海をたずねて -地球とわたしたち-

第9回 地球環境の変化をつかむ

北極研究

北極を、わたしたちとは無関係の遠いところだと思っていませんか?実は、日本の気候に大きく影響しているのです。地球温暖化が進むいま、北極では何が起こっているのでしょうか。

減ってきた北極海の海氷

地球表面は、太陽から光を受けてあたためられています。太陽光エネルギーを受け取る量は、赤道域で大きく(暑く)、北極や南極では小さく(寒く)なります。温度差をなくす力が自然界では働くので、風や海流といった空気や水の流れが生まれます。暑い地方と寒い地方でバランスをとって、地球環境は、たもたれているのです。

日本の気候は、赤道域のあたたかい空気と、北極域の冷たい空気のせめぎ合いで決まります



日本は、赤道と北極のちょうど中間あたりに位置し、北極域からのつめたい空気と赤道域からのあたたかい空気のせめぎ合いで気候が変化しています。冬が寒くなるかどうかは、北からの風が、どれだけ北極のつめたい空気を運んでくるかによって決まるのです。北極の変化は、日本の気候に大きな影響をあたえます。

ところが、その北極について、さほどわかっているわけではありません。北極は、海の上に厚さ数メートルの氷がうかんでいます。大陸の上に平均2450メートルもの氷がつもる南極とは、性質が大きくちがいます。うすさのせいで、温暖化や寒冷化の影響を受けやすく、氷は大きくなったり小さくなったりと急に変化します。

北極の氷の変化

1年で氷がもっとも小さくなったときの北極のようす。左が1979〜82年の平均、右が2000〜03年の平均。画像左下の部分で 氷が大きく減っていることがわかります。人工衛星でえたデータをもとにした画像(NASA提供)


温暖化による循環が影響

南極はふりつもる雪が氷になりますが、北極は海がこおって氷になるので、北極を知るのに海への理解は欠かせません。

いま、北極海の海氷は以前よりもへっていますが、全体的に同じように減少しているわけではなく、特定のところで大きくへっています。その原因をさぐろうと、JAMSTEC(海洋研究開発機構)は2002〜04年、海洋地球研究船「みらい」などで北極海を調査しました。その結果、

北極海を進む海洋地球研究船「みらい」
  1. 冬季に、沿岸までびっしりとうまっていた海氷が、温暖化などで沿岸までうまらなくなる
  2. 動く余裕ができ自由になった海氷が動く
  3. 海流が強くなり、あたたかい水が運ばれる
  4. 海の温暖化がさらに進み、夏季の海氷がへり、夏季も温暖化
  5. 冬季の海氷が小さくなる

こうした現象がくりかえされていることがわかりました。

特定の場所で北極海の海氷が減った理由


氷の場合、ちょっとした変化も、すぐに大きな変化としてとらえられるようになります。そのため北極は地球環境の変化の影響を受けやすいのですが、裏をかえせば、北極観測で地球環境の変化をつかみやすいともいえます。きびしい自然環境にも負けず、北極を知り、地球環境をさぐる取り組みが進んでいます。

JAMSTECは2006年4月、北極海に世界で初めて常時観測点をもうけました。自動計測機器を氷上から海中にたらし、人工衛星を経由して、海中の水温や塩分の濃度などのデータを集め、日本にいながら北極で何が起こっているかわかるようになりました。

くらす動物たち

冬の平均気温がマイナス25度くらいの北極でも、動物たちが生活しています。左がホッキョクグマ、右はホッキョクギツネです。ほかにもセイウチやアザラシなどがいます

氷海観測用漂流ブイ

2000年に北極海に設置しました。気温や風向き、海面温度などがわかります


※このページの内容は、2006年7月27日に朝日小学生新聞に掲載された記事の抜粋です。内容は、掲載当時のものであり、現在の状況とは異なる場合もありますので、あらかじめご了承ください。