JAMSTEC|海洋研究開発機構|ジャムステック

トップページ > プレスリリース > 詳細

プレスリリース

2021年 12月 2日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第391次研究航海の開始について
~ウォルビス海嶺ホットスポット火成活動~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「ウォルビス海嶺ホットスポット火成活動」(別紙参照)についての調査を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)による研究航海が2021年12月6日から開始されます。

当該航海では、ウォルビス海嶺ホットスポットの形成メカニズムを探ることを目的として、南大西洋ウォルビス海嶺6地点において海底火山の掘削を行います。世界的にも珍しい帯状構造を持つホットスポットの形成要因、ホットスポットと大西洋中央海嶺やマイクロプレート間の相互作用が及ぼす火山への影響について理解が深まることが期待されます。

この研究航海には、陸上での試料分析等に参加する者も含め、イタリア、インド、英国、オーストリア、カナダ、韓国、スウェーデン、中国、ドイツ、日本、フランス、米国から計26名の研究者が参加し、うち日本からは1名が乗船参加予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。


JOIDES Resolution ©IODP

※2 ジョイデス・レゾリューション号

IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。

別紙

ウォルビス海嶺ホットスポット火成活動
Walvis Ridge Hotspots

1.日程(現地時間)

  第391次研究航海

2021年12月6日
研究航海開始(南アフリカのケープタウンから出港)
2022年 2月 5日
研究航海終了(南アフリカのケープタウンに入港)

※予定は、新型コロナウィルス感染症の状況等、航海準備状況、気象条件や調査の進捗
状況等によって変更となる場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当専門分野
久保田 勇祐 東京工業大学理学院/博士課程 火成岩地球化学

3.研究の背景

・ウォルビス海嶺の概要

ウォルビス海嶺は、ゴンドワナ大陸の分裂により南大西洋が誕生した、1億3200万年前に形成されて、現在に至るまで活動を続けているホットスポット列です。この海嶺は、活火山であるトリスタンダグーニャ島およびゴフ島から、ナミビア沖に至るまでの3300 kmにわたり、元々はリオグランデ海膨と対をなして存在していました。その火山活動期間と火山列の長さから、トリスタン−ゴフ・ホットスポットは、大西洋のホットスポットの中で最も顕著な海底地形を呈しています。

年代推移、化学的性質、洪水玄武岩との関連性から、このホットスポットを形成したプルームは下部マントル、特にアフリカ大陸下の地震波速度異常(LLSVPs)に由来するという仮説が提唱されています。

ゴンドワナ大陸の分裂当初に、ホットスポットが形成初期の大西洋中央海嶺と相互作用することによって、ウォルビス海嶺およびリオグランデ海膨が形成されました。バルディビア深海平原は、ウォルビス海嶺内に存在する海台で、リオグランデ海膨の主要部と対をなしています。このバルディビア深海平原は、形成時にホットスポットの活動が高まったことを示しており、リオグランデ海膨とともにマイクロプレート周辺にて形成され、ホットスポット列の年代進行が乱された可能性があります。

・ウォルビス海嶺の地球化学的特徴

約1億2000万年前から7000万年前までの間に、ウォルビス海嶺にて噴出した火山岩は、比較的均一な組成を保っていました。しかしその後大西洋の拡大が進行して、ウォルビス海嶺のプルームが大西洋海嶺から分離した時期に、ウォルビス海嶺はそれぞれ異なる同位体組成を持つ3つの海山列へと分裂しました。その後7000万年間という、他の地域では例を見ない長期間にわたり、3つの海山列が分裂したままで帯状構造の形成が継続しました。その結果、現在のウォルビス海嶺の活動的なホットスポットの幅は、他のホットスポットよりもはるかに広い約400 kmに達し、その両端には噴出年代の若い火山島が存在します。

このように、 (1)ホットスポット列の幅、(2)長期間にわたる地球化学的帯状構造、(3)3つの海山列への分裂、(4)マイクロプレートを含むプルーム-海嶺相互作用、という4つの点において、ウォルビス海嶺は世界的にも珍しく、このホットスポット列の形成における地球ダイナミクス的進化について疑問を投げかけています。そのため、ウォルビス海嶺は、プルームという現象そのものを理解する上で非常に重要です。

4.本航海の目的と実施内容

本航海では、マントルプルームの帯状構造、マイクロプレート周辺のプルーム活動、ホットスポットの移動に関する仮説を検証するために、本航海では年代の古い海嶺に沿った6地点で掘削を行い、約1億400万年前から5900万年前にかけて噴出した玄武岩質溶岩流のコア試料を採取し、以下の測定を実施します。

  • 地球化学測定
    採取試料の地球化学および同位体測定により、プルーム源の組成変化が解明され、ホットスポットの帯状構造の起源を理解する上で重要な手がかりが得られます。
  • 年代測定
    採取試料の年代測定により、個々の海底火山内および海嶺に沿った火山噴出年代の分布を明らかにします。これによって、ウォルビス海嶺が厳密に年代順に形成されたホットスポット列であるかを検証します。また、バルディビア深海平原の形成が、プルーム活動の急激な上昇、マイクロプレート周辺での火山活動、大陸の断片化のいずれに由来するものであるかを検証します。
  • 古地磁気測定
    古地磁気データにより、火山噴出時の古緯度が明らかになります。ホットスポット列に沿った古緯度の変化を追跡することで、ホットスポットの移動や地球の回転軸に対する真の極移動によって古緯度の変化が説明できるかどうかの検証を行います。

1Sager, W., Hoernle, K., and Petronotis, K., 2020. Expedition 391 Scientific Prospectus: Walvis Ridge Hotspot. International Ocean Discovery Program.
https://doi.org/10.14379/iodp.sp.391.2020

図1
図 本研究航海の掘削地点
赤色は掘削予定地点、黄色は代替掘削地点を示す。

表 本研究航海の掘削予定地点の一覧(作業予定日数は切り上げ)

掘削地点名 水深(m) 目標掘削深度 (m) 作業予定日数
(日)
CT-04A 4,436 650 13
FR-01B 3,259 521 11
GT-04A 2,370 652 6
TT-04A 3,465 550 6
VB-12A 3,667 650 7
VB-14A 3,046 650 6

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削地点を変更する場合があります。)

*図はIODPウェブサイトより引用したものを改変

IODP JRSO・Expeditions・Walvis Ridge Hotspot
http://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/walvis_ridge_hotspot.html
http://publications.iodp.org/scientific_prospectus/391/391SPADD/index.html
http://publications.iodp.org/scientific_prospectus/391/391SP.PDF
【参考】IODP Copyright Statement
http://iodp.tamu.edu/about/copyright.html
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用開発部門 運用部 次長  斎藤 実篤
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 報道室
お問い合わせフォーム