2018年 2月 8日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)の地球深部探査船「ちきゅう」は、国際深海科学掘削計画(※1、IODP)の一環として実施していたIODP第380次研究航海について、予定の作業を全て完了しましたのでお知らせします。
1.実施内容
本研究航海は本年1月12日に開始し(平成30年1月11日既報)、南海トラフのプレート境界断層前縁に位置するC0006地点(図1及び図2、水深3,871.5m)において、海底下495mまで掘削し、長期孔内観測システム(図3)を設置し、本研究航海の目的を達成しました。その後「ちきゅう」は、2月7日に静岡県清水港(興津埠頭)に入港し、本研究航海を完了いたしました。
2.結果概要及び今後の展望
本研究航海により、南海トラフにおいてC0002地点、C0010地点に続き3か所目となるC0006地点の長期孔内観測システムの設置に成功しました。長期孔内観測システムは、複数のセンサー((1)温度センサー(2) 歪(ひずみ)計(3)広帯域地震計(4)傾斜計(5)高感度地震計(6)強震計(7)圧力ポート)を掘削孔内に設置固定したものです。孔内の安定した地層内にセメントで固定しており、プレート境界断層やその周辺の地殻の微小な変動を長期にわたり高感度かつ高精度に観測・監視することができます。地殻内流体の圧力・温度変化や傾動を計測することによって、津波発生とも関連するプレート境界断層先端部(海溝付近)での地殻変動を詳細に捉えるとともに、歪みエネルギーの蓄積状態や地震活動の観測を行うことが可能となります。
なお、本年3月には、今回設置したC0006地点の長期孔内観測システムを、既に海底に敷設されている地震・津波観測監視システム「DONET」(※2)に接続し、他の長期孔内観測システムと同様にリアルタイムで孔内観測データを取得できるようになる見込みです。
※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program) 平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。
※2 地震・津波観測監視システム(DONET:Dence Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis) 海域で発生する地震・津波を常時観測監視するため、JAMSTECが開発し南海トラフ周辺の深海底に設置した地震・津波観測監視システムであり、DONET1及びDONET2からなる。紀伊半島沖熊野灘の水深1,900~4,400mの海底に設置した「DONET1」は、22の観測点からなり、平成23年に運用を開始した。また、紀伊水道から四国沖の水深1,100~3,600mの海底に設置した「DONET2」は、29の観測点から成り、平成28年3月末に整備を完了した。
DONETは、DONET2の完成をもって平成28年4月に国立研究開発法人防災科学技術研究所へ移管された。DONETで取得したデータは、気象庁等にリアルタイムで配信され、緊急地震速報や津波警報にも活用されている。
図1 DONET1及び長期孔内観測システムの位置
本航海で掘削作業及び長期孔内観測システムの設置を行ったC0006地点は、和歌山県新宮市から南東約100kmの海域(北緯33度2分 東経136度48分)
図2 南海トラフ地震発生帯掘削計画において掘削した地点(同一地点で複数の孔を掘削している場合もある)とLTBMS(長期孔内観測システム)設置地点