平成18年6月15日
独立行政法人海洋研究開発機構

LED光源を用いた深海照明システムを世界で初めて運用
〜釧路・十勝沖「海底地震総合観測システム」における深海画像の長期的な連続収録が可能に〜

概要:
   海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)が運用している海底ケーブルを利用した釧路・十勝沖「海底地震総合観測システム」(平成11年7月設置、別紙1参照)において、平成18年6月5日、無人探査機「ハイパー・ドルフィン」の海底作業により、水深2540mの先端観測装置に、発光ダイオード(LED)光源を用いた照明システムを接続し、深海底のリアルタイム画像の収録を再開しました。従来の海底観測ステーションにおける画像取得システムでは長期間の運用ができませんでしたが、LEDを光源とした照明システムにより、深海での長期的な運用が可能になります。LEDを光源とした照明システムの深海での運用は世界でも初めての試みです。これにより運用時間を考慮することなく長期的に連続画像を取得することが可能となり、今後、海底の詳細な環境変動が記録されることが期待されます。

実施作業の内容:
   深海底における画像の取得に不可欠な照明システムは寿命が短く(ハロゲン水中ライトの寿命は約1500〜2000時間程度といわれている)、常時観測や長期にわたる観測を実現するためには高頻度の交換作業が必要で、これが継続的な観測を進めるにあたり大きな制限となっていました。
   海洋研究開発機構では、この問題を克服するために、長寿命で高出力のLEDを集積化し油浸耐圧構造とすることで、水深4000m程度の水圧でも使用可能な長寿命照明システム(別紙2)を海底長期観測用の照明として製作いたしました。
   その後、無人探査機「ハイパー・ドルフィン」による「海底地震総合観測システム」先端観測装置への接続を実施し、平成18年6月5日より、世界で初めて深海でのLEDライトの実運用を開始し、深海の画像の取得に成功しました(別紙3)。「海底地震総合観測システム」は水温、流速、圧力などの海底の環境に関する観測も行っており、このような物理観測データ等と取得した画像とを合わせることで、海底における環境の日変化や年変化に伴い、具体的にどのような現象が海底で発生しているかを視覚的に理解することに役立ちます。また、地震等によって誘発される、乱泥流の発生機構の解明やその規模の把握等にも期待がもたれています。

今後の予定:
   海底の設置型観測システムに限らず、有人潜水船や無人探査機、海中ロボットなど多くの機器が水中照明システムを使用しており、同じように装置の寿命について問題を抱えています。海洋研究開発機構では、今後「海底地震総合観測システム」を用いて、LED水中ライトの長期的な信頼性の検証を行います。将来的には、LEDを用いた照明システムを使用することで、海中での長期間安定した観測や作業が行われるようになることが期待されます。

お問い合わせ先:
海洋研究開発機構
海洋工学センター グループリーダー      浅川賢一      046-867-9311
研究員      川口勝義      046-867-9342
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