プレスリリース


プレスリリース

2007年10月29日
独立行政法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画(速報)
〜ドリルパイプ下部の回収の断念について〜

海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)の地球深部探査船「ちきゅう」は、統合国際深海掘削計画(IODP)※1による最初の研究航海となる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を実施しております。紀伊半島沖(新宮市南東沖約80km)の熊野灘の掘削海域で10月21日(日)の掘削作業中にドリルパイプ下部が脱落し(平成19年10月22日既報)、脱落部分の回収作業を行ってきましたが、脱落した地点の地質及びパイプの状況から回収は不可能と判断し、10月29日(月)に回収作業を中止することと致しました。

1.トラブル発生日時: 平成19年10月21日(日)14時15分頃
2.場 所: 紀伊半島沖熊野灘掘削サイトNT2-01(図-1
 (北緯33度13.4分、136度42.1分、水深2,453m)
掘削深度:海底下約530m
3.状況: 孔内の地質が不安定で崩れやすく、脱落したパイプがすぐに埋設されてしまう状況で、これまで8日間にわたり(内、1日は台風20号による避航を含む)、ドリルパイプとの接続を試みましたが、完全な接続をすることができず、回収は不可能と判断し、掘削孔をコンクリートで塞ぐこととしました。掘削同時検層(LWD)※2装置には放射性同位元素が組み込まれておりますが、耐圧容器に二重に密封されており、またコンクリートで封じ込めるので、環境への影響はありません。
4.原 因: パイプの先端部が強い封圧を持った断層帯に到達した際に、掘削孔壁が崩れ、ドリルパイプの先端部が土砂により締め付けられたことによる回転トルクの上昇が発生。それによって逆回転トルクが脱落部のパイプ接続地点で発生し、ねじれ戻しが起こったためと推定されます。
5.今後の対応: 今後は、今回のドリルパイプ脱落の原因、及び再発防止策について検討し必要な措置を講じた上で研究掘削を再開することとします。なお、放射性同位元素による測定につきましては、予備機器の準備ができないため、本研究航海では実施しないこととします。

<参考:これまでの掘削状況>
平成19年9月21日に新宮港を出港しました。これまで、9月28日NT2-03パイロット孔(掘削深度1,000m)、10月7日NT2-03LWD孔(掘削深度:976m)、10月18日NT3-01LWD孔(掘削深度:1,401.5m)を終了し、10月20日、本サイトの掘削を開始しました。


※1:統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米を主導国とし、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧、中、韓の21ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行います。

※2 掘削同時検層(LWD: Logging While Drilling)
ドリルパイプの先端近くに各種の物理計測センサーを搭載し、掘削作業と同時に現場での地層物性の計測を行う技術です。地質試料の採取はできませんが、掘削箇所の地層状況を“現場”で連続測定することにより、比較的短期間に地質情報を得ることができます。これらにより、科学情報と共にその後の試料採取掘削等に有用な掘削孔の安全監視及びリスク回避等の情報が得られるため、南海トラフのような複雑な地質構造での掘削には非常に有効です。今回、取得予定のデータは、地層密度、空隙率、音波速度、自然ガンマ線、比抵抗、流体圧等です。 なお本LWD装置の一部に密封線源としてアメリシウム241-ベリリウム(中性子発生)及びセシウム137(ガンマ線発生)を用いていますが、耐圧容器内に密封されており、環境への影響はありません。

お問い合わせ先

(「ちきゅう」及び掘削計画について)
地球深部探査センター
企画調整室長  田中 武男  TEL:045-778-5640
(報道について)
経営企画室 報道室長  大嶋 真司  TEL:046-867-9193