2015年 9月 3日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
公益財団法人鉄道総合技術研究所
1.概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」)と公益財団法人鉄道総合技術研究所(理事長 熊谷 則道、以下「鉄道総研」)は、JAMSTECが管理・運用する「地震・津波観測監視システム(DONET)」(※1、以下「DONET」)により得られた観測データを、鉄道総研が開発した鉄道用早期地震警報システム(※2)で利活用するための共同研究契約を締結しました。
本共同研究は、JAMSTECが構築した海底ケーブルネットワーク型のリアルタイム観測システムであるDONETにより取得されたアーカイブデータを活用し、DONETの加速度計のノイズレベルや強震時の振る舞いなどあらゆる場面での挙動をJAMSTECと鉄道総研が共同で調査するものです。
2.期待される効果(地震の早期警報の可能性)
鉄道総研が開発し鉄道会社各社が運用する鉄道用早期地震警報システムは、陸域に設置された地震計で地震を検知後、即座に警報を発して運行中の列車を止める、若しくは減速させることで、被害を最小限に抑えることを目的とした地震防災システムです。
一方、DONETは海域に設置された地震計で日本列島沖の沈み込み帯で発生する巨大地震を早期に検知することができ、気象庁の「津波警報」や「緊急地震速報」において観測データが活用されています。
DONETのリアルタイムデータを鉄道用早期地震警報システムでも直接利活用できれば、今後、鉄道のより安全な運行に寄与することが期待されます。
3.契約締結日
平成27年9月1日
4.今後の研究計画
本共同研究では、DONETのアーカイブデータを使って、DONETデータの品質と鉄道用早期地震警報システムとの整合性を確認し、実装に向けた事前解析を行います。
その後、DONETのリアルタイムデータを使った鉄道用早期地震警報システムへの適合性評価、さらに同システムへの実装試験・評価を計画しています。
※1 「地震・津波観測監視システム(DONET:ドゥーネット)」:
三重県尾鷲市古江町の陸上局から、紀伊半島の沖合約125km先まで、総延長約250kmに渡る基幹ケーブルをループ状に敷設し、途中5箇所の拡張用分岐装置に、それぞれ4つの観測点が接続された稠密な地震・津波観測システム(図1参照)。各観測点は、地震計や津波を検知する水圧計等で構成された観測装置ユニットで、水深約1,900mから4,300mの深海底に設置されている(現在、四国沖に同様のシステム「DONET2」を構築中)。観測装置には海底ケーブルを介して陸上から電力が供給され、観測装置からは海底の地震動、水圧変動等のデータがケーブル内の光ファイバーを通じてリアルタイムで陸上局へ送られており、従来の観測システムではなし得なかった深海底における多点同時かつリアルタイムの観測を行っている。
観測装置からのリアルタイムデータは、陸上局から専用回線を通じて海洋研究開発機構横浜研究所や防災科学技術研究所、気象庁に配信されている。
なお、平成24年3月9日から気象庁の「津波警報」への活用開始に続き、平成27年3月31日より、「緊急地震速報」にも本システムの観測データの一部が活用されることとなった。これにより南海トラフ沿いの巨大地震について、海底に設置されている地震計で地震波をより早く検知することにより、最大数秒早く発表することが期待できる。
※2 鉄道用早期地震警報システム
地震による鉄道被害の低減を目的として2004年に鉄道総研が開発し、現在新幹線等に導入されているシステム。鉄道沿線や沿線から離れた陸域に設置された早期警報用地震計が観測データを即時的に処理し、列車制御を行うための警報を自動的に出力するものである(図2参照)。各地震計は以下の警報機能を持つ。
今後、海底地震計のリアルタイムデータを活用することにより、③の機能強化が期待される。