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話題の研究 謎解き解説

新手法で、掘削データを使って岩盤強度を簡単に早く測定

【目次】
様々な理解の一助になる岩盤強度
掘削パラメータから岩盤強度を計算
浅部まで硬くなっていた付加体
目指すは、充填剤

浅部まで硬くなっていた付加体

C0002 は、図7を見ると上に堆積物、その下に付加体を含む大陸プレートがあって、深部にプレート境界がありますね。新手法により何がわかったのでしょうか。

掘削パラメータが得られた海底下3,000mまでの岩盤強度、図7の黒線あたりまでが連続的に明らかになりました(図9)。海底下2,200~3,000mの岩盤強度が、その場の圧力から考えられる以上に大きいことが判明しました。海洋プレートの沈み込みでプレート境界断層上部の堆積物が圧縮され、硬くなっているのだと考えます。


図9 岩盤強度

これは予想外でした。海洋プレートの沈み込みで付加体の岩盤強度が大きくなるのは、もっと深部の“プレート境界近傍”か、逆に“付加体全体”か、のどちらかだと予想していたのです。ESTを見たとき、「中途半端なところまで、それも思ったより浅部まで硬くなっているな」と思いました。

浅部まで岩盤強度が大きいことは、何を意味するのでしょうか。

プレート境界断層上部の浅部まで歪エネルギーがためられることを意味します。巨大地震の際には、この浅部にたまる歪エネルギーがプレート境界断層の運動に大きな影響を与えていることを示唆します。

なぜ、浅部まで歪エネルギーがたまる状態になっているのでしょうか。

推測の範囲ですが、プレート境界断層も巨大分岐断層も完全にくっついてロックされているところに海洋プレートが沈み込んでくるために、浅部までぎゅうぎゅうにかためられるのかと思います。もしどちらかの断層が滑っていれば、こんなに浅部までは押されないでしょう。

新手法により、広い連続的な岩盤強度が明らかになりましたね。
新手法に対する周りの反応はいかがですか。

学会ではポジティブな反応があり、掘削関係の人からもとても良いと言われました。新手法は、掘削を無駄のない力で効率良く行う理論でも使えますし、硬いメタンハイドレートの分布を調べるパラメータにもなります。

岩盤強度を扱う研究すべてで、新手法は使いやすく有用だと自負しています。

濱田さんは、今後はどのような研究をする予定でしょうか。

今後予定している「南海トラフ地震発生帯掘削計画」における超深度掘削で、プレート境界断層近傍までの岩盤がどの程度の強度を持っているのか連続的に明らかにしたいと考えています。

過酷な環境である超深度掘削では、諸々のデータは簡単には得られないでしょう。しかしESTは、孔さえあけば計算できますので、船上でどんどん論文を書いていきます。