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海をたずねて -地球とわたしたち-

第8回 2000年かけて「世界一周」

海洋大循環

海水は少しずつ移動し、地球をぐるっと回っています(循環)。地球の気候に影響するこの循環が、近年の地球温暖化で弱まるのではないかといわれています。循環が弱まると、いったいどうなるのでしょうか。

温暖化で流れに変化 気候に大きな影響も

海洋には大きな循環が二種類あります。風の力によって起こる風成循環(ふうせいじゅんかん)と、海面で海水が北極や南極付近の寒い地方でひやされ、赤道地方であたためられることによって起こる熱塩循環(ねつえんじゅんかん)です。ここでは、地球の気候に大きく影響する熱塩循環を見ていくことにします。

塩分がこくて、つめたい海水は、深くしずみこんでいく性質があります。海面の海水の塩分がこい北部北大西洋と南極周辺では、海面の海水はひやされて海底までしずみこんでいます(オーバーターン)。ここでしずみこんだ深層水は世界をめぐり、熱帯や亜熱帯の海で海面へとわきあがり、あたためられながら海面を通って、オーバーターンの発生する場所にもどって、また深層へとしずんでいきます。およそ2000年かけて「世界一周」する流れです。

ブロッカーのコンベヤーベルト

海洋循環によって運ばれる真水や塩分を大まかにあらわした図です。真水や塩分がベルトコンベヤーのように運ばれるので、この説を唱えた人(ブロッカー)の名前をつけて、こうよばれます


冷水はしずみこむ

水槽の水の上部だけ色をつけ、上から氷で冷やすと、下にしずみこんでいきました=JAMSTEC横須賀本部での実験から



二酸化炭素などの温室効果ガスがふえ、地球が温暖化すると、このオーバーターンが弱まると予測されています。

大西洋オーバーターンで海水がしずみこむので、補給のため南からあたたかい海水が流れこんでいます。大西洋沿岸のヨーロッパの冬が比較的あたたかいのは、この海水の流れがあるからです。大西洋オーバーターンがなくなると、あたたかい海水の流れもなくなるので、大西洋沿岸のヨーロッパは寒くなることが考えられます。1万2000年前、実際にこうした現象が起こったという説があります。「ヤンガー・ドライアス事件」(注)とよばれ、終わりかけた氷河期が元にもどってしまいました。

(注)ヤンガー・ドライアス事件

1万2000年前、温暖化しかけていた気候が急激に氷河期に逆戻りしました。この現象をヤンガードライアス事件といいます。この原因として、温暖化で北アメリカ大陸の氷がとけ、真水が北部大西洋にながれこんだため、塩分が足りずに大西洋オーバーターンがストップしたためだ、とする説があります。オーバーターンは気候に大きな影響をあたえます。



国際協力による大洋観測

赤:日本 青:アメリカ 紫:イギリス 黄:ドイツ 茶:カナダ 水:スペイン 黒:フランス 緑:オーストラリア 桃:オランダ


その逆に、さらに温暖化が進むのではという予測もあります。温室効果ガスとなる二酸化炭素が海面でとけこんだ海水はオーバーターンで深層にしずみこんでいます。海水が二酸化炭素をうまくためこんでくれているともいえるのです。オーバーターンがなくなると、海水が二酸化炭素をためこむ効果もなくなるので、大気中の二酸化炭素がふえ、その結果、温暖化が進む、という考え方です。

いずれにせよ大西洋オーバーターンがなくなると気候の変化が大きいため、北部北大西洋ではさかんに観測が行われています。観測結果によると、いまのところは大きな変化は、まだないようです。

海洋地球研究船「みらい」

南半球を一周して深層水を調査しました


「みらい」で観測した航路


一方南極オーバーターンはどうなっているのか、JAMSTECは2003年、海洋地球研究船「みらい」で観測しました。深層水の水温をはかり、太平洋に南極海から流れこんでいる量などを調べました。現在、地球の温暖化の状況をくわしくつかむため、世界各国で協力し、海洋観測がつづけられています。

「みらい」上の採水器

深度6000メートルの深層水をとってくることができます

水の成分調査

とってきた深層水は、「みらい」船内で調査することができます


「日本沈没」に「ちきゅう」も活躍

小松左京さん原作のSF小説をもとにつくられた、映画「日本沈没」。主役の小野寺俊夫は、JAMSTECの職員で潜水船のパイロット、という役柄で、草なぎ剛さんが演じています。

© IODP/JAMSTEC
 JAMSTECは地球深部探査船「ちきゅう」=写真=、有人潜水調査船「しんかい6500」などで映画の撮影に協力しており、いろんなシーンで活躍が見られます。
 小説「日本沈没」が発表された1973年から、この30年で多くの地震研究をめざす研究者が生まれ、地震の研究は大きく進歩しました。JAMSTECでも、潜水調査船で調査したり、地球の奥深くをさぐる「ちきゅう」をつくったりし、釧路沖、初島沖、室戸沖など群発地震の巣に直接地震計を設置して24時間態勢で監視できる長期観測ステーションを整えています。たとえば初島沖(水深1170メートル)のようすは「今週の深海画像」として公開しています(アドレス http://www.jamstec.go.jp/REMOTE/hatsushima/)。
このような背景で生まれたSF映画「日本沈没」は、地震のことなどに興味を持つきっかけになることと思います。いま活躍している地球物理学や地震の研究者の中には、子どものころに読んだ「日本沈没」がきっかけで、この道をえらんだという人がたくさんいます。みなさんも、科学にまつわる本をたくさん読んで、興味のある分野を見つけてください。

※このページの内容は、2006年7月13日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
(2009年5月29日改訂)