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プレスリリース

2014年 3月 24日
独立行政法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第350, 351, 352次研究航海の開始について
~島弧進化の総合的理解と大陸地殻成因の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「島弧進化の総合的理解と大陸地殻成因の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が3月30日から9月29日にかけて実施されます。

本研究航海は、約2ヶ月間の航海を3回実施し、伊豆・小笠原諸島沖及び奄美群島沖を掘削して、コア試料の回収・分析及び掘削孔の物理検層(計測装置により孔内の状況を調べること)を行います。これにより、太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜る沈み込み帯である伊豆小笠原マリアナ弧の東西方向のマグマ活動の時系列変化、沈み込みが始まる以前の地殻及び沈み込みの始まりとその変遷を明らかにすることを目指します。日本から計15名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、ブラジル、メキシコからも含め、計88名の研究者が参加する予定です。これらの掘削により、プレートの沈み込み帯のマグマと地殻が、5千万年の間にどのように変化してきたかを明らかにします。また、将来的には地球深部探査船「ちきゅう」を用いて、生まれたばかりの大陸地殻への大深度掘削を目指しています。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州(19カ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの27カ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

1.日程(現地時間)

第350次研究航海

平成26年3月30日
キールン(台湾)にて乗船(準備ができ次第出港)
伊豆諸島沖にて掘削
平成26年5月30日
横浜に入港

第351次研究航海

平成26年5月30日
横浜にて乗船(準備ができ次第出港)
奄美三角海盆にて掘削
平成26年7月30日
横浜に入港

第352次研究航海

平成26年7月30日
横浜にて乗船(準備ができ次第出港)
小笠原海嶺にて掘削
平成26年9月29日
キールン(台湾)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

第350次研究航海

氏名 所属/役職 乗船中の研究担当
田村芳彦 海洋研究開発機構/チームリーダー 共同首席研究者
佐藤智紀 海洋研究開発機構/研究技術専任スタッフ 物理特性スペシャリスト
宮崎 隆 海洋研究開発機構/技術研究副主幹 無機地球化学者
Jihui Jia 京都大学/大学院生(博士課程) 物理特性スペシャリスト
Myriam Kars 高知大学/ポスドク研究員 古地磁気学者
Alexander Nichols 海洋研究開発機構/研究員 火成岩岩石学者

第351次研究航海

氏名 所属/役職 乗船中の研究担当
石塚 治 産業技術総合研究所/主任研究員 共同首席研究者
金山恭子 金沢大学/ポスドク研究員 堆積学者
草野有紀 金沢大学/ポスドク研究員 火成岩岩石学者
谷 健一郎 海洋研究開発機構/研究員 火成岩岩石学者
浜田盛久 海洋研究開発機構/研究員 物理特性スペシャリスト

第352次研究航海

氏名 所属/役職 乗船中の研究担当
柵山徹也 海洋研究開発機構/研究員 物理特性スペシャリスト
清水健二 海洋研究開発機構/研究員 岩石学者
道林克禎 静岡大学/教授 物理特性スペシャリスト
Marie Python 北海道大学/助教 岩石学者

3.研究の概要

地球は、太陽系で唯一海洋と大陸を持つ惑星ですが、この大陸をつくる「大陸地殻」と海底をつくる「海洋地殻」は、岩石の組成が異なっており、海洋地殻を構成する玄武岩が他の地球型惑星にも普遍的に存在するのに対し、大陸地殻を構成する安山岩は、地球以外ではほとんど存在しません。このため、「なぜ地球に大陸地殻があるのか、またそれはどのような過程で形成されたのか?」ということが地球惑星科学の大きな謎とされてきました。

しかし、最近の地下構造調査(エアガンを震源とする地震探査や自然地震観測)による研究によって、伊豆小笠原マリアナ弧の海底火山(玄武岩)の下に大陸地殻(安山岩)を特徴づける地殻構造が発達することが明らかになってきました。これまで、伊豆小笠原マリアナ弧のような海洋島弧では主に玄武岩マグマが噴出することから大陸とは無関係と考えられていましたが、伊豆小笠原マリアナ弧の海底下の状況を調査することが重要視されるようになったのです。

本プロジェクトでは、なぜ海底火山の直下に大陸地殻を特徴づける地殻構造が発達するのか、そして大陸地殻(安山岩)がどのように形成されるのかを明らかにするため、全体として4つの海域で掘削調査を行い、生まれたての大陸地殻を直接採取する計画です。

まずは下記(1)~(3)の3海域にて掘削を行い、掘削コアの分析・解析から、伊豆小笠原マリアナ弧東西方向のマグマ活動の時系列変化、沈み込みが始まる以前の地殻がどんなものだったのか、さらに沈み込みの始まりの時にだけ噴出する特殊なマグマ(ボニナイトと呼ばれる安山岩マグマ)の特徴と、現在の大陸地殻形成に至る過程を明らかにすることが目的です。

(1)
第350次研究航海(IBM-3):伊豆背弧の掘削 水深2,114mの掘削点を海底下2,100mまで掘削し、現在の地層から、漸新世(約3400~2300万年前)~始新世(約5300~3400万年前)の地層までを採取して、伊豆小笠原マリアナ弧全体の発達を総合的に理解する。
(2)
第351次研究航海(IBM-1):奄美三角海盆の掘削 水深4,720mのこの地点には1,300mの堆積物の下に、沈み込みの始まる前の海洋地殻が存在する。その海洋地殻と直上の堆積物を採取し、島弧の基盤(海洋底)を明らかにする。
(3)
第352次研究航海(IBM-2):小笠原海嶺の掘削 水深4,780mと3,100mの2地点をそれぞれ海底下1,000mまで掘削することにより、沈み込みの最初期の火山活動でできた火山岩と深成岩の地殻を採取する。

また、今回の3航海の研究成果を踏まえ、最終的には地球深部探査船「ちきゅう」を用いた大深度掘削(IBM-4)により、大陸地殻の採取を行い大陸地殻の成因の解明を目指します。

図1

図1 今回の航海の掘削予定地点

図2

図2 掘削予定点及び沈み込み帯における地球内部のダイナミクス(挙動)についての概念図

まず、沈み込むプレートから水や堆積物(液体状態のメルト)が上位のマントルかんらん岩に放出される(深さ100㎞~200 km)。マントルかんらん岩の大部分は固体であるが、水やメルトによって融点が下がり、局所的な融解が起こり、初生マグマが生成する。融解し、初生マグマを含んだマントルかんらん岩は上昇し、深さ30~60㎞付近で初生マグマを分離する。初生マグマは、地殻内のマグマ溜まりにおいて分化し、溶岩や火山灰となって地表に噴出すること等により固結する(2013年11月7日プレスリリース既報)。

本プロジェクトは、この初生マグマ(玄武岩組成)がどのように分化して大陸地殻(安山岩組成)を形成するかを掘削調査によって明らかにし、大陸誕生のメカニズム解明に挑むものである。

独立行政法人海洋研究開発機構
(本プロジェクトについて)
地球内部ダイナミクス領域 地球内部物質循環研究プログラム
IBM掘削研究チーム チームリーダー 田村 芳彦
(IODPおよび本航海について)
地球深部探査センター企画調整室 次長 倉本 真一
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成
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広報部 報道課
press[at]jamstec.go.jp
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