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話題の研究 謎解き解説

南海トラフ熊野灘の泥火山に微生物起源のメタンハイドレートを発見
~海底下深部の「水」の動きが地下微生物による天然ガス生産のカギ~

【目次】
海底泥火山の深部では、微生物は活動している?
第五泥火山を掘削
地球の活動が作り出す“メタン菌の巣”
メタン生成の場を突き止めたことが、今後に続く

メタン生成の場を突き止めたことが、今後に続く

この成果は、従来の考えを覆すものですね。

そうですね。この論文を雑誌に初めて投稿した時は、査読者からはコテンパンにやられました。「90%も微生物が作るなんてありえない」と。熱分解起源のメタンだけでもメタンハイドレートができる量はあったのですが、そこに微生物が活発に作ったメタンが追加されて高濃度になったことをわかってほしいと、実験データを追加しました。

そして査読者も納得させて論文掲載に至った。
第五泥火山のメタンは、資源として有望でしょうか。

メタンハイドレートとして存在しているメタンは資源としてはあまり重要とは言えません。日本の天然ガスの消費量は1年あたり約1千億m³です。第五泥火山にハイドレートとして存在しているメタンは32億m³ですので、約10日分しかありません。

メタンハイドレートそのものというよりも、メタン生成の場所を突き止めたこと、そこで生成されるメタンはもっと大量かもしれないですし、その生成は現在もなお続いているかもしれないことを見出したことが、重要だと思います。もしかしたらそのメタン菌の巣こそが資源として期待できるかもしれません。

そうなのですね。

この研究は、海洋プレート沈み込み帯における「水」の移動プロセスが海底下の微生物による天然ガス生産に深く関与していること、さらに海底下の微生物活動がこれまで認識されてきた以上に地球の炭素循環に大きく寄与している可能性を示しています。

泥火山におけるメタン生成の新たなモデルを提唱したことについて、どのようなお気持ちですか。

そんなに大それたものではありませんが…。今回は同位体地球化学・微生物学的手法による分析データと物理探査データを統合的にみることで、微生物の活動と地球の動きのつながりを見出しました。その点でとてもうれしいです。

最後に、どのようなスタンスで研究に取り組んでいるのか教えてください。

地球と生物に関わることなら何でもしたい、というのが基本です。泥火山は一見するとローカルな地質現象ですが、そこから地下の世界が見えてきたように、スケールの大きな話が言えるとおもしろいと思っています。

ありがとうございました。