海をたずねて -地球とわたしたち-

第5回 深海調査の安全を担う

潜水船のパイロット

地球や地震などについて知るために、深海の調査がつづいています。深さ数千メートルの海底とは、いったいどんな世界なのでしょうか。有人潜水調査船「しんかい6500」のパイロットに、もぐるときのようすなどを聞きました。

研究者支えるかげの力 水中で船を静止状態に
佐々木義高さん

「外は真っ暗です。光を当てた目の前しか見えません」と深海6500メートルの世界について教えてくれたのは、「しんかい6500」のパイロット(潜航長)の佐々木義高さん。佐々木さんは「しんかい6500」で130回以上も深海にもぐっています。

「しんかい6500」の乗員数は、パイロットがふたりと、研究者がひとりの計3人。深海では強い水圧がかかりますが、コックピット内に影響はなく、水圧になれるための特別な訓練は必要ありません。コックピット内では、地上と同じようにすごせます。もぐり始めてからうかびあがるまで8時間ですが、食事は支援母船「よこすか」からサンドイッチなどを持ちこみ、携帯トイレもあります。「こまるのは、(コックピットが直径2メートルのボールみたいな形で)3人だとせまいことと、外は水温が1.5度くらいしかないので、少し肌寒いことくらいでしょうか」

コックピット

チタン合金という金属でできた殻が外部をおおっており、水圧からパイロットなどをまもっています

水圧

水が物体などにおよぼす圧力で、静止している水では深さに比例して水圧は大きくなります。写真は、実験装置で水圧の実験をしたもの。もとの大きさ(左はし)から、水深6500メートルの水圧をかけると、カップめんの容器は約8分の1にちぢんでしまいました(右はし)



母船に乗る「しんかい6500」チームは14人。実際にもぐる潜航班、位置などを「しんかい6500」に知らせて支援する航法管制班、そして整備班と三つのグループがあります。母船では、研究者と調査について話し合い、「しんかい6500」の腕がわりとなるマニピュレーター(ロボットアーム)の部品をえらんだり、また、母船内の材料を使って、調査に使う部品を新たにつくりだしたりすることもあるそうです。

母船上の「しんかい6500」

14人のチームで整備などをし、調査活動にそなえます

マニュピレータ

「しんかい6500」の腕にあたります。先端の「ツメ」は調査の内容によってとりかえ可能



調査では、水中でうきもしずみもしない、静止状態になる必要があり、パイロットがコントロールしています。積み荷の重さを計算し、浮力と重力をつりあわせて、ピタリと止まった状態をつくるのです。

静止状態のときはもちろん、もぐっているときやうかびあがっているときも、ゆれはほとんどありません。「母船に乗っていて船酔いする人も、『しんかい6500』ではおさまってしまうぐらいです」。しかし、外が危険な世界であることにはかわりがありません。「やはり安全には気を使います。のぞき窓からしか外は見えませんから、見えない方向には動きません。研究者が安心して、仕事ができるようにとりはからうのがパイロットのつとめです」

佐々木さんは5月下旬に(2006年記事掲載時)日本海溝の水深約6400メートルでシロウリガイを調査するため、出航しました。「深海に行かなければ見られないものを、自分の目で見られるのが楽しみです」と話していました。

「しんかい6500」の世界

真っ暗やみで音もない世界を、「しんかい6500」で調査します(イメージ図)

シロウリガイ

大きさ10センチほどで、殻はチョークをかたくしたようなものです。自分でえさは食べず、えらにすんでいる細菌がつくる栄養をもらって生きています


※このページの内容は、2006年6月1日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。