2012年 10月 19日
独立行政法人海洋研究開発機構
この度、統合国際深海掘削計画(※IODP: Integrated Ocean Drilling Program)の一環として、「コスタリカ沖浸食型沈み込み帯における地震発生過程の解明2」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号の研究航海が10月23日から開始されます。
本研究航海では、中米コスタリカ沖東太平洋において、東日本大震災を引き起こした日本海溝と同タイプの浸食型沈み込み帯における地震発生過程を解明するため、日本から共同首席研究者を含む7名が乗船するほか、米国、欧州、韓国、中国、オーストラリア、ブラジルからも含め、計32名が乗船研究者として参加する予定です。
※統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州(18カ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
別紙
コスタリカ沖浸食型沈み込み帯における地震発生過程の解明2
1.日程(現地時間)
なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。
2.日本から参加する研究者
氏名 | 所属/役職 | 乗船中の研究担当 |
---|---|---|
坂口有人 | 海洋研究開発機構/技術研究主任 | 共同首席研究者 |
内村仁美 | 熊本大学/大学院生(修士課程) | 微古生物学(有孔虫化石) |
斎藤実篤 | 海洋研究開発機構/技術研究主幹 | コア・検層・地震波探査データ統合 |
谷川 亘 | 海洋研究開発機構/研究員 | 物理特性計測 |
橋本善孝 | 高知大学/准教授 | 物理特性計測 |
浜橋真理 | 東京大学/大学院生(修士課程) | 物理特性計測 |
山本由弦 | 海洋研究開発機構/研究員 | 構造地質学 |
3.研究の概要
海洋プレートの沈み込み帯で発生する地震やそれによって引き起こされる津波は、人類社会に甚大な被害をもたらしますが、その発生過程については未解明の部分が多くあります。沈み込み帯は、沈み込む海洋プレートから陸側プレートに堆積物や海洋地殻の一部が付け加わる「付加型」(例えば南海トラフ)と、陸側プレートの底面が削り取られる「浸食型」(今回の掘削の対象)の2種類に大別することができます。
平成23年3月の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の現場となった日本海溝もこの浸食型の沈み込み帯であり、平成24年4月〜7月にかけて「ちきゅう」によって海底下約850mのプレート境界断層の地質試料採取と観測機器設置が実施されました。しかし、日本海溝は水深が約7,000mと大変深いため、現状ではこれ以上の海底下深部の調査は容易ではありません。それに対して、コスタリカ沖は水深が約2,000mとはるかに浅いため、将来的な大深度掘削が可能な海域です。双方の研究が進むことにより、浸食型沈み込み帯における地震発生過程の総合的な理解が深まるものと期待されます。
本研究航海は、平成23年3月〜4月にかけて実施されたIODP第334次研究航海において得られた上盤プレート及び海洋プレートの知見に基づき、次の4地点に絞り込んで実施されます。具体的には、沈み込む前の海洋プレートの1地点(U1381)、浅部のプレート境界断層の1地点(CRIS-9A)、陸側と海側のプレートが強く固着している深部のプレート境界断層の上盤の2地点(U1380、CRIS-13B:後者は将来的な大深度掘削のパイロットホール)の4地点です(図1)。これらの掘削地点では、水深約500m〜2,000mにおいて海底下約350m〜1,430mの掘削を行い、地質試料の採取と物理検層を行います。これにより、浸食型沈み込み帯に沈み込む前の海洋プレート及びプレート境界部、並びにプレート境界断層の上盤を構成する地質体の特徴を調べ、地質体内の流体移動の特徴や岩石と流体の相互作用及び化学組成等を明らかにします。
図1 本航海の掘削予定地点(星印)。ココスプレートはコスタリカの下に沈み込んでおり、マグニチュード6〜7の地震を繰り返し発生させている。