平成17年4月18日
海洋研究開発機構
スマトラ島沖地震震源域近傍における緊急調査航海報告会
発表件名:「震源域近傍の深海底を調べて分かったこと」の事前報告について
 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)主催、平成17年4月21日(木)13:00〜銀座ガスホール(中央区銀座)にて開催する「スマトラ島沖地震震源域近傍における緊急調査航海報告会」において、地球内部変動研究センター 東 垣 プログラムディレクターが発表件名:「震源域近傍の深海底を調べて分かったこと」について報告いたします。
 つきましては、当日の報告に先立ち、現地調査データ解析結果により、世界で初めて解明した津波を引き起こした地殻構造のメカニズムを含む研究成果について、報告いたします。

【研究成果】
M9クラスの地震によって海底表層はどうなったか!
 シングルチャンネル地震波探査(注1)結果からは、本調査海域では3つのスラスト・リッジ(海嶺)(注2)がスマトラ島陸側からスンダ海溝側に存在していることが解明でき、そのうちの陸側のスラスト・リッジが今回一番激しく動いた可能性が高い。陸側のスラスト・リッジ海底直視探査の各映像を分析した結果、海底面が大きく壊れている状況(別紙1)が明らかとなり、これは、
・今回の地震で破壊された(時期の特定)
・この場所が特に強く揺れた(場所の特定)
・その大きさは重力加速度を超える強い揺れであった(強度の特定)
ことを示している。
 この結果から、このような強い揺れを起こす要因として、
・スラスト・リッジという地形効果
・その直下に潜伏したスラスト断層(注3)があって、これが動いた
以上が推測される。

なぜ大きな津波が生じたのか!
 今回の地震では、バンダアチェをはじめとするスマトラ北西部で大きな津波を観測した。一方、短期観測用海底地震計のデータ解析(別紙2)から、余震活動は、主にアチェ海盆の直下で起こっており、今回の地震で破壊された下限域を示唆してくれる。これによって、地震に伴う断層破壊面の実態が浮かび上がった。その特徴は、今回の津波と関連しており、以下の点について解明することができた。
調査地域を中心として、地震によって動いた断層が幅200km弱と大変大きなすべりが生じた。(破壊力が巨大であった。)
海底面に近い地殻の浅い部分にまで地震の破壊が伝播した。
(跳ね上がり部分を形成し、大規模な津波を形成する要因となった。)
 これらはいずれも大規模地震の発生メカニズムを詳細にとらえた世界で初めての成果である(別紙3)。

【今後の予定】
 長期観測用の海底地震計のデータや未解析の短期観測用地震計のデータ等を解析し、200km弱のすべりの範囲を特定するとともに、シミュレーションを行うことにより、詳細な発生メカニズムを把握する。これにより我が国においても発生が予想される東海、東南海地震等の大地震の発生予測に資する。

<< 用語解説 >>
(注1) シングルチャンネル地震波探査:
海底下の地殻内構造を音波の反射により計測する方法。今回の調査で海洋調査船「なつしま」に搭載された。

(注2) スラスト・リッジ(海嶺):
断層の上盤と下盤がずれた場合、上盤の下に下盤が潜り込み、上盤または、上盤の上部が盛り上がることにより生じた海嶺。スラスト・リッジでは断層のずれが最も強く伝わる不安定な地形のため崩壊が起こりやすい。

(注3) スラスト断層:
海溝型巨大地震に伴って海底に形成される逆断層。上盤の先端部(リッジ)が鋭角であることが特徴。逆断層の形成により注2のようなリッジが形成されることがある。


問い合わせ先
海洋研究開発機構
地球内部変動研究センタープログラムディレクター 東 垣
 TEL046-867-9310
総務部普及・広報課長 高橋 賢一
 TEL046-867-9066 FAX046-867-9055
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