【目次】
▶ 最初の生命は、従属栄養か独立栄養か?
▶ 始原的な微生物Thermosulfidibacter
▶ 全ゲノム解析から出てきた謎
▶ どのようにして炭素固定をしている?
▶ 混合栄養生命説
ThermosulfidibacterのTCA回路は、環境中から取り込みことの出来る有機物の有無や種類に応じて柔軟に向きが変わることが明らかになりました。
先ほどお話したように、最初の生命が従属栄養生物でも独立栄養生物のいずれであったとしてもTCA回路は必要だったと考えられますが、どちらの生命起源説にも弱点がありました。ですが、Thermosulfidibacterのように柔軟なTCA回路を持つ生命を起源とすれば、有機物の濃度に応じて生き方を変えることができるので、その弱点は克服できます。また、Thermosulfidibacterは混合栄養であっても独立栄養であっても、エネルギーは水素から獲得しますが、実はこの水素から獲得したエネルギーの供給が、TCA回路が柔軟に向きを変えるのに不可欠な条件であると考えています。ですので、初期生命は「混合栄養生命」として誕生したのではないかと考えました(図6)。
むずかしい質問ですね。そもそも常識とされているところと違う線から追及するのが、好きなので。面白いのをみつけた!という単純な気持ちです。誰も気付いていないことを少しずつ見つけ出し、教科書に書いてあることを変える仕事を続けたいですね。
研究者の会合で発表した時には、みなさんおもしろがっているようでした。従来の説の課題を克服するようなものですから、特に反発はありませんでした。
他の始原的な菌がどのようにTCA回路を使っているのか調べたいと考えています。TCA回路の回り方はほかにもあると考えられます。突き詰めていくことで、TCA回路が誕生したころどのような姿だったのか、その本質的な姿に近づけると考えています。
また、今回使った微量メタボローム解析は非常に高感度です。これを使って、今まで解析する術のなかった菌を分析して、新しい代謝経路を探索したいと考えています。