2007年10月22日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)の地球深部探査船「ちきゅう」は、統合国際深海掘削計画(IODP)※1による最初の研究航海となる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を実施しておりますが※2、紀伊半島沖(新宮市南東沖約80km)の熊野灘の掘削海域において掘削作業中にドリルパイプ下部が脱落するトラブルが発生しましたのでお知らせします。
記
1.日時: | 平成19年10月21日(日)14時15分頃 |
2.場所: | 紀伊半島沖熊野灘掘削サイトNT2-01(図1) (北緯33度13.4分、136度42.1分、水深2,453m) 掘削深度:海底下約530m ) |
3.状況: | 掘削同時検層(LWD)※3作業中、掘削孔壁の崩れによるドリルパイプの締め付けが原因と思われるドリルパイプの回転トルクの上昇が発生し、ドリルパイプ下部(先端から約221mの部分)が脱落しました。(図2)なお、LWD機器には密封線源が組み込まれていますが、耐圧容器に二重に密封されており、 環境への影響はありません。 |
4.今後の対応: | 現在、掘削孔内に残っているドリルパイプ下部(掘削同時検層(LWD)装置を含む)を回収するための作業を実施しています。本作業には本日から3〜4日間かかる予定です。回収後、掘削作業を再開し、第1次研究航海を予定通り11月16日まで継続し、以降も予定通り2月初旬まで本年度の計画を実施します。 |
※1:統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米を主導国とし、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧、中、韓の21ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行います。
※2:これまでの掘削状況
平成19年9月21日に新宮港を出港しました。これまで、9月28日NT2-03パイロット孔(掘削深度1,000m)、10月7日NT2-03LWD孔(掘削深度:976m)、10月18日NT3-01LWD孔(掘削深度:1,401.5m)を終了し、10月20日、本サイトの掘削を開始しました。
※3:掘削同時検層(LWD: Logging While Drilling)
ドリルパイプの先端近くに各種の物理計測センサーを搭載し、掘削作業と同時に現場での地層物性の計測を行う技術。地質試料の採取はできませんが、掘削箇所の地層状況を“現場”で連続測定することにより、比較的短期間に地質情報を得ることができます。これらにより、科学情報と共にその後の試料採取掘削等に有用な掘削孔の安全監視及びリスク回避等の情報が得られるため、南海トラフのような複雑な地質構造での掘削には非常に有効。今回、取得予定のデータは、地層密度、空隙率、音波速度、自然ガンマ線、比抵抗、流体圧等。
なお本LWD装置の一部に密封線源としてアメリシウム-ベリリウム(中性子発生)及びセシウム137(ガンマ線発生)を用いていますが、耐圧容器内に密封されており、環境への影響はありません。