2007年08月23日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長:加藤康宏)所属の地球深部探査船「ちきゅう」は、平成19年9月から統合国際深海掘削計画(IODP)*1による最初の研究航海となる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を紀伊半島沖熊野灘(図1)において開始します。本年度の実施計画が決まりましたのでご報告します。
南海トラフは、日本列島の東海沖から四国沖にかけて位置するプレート沈込み帯で、地球上で最も活発な巨大地震発生帯の一つです。南海トラフの一部にあたる紀伊半島沖熊野灘は、東南海地震等の巨大地震震源と想定される領域(プレート境界断層が地震性すべり面の性質を持つ領域)の深さが世界のプレート境界のなかでも非常に浅く、「ちきゅう」による掘削が可能な海底下6,000m程度であるという特徴を有しています(図2)。
「南海トラフ地震発生帯掘削計画」では、プレート境界断層および津波発生要因と考えられている巨大分岐断層を掘削し、地質試料(コア・サンプル)の採取や掘削孔内計測を実施することにより、プレート境界断層内における非地震性すべり面から地震性すべり面への推移及び南海トラフにおける地震・津波発生過程を明らかにすることを目的としています。
本計画は、全体として以下の4段階(ステージ)に分けて掘削する計画で、紀伊半島沖熊野灘において南海トラフに直交する6地点(その他に予備地点を設定)を掘削する予定です(図3)。
ステージ1では、掘削孔内における各種物理データの取得、海底下最大1,000m程度までの試料採取等を実施します。その後、ステージ2(巨大分岐活断層へのライザー掘削:海底下約3,500m)、ステージ3(プレート境界断層へのライザー掘削:海底下約6,000m)、ステージ4(長期孔内計測装置の設置)の実施を予定しています。
本年度は、以下の3つの研究航海を実施します。
各研究航海には、IODP参加国から各研究航海に約25名の研究者が乗船参加する予定です。本年度の各掘削地点と掘削目標深度を表1に示します。
「ちきゅう」は8月末に横浜港に入港し、各種改修工事、年次検査、資機材積込み等を行った後、9月10日に横浜港を出港する予定です。それ以後の予定は以下の通りです。
9月10日 | 横浜港出港 |
9月14日 | 新宮港入港 資機材積込み等 |
9月21日 | 新宮港出港 |
9月21日〜11月16日 | 第1次研究航海(IODP Expedition 314) |
11月17日〜12月19日 | 第2次研究航海(IODP Expedition 315) |
12月20日〜平成20年2月5日 | 第3次研究航海(IODP Expedition 316) |
2月5日 | 新宮港入港 |
※上記の予定は海気象等の状況によって変更することもあります。
なお、本計画では、和歌山県新宮市の新宮港を補給船(サプライボート)による資機材輸送等の支援基地とし、三重県度会郡南伊勢町の宿田曽漁港に整備した南伊勢町ヘリポートをヘリコプターによる人員輸送の支援基地として、実施していきます。
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧、中、韓の21ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
ドリルパイプの先端近くに各種の物理計測センサーを搭載し、掘削作業と同時に現場での地層物性の計測を行う技術。地質試料の採取はできないが、掘削箇所の地層状況を“現場”で連続測定することにより、比較的短期間に地質情報を得ることができる。これらにより、科学情報と共にその後の試料採取掘削等に有用な掘削孔の安全監視及びリスク回避等の情報が得られるため、南海トラフのような複雑な地質構造での掘削には非常に有効である。今回、取得予定のデータは、地層密度、空隙率、音波速度、自然ガンマ線、比抵抗、流体圧等。