動のエネルギーがダイナモ、つまり発電機のメカニズムによって磁場のエネルギーに変換され、地磁気が作られているとするのが地磁気ダイナモ理論です。この理論を実証するためには、外核と同じ球殻型の幾何学的配位のもとで磁気流体力学方程式(資料3)と呼ばれる基礎方程式を数値的に解く必要があります。本研究では、「陰陽(インヤン)格子」(資料4)と名付けた新しい格子系の上で、磁気流体力学方程式を高速かつ高効率で解く新たなシミュレーションコードを作成し、地球シミュレータの特性を生かすよう最適化しました。その結果開発されたシミュレーションコードによって、双極子磁場の生成やその逆転という地球磁場の特性を再現する地磁気ダイナモのシミュレーション計算を高速かつ高効率に実行できることが実証されました。

5.今後の展望
 バーチャルリアリティ技術など3次元的な可視化手法を駆使して、膨大なシミュレーションデータを詳細に解析すれば、地球の双極子磁場が逆転する物理メカニズムを明らかにすることができると期待されています。また、本研究を通じて独自に開発した新しい球面格子「インヤン格子」は、球体を扱う広い分野の計算機シミュレーションに応用できる可能性が高く、地球シミュレータセンターでは、既にマントル対流、大気・海洋結合シミュレーションなどに応用され、成果を挙げています。これまでの研究で、双極子磁場の生成とその逆転という地磁気の最も重要な特徴は少なくとも定性的には再現できましたが、モデルに組み込んだ粘性率などの物性値パラメータは実際の外核の値とは大きな開きがあるため、定量的な比較や再現にはまだ遠いと言えます。今後はこのギャップを埋めることが大きな課題となります。

別添 陰山グループリーダー受賞後の写真

問い合わせ先:
  独立行政法人海洋研究開発機構
   地球シミュレータセンター企画調整室 山田、柏野
          電話:045-778-5757
          FAX:045-778-5489
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   総務部 普及・広報課:高橋、五町
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          FAX:046-867-9055
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