平成17年5月19日
海洋研究開発機構
西部熱帯太平洋域における降水システムの解明のための、
陸・空同時集中観測(PALAU 2005)の実施について

概要
  独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)地球環境観測研究センターと国立大学法人名古屋大学(総長 平野眞一)地球水循環研究センターは、西部熱帯太平洋域における大気海洋相互作用と降水システムの解明のため、今月24日から7月12日の50日間、パラオ共和国において航空機、2台の気象レーダー及びその他の地上気象観測装置を同時に使用した大規模な集中観測を行います。

背景
  西部熱帯太平洋からインド洋にかけての海域は、「海大陸」と呼ばれるほど数多くの島と、世界で最も高い海面水温の海が混在しています。ここで発生する降水雲は大気大循環の原動力となるため、地球全体の気候に影響します。海大陸周辺域で、降水雲やそれを取り巻く大気・海洋の状態を陸上や航空機などから多元的に観測し、降水現象のメカニズムとその役割を明らかにすることにより、気候変動や水循環のメカニズムの理解がすすむと同時に、数値シミュレーションでの降水雲の再現性を高め、予報・予測能力の向上をもたらすことが期待されます。
 今回観測をおこなうパラオ周辺域は、エルニーニョの引き金とされる強い西風の発生がみられるなど、地球規模の気候変動メカニズムを理解するために重要な場所となっています。パラオ域では、6月頃に東風が西風へと変わり雨季(モンスーン)が始まります。特に、例年5月中旬頃に沖縄付近に見られた梅雨前線が6月中旬には日本列島に北上して梅雨となるのに対応し、亜熱帯高気圧をはさんだパラオ域でも雲対流活動が活発になるため(図1)、この時期に集中観測を設定しました。

実施内容
  西部熱帯太平洋域の暖水塊に位置するパラオ共和国において、この地域での積乱雲活動が地球規模の大気循環に及ぼす影響の解明を目指し、5月24日から7月12日の間、ドップラーレーダー(図2)、ラジオゾンデなどを用いた集中観測を各種地上気象観測装置による連続観測と組み合わせて実施します。また、6月11日から17日の間は航空機(図3)を用いて雲周辺の温度や湿度の変化を詳しく調べるための航空機観測を実施します。(図4)


1.観測期間
 平成17年5月24日から7月12日(レーダー観測期間)
 平成17年6月11日から6月17日(航空機観測期間)

2.観測調査地域
 パラオ共和国周辺域(西部熱帯太平洋域)

3.観測内容
 ドップラーレーダー観測、ラジオゾンデ観測、地上気象観測、
 航空機観測

4.海洋研究開発機構から参加する研究グループ
 地球環境観測研究センター 
  海大陸観測研究計画    熱帯海洋大気対流活動グループ
  水循環観測研究プログラム 雲・降水過程グループ


期待される成果
1. 熱帯海洋上で発生する積乱雲群周辺の詳細な観測データから、降水システムの発達メカニズムを解明する。
2. 高分解能数値気象モデルの初期値・境界値として使用することが可能な、高精度の3次元観測データセットを作成する。
3. 西部熱帯太平洋域でのモンスーン変動やエルニーニョ現象と対流活動の関係を明らかにするための基礎的データを得る。

 

以上

問い合わせ先
  独立行政法人海洋研究開発機構
   地球環境観測研究センター
   海大陸観測研究計画 サブリーダー 城岡 竜一
     Tel :046-867-9821 Fax:046-867-9255
     URL:http://www.jamstec.go.jp/iorgc/jp/list/p5c.html
   総務部普及・広報課 課長 高橋 賢一
     Tel :046-867-9066 Fax:046-867-9055
     URL:http://www.jamstec.go.jp/