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プレスリリース

2016年 10月 3日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第363次研究航海の開始について
~熱帯太平洋およびインド洋の大気海洋循環の役割の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「熱帯太平洋およびインド洋の大気海洋循環の役割の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が10月7日から開始されます。

本研究航海では、オーストラリア北西沖インド洋からニューギニア沖北太平洋における6地点(図1)を掘削し、西太平洋暖水塊の古環境変化を復元することで、気候変動における熱帯太平洋およびインド洋の大気海洋循環の役割を解明することを目的としています。この研究航海には日本から3名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、豪州、ブラジル,フィリピンから計29名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(17ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ、ブラジルの25ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

熱帯太平洋およびインド洋の大気海洋循環の役割の解明

1.日程(現地時間)

平成28年10月7日
シンガポールにて乗船(数日の準備の後出港)
オーストラリア北西沖インド洋からニューギニア沖太平洋において掘削
平成28年12月8日
グアムに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
熊谷 祐穂 東北大学/大学院生(博士課程) 古地磁気学
佐川 拓也 金沢大学/助教 堆積学
山本 正伸 北海道大学/准教授 有機地球化学

3.研究の背景・目的

掘削予定海域は世界で最も水温が高い水塊である西太平洋暖水塊が存在しており、地球全体の大気を加熱する最大の熱の放出源となっています。この水塊における小さな水温変化は熱帯域の大気循環を変化させ、モンスーンの季節性、熱帯収束帯の位置、エルニーニョ・南方振動の挙動の変化を介して地球全体の気候に影響を及ぼす可能性があります。とくに我が国を含む中低緯度地域の降水量に影響を及ぼし、西太平洋暖水塊の気候変化における役割を解明することは環境の将来予測において重要な課題とされています。

本研究航海では、過去1500万年間の西太平洋暖水塊の環境変化をさまざまな時間スケールで復元し、気候と西太平洋暖水塊の相互作用を明らかにするため、西部赤道太平洋から東部インド洋にかけて6つのサイトを掘削し、コア試料の採取を行います。本研究により、過去15万年間における千年規模の気候変動に対する西太平洋暖水塊の応答と役割、過去500万年間における万年規模のモンスーン変動と西太平洋暖水塊環境の関係とインドネシア通過流の変化、過去1500万年間における西太平洋暖水塊の海洋表層水および中層水の水温と化学組成の変化といった過去の気候変動を理解する上で重要かつ未解明な問題が明らかにされることが期待されます。

図1
図1 本研究航海の掘削サイトの位置
(なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削サイトを変更する場合があります。)

表1 本研究航海の掘削サイトの一覧(掘削順)

サイト名 水深 掘削深度 掘削作業予定日数
WP-12D 1,470m 490m 6.2
WP-11B 1,790m 350m 5.1
WP-71A 1,030m 225m 3.0
WP-05A 1,337m 200m 2.9
WP-03A 2,600m 300m 5.1
WP-02A 2,355m 250m 4.2
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究推進部 研究推進第1課 高橋 可江
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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