2008年04月22日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)の運用する地球深部探査船「ちきゅう」について、平成20年2月23日から佐世保重工業株式会社佐世保造船所において実施していた中間検査工事および保守・点検・整備・改良工事が、本日終了しました。
この間、アジマススラスター(船位保持のための360度回転可能なプロペラ)の開放点検工程で、推力を伝導するギアの歯の一部にクラックおよび歯こぼれが発見されました(全6基のギアのうち3基)(参考)。うち1基のギアについては予備品と交換し、残り2基のギアについては応急処置を施しており、現在は出力制限をして運航可能な状態ですが、強潮流海域での長期間の定点保持に影響を与える可能性があることから、現在、機構内に対策チームを設置し、早急な改善を目指し、原因究明と対策の検討を進めています。
「ちきゅう」の今後の運航については、当面、佐世保沖にて諸調整を行い、上記の原因究明と対策の検討を踏まえ、本年度後半に予定している紀伊半島沖熊野灘での統合国際深海掘削計画(IODP)の科学掘削の実施に向けて準備を行う予定です。
「ちきゅう」は、大水深海域の掘削をするために必要となる洋上の定点保持機能として、コンピューターによりスラスター推力の大きさと方向を制御する自動位置保持システム(DPS)を採用しています。これに用いるスラスターとしては、世界的に多くの実績にあるアジマススラスター(プロペラの直径3.8m)を採用し、船底の船首側に3基、船尾側に3基の計6基を配置しています。
図-1 アジマススラスター
図-1の赤枠の部分が、今回、損傷が発見されたベベルギア(回転方向を直角に曲げるときに使うギア)です。垂直シャフトの回転を、プロペラと連結する水平シャフトに伝えるためのもので、垂直シャフト側(ピ二オン)と水平シャフト側(ホイール)のギアで構成されています。
写真-1 ホイールギア
全6台のホイールギア(写真-1)のうち、3台のホイールギアの一部に異常が認められ、そのうち、1セットのべベルギアは予備品と交換しました。(写真-2)
なお、今回のアジマススラスターの開放点検は、完成引 き渡し後(平成17年7月)、初めての検査でした。
「ちきゅう」のギアの材質は、ニッケルクロムモリブデン鋼鍛鋼材を、ギア表面の硬度を高めるために浸炭焼入れをしています。
写真-2 ホイールギアの歯こぼれ部拡大図