知ろう!記者に発表した最新研究

2013年3月29日発表
世界初!深海用のpH-CO2ハイブリッドセンサの誕生たんじょう
深海探査の効率こうりつアップ!

未来にむけて大きな可能性かのうせいをひめる深海。地球温暖化ちきゅうおんだんかの一因とされる二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)をかためて海底下にうめれば温暖化対策おんだんかたいさくになるし、数百度の熱水がわき出す熱水噴出孔ねっすいふんしゅつこうからは鉱物資源こうぶつしげんが、海底下からは天然ガスを含むメタンハイドレートがとれるかもしれません。でも、CO2をうめるなら海底下からCO2れ広がらないか監視かんしする必要があるし、資源を利用するにはまず発見しなければなりません。

このたび、それを効率良く実現じつげんするためのセンサが誕生しました。中野 善之なかのよしゆき博士が開発した「pH-CO2ハイブリッドセンサ」です! いったいどんなもの? その正体にせまります!


CO2漏れや資源があるところなんて、どうやって見つけるの? 海水のCO<sub>2</sub>濃度やpHの変化を手がかりにします!

海水は、その場所により性質せいしつ が少しずつ変わります。たとえば海底下からCO2が漏れると海水のCO2 濃度のうどは上がりpHは下がります。また、CO2を多くふくみpHが低い熱水が噴出すると海水のCO2濃度は上がりpHは下がり、メタンハイドレートがあればメタンのあわがふきだし(メタンプルーム)海水のCO2濃度は下がります。

ならば、pHやCO2濃度の異変いへんを探せば、CO2漏れや資源を発見できるはず。そこでジャムステックでは、pH センサやCO2センサを水中探査機にのせて調査をするための技術開発ぎじゅつかいはつに取り組んでいます(図1)。

pHやCO2濃度の異変を探せ!

図1:pHやCO2濃度の異変を探せ!

ところがこれまでは、pHセンサは水深1,000mより深い海の水圧すいあつにたえられるものが無かったし、CO2センサは深海用だと誤差ごさが大きく探査機にのせるにはサイズもかさばりました。また、pHは数秒で計測できるけどCO2濃度は数分かかるので、たとえばpHセンサが異変をとらえた時には水中探査機はすでにそこを通りすぎていて、CO2濃度の測定が間に合いませんでした。

そこで中野博士が、新しいセンサを開発したのです。

どんな新センサを開発したの? 「pH-CO<sub>2</sub>ハイブリッドセンサ」です

2年かけて開発したpH-CO2ハイブリッドセンサは、世界初の、深海でpHとCO2濃度を同時に精密せいみつ測定そくていするすぐれもの(図2)!!!

本体は2つにわかれ、ポンプユニットには、測定に必要な試薬しやく(pH指示薬溶液しじやくようえき)やそれを流すためのポンプ、メインユニットには実際じっさいに測定するセンサが組みこまれています。

pH-CO2ハイブリッドセンサ

図2:pH-CO2ハイブリッドセンサ

pHは、ガラス電極と比較電極を使い、それらの間に生じた電力の差から求めます(図3)。

pHの測定原理

図3:pHの測定原理

今回は、pHセンサ(図4)の電極の内側の空間を液で満たし膜を使って電極の内側と外側の圧力が同じになる構造こうぞうにして、深海の水圧の影響えいきょうを受けないようにしました。水深3,000mまではもぐっても大丈夫! 測定は、pH7〜8の範囲はんいを特に精度せいど良く測れるようにました。海水はふつうpH7〜8なので、この範囲を細かく測定できるのは極めて重要です。pHの測定には水温も影響するので、しっかり補正ほせい。これらにより、pHセンサの精度はこれまでの約5倍に上がりました!

開発したpHセンサ

図4:開発したpHセンサ

CO2濃度は、CO2濃度により色の変わる「pH指示薬溶液」を使い、その色の変化から求めます。色の変化は人間の眼では正確せいかくにわからないので、光をあててpH指示薬溶液にどれだけ吸収されるかの割合を見ます(図5)。

これまでCO2濃度の測定に時間が必要だった理由には、pH指示薬溶液がCO2濃度におうじて変わるまでに時間がかかることが関係しました。そこで今回は、できるかぎり早く色が変わるpH指示薬溶液の組成そせいを探し出しました。光源には消費電力が少ないLEDを使い、青・黄・赤の光でpH指示薬溶液の色のわずかな変化もとらえるようにしました。

CO2濃度測定の原理

図5:CO2濃度測定の原理

pHとCO2センサを一体化させるためにも、新たなソフトウェアを開発しました。消費電力しょうひでんりょくは少ないのにpHとCO2濃度のデータを1秒ごとに保存できます!

 
実際の使い勝手はどう? バッチリでした!

pH-CO2ハイブリッドセンサを水中探査機「じんべい」や「かいこう」にのせて、実際に上越沖じょうえつおき沖縄おきなわトラフで試験を行いました(図6)。

実際の海で試験!

図6:実際の海で試験!

上越沖で、水温の異常な上昇とCO2濃度の低下を確認(図7左)! まさにメタンプルームの特ちょうだけど、本当に…? 大丈夫、音で海底を調べるソナーという装置そうちでもとらえていました!

沖縄トラフではCO2濃度の異常な上昇とpHの低下をとらえました(図7右)! こちらはまさに熱水。pH-CO2ハイブリッドセンサは、バッチリ測定することが確認されました!

pH-CO2ハイブリッドセンサがとらえた!

図7:pH-CO2ハイブリッドセンサがとらえた!

今後はどうするの? 「じんべい」との連携を高めて、調査の効率を上げていきます

pH-CO2ハイブリッドセンサと「じんべい」との連携れんけいを高め、センサの測定結果をふまえ「じんべい」が調査をすることで、効率的にCO2漏れの監視や資源探査をできるようにしていきます。

測定方法のちがうセンサを一体化したものは、世界初。中野博士は、「pH-CO2ハイブリッドセンサの精度は高いし、探査機から取り外しても使えるので、色々なところで使われるようになればうれしい」と話します。

pH-CO2ハイブリッドセンサを持つ中野博士

写真:pH-CO2ハイブリッドセンサを持つ中野博士。
開発中には耐圧容器たいあつようきがこわれたり浸水しんすいしたことも。そのたびに工夫して問題を解決し、ついに開発に成功しました。

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